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ザ・バイロン・アレン・トリオ The Byron Allen Trio
Tracklist
A1 Time Is Past 10:27 A2 Three Steps In The Right Direction 8:38
B1 Decision For The Cole-Man 9:30 B2 Today's Blues Tomorrow 14:44
Credit
Alto Saxophone, Composed By – Byron Allen
Bass – Maceo Gilchrist
Drums – Ted Robinson (3)
Engineer – Alfy Wade
Design – Howard Bernstein
Recorded at Mira Sound Studios New York City, on September 25, 1964.
これはどうしたものかと考えたが、ESP盤を色々紹介している流れで、バイロン・アレン・トリオ。ぼくは一時ESP盤を集めかけていた過去があり、ESP最初期のリリースであり、アートワークが面白いこともあって購入した。
バイロン・アレンは39年生まれで、フリー・ジャズ第二世代。オーネット・コールマンがESPに紹介したとのことで、確かに当時のオーネット・トリオの弟分的な演奏である。アレンも明らかにオーネットに似たつややかなトーンを持っている。曲もブルース・ベースで、アレンのブルースを捻ったような演奏が特徴といえば特徴。大変シンプルで、それが逆に不満といえば不満である。
例えばこれがデビュー作でこの後に作品が続いたのならば、これがスタートであったということで、何らか書きようがあるのだが、アレンも他のメンバーもこれがほとんど唯一の作品である。であるから、結論を言ってしまうとこの時期のESPからのリリースであったことで、必要以上に知られることになっている、というのが個人的な感想だ。ただ、他にこのような新人の作品が少なかったことも事実で、今であれば他に聴くものもあるが、当時は希少であったことも抑えておきたい。
アレンは饒舌でそれなりにリズムが良く、悪くはないが、この時点ではオーネットのスケール・ダウンという評価にならざる得ない。パーカー風でもあるが、それだとジミー・ライオンズと被る。「ここから飛躍した」ということでないと、評価は難しい。
上で「アレンのブルースを捻ったような演奏」と書いたが、グループの演奏事態がブルースの捻りで、個人的に好きな方向性ではある。だが、驚きはない。20代のある程度テクニックに優れた若手のグループによる初々しい作品ということで今回はまとめておこうと思う。
ドラムのTed Robinsonはドナル・ドバードの"Chant"に参加。アンドリュー・ヒルやマイルスとも共演したらしいのだが参加作品の目立ったリリースはない。ベースのMaceo Gilchristはわかっているのはこれだけ。バイロン・アレンは随分後にリーダー作"Interface"が出ているので下に貼っておく。大変シンプルなワンホーン・セッションだ。
"Always in Trouble An Oral History of ESP-Disk"*でベーシストのウィリアム・パーカーがアレンの消息を語っているので、以下に引いておく
Q: どこかで、ESPの謎の人物の一人であるバイロン・アレンについて触れていますね。彼はこのレーベルで初期の録音をし、その後何年も経ってからもう一枚別のレーベルで録音しています。彼のことを知っていますか?まだ生きていますか?
WP:―― ええ、彼のことは知っています。彼はカリフォルニアにいます。最近、誰かから彼の録音テープをもらいました。彼とアラン・ショーターに最後に会ったのは1989年のことでした。私たちはヨシズで演奏していて、そこにバイロンが現れたんです。彼はまだ生きていると思います。でも、彼は音楽以外のことに関わるようになり、ホームレスになったり、音楽やビジネスの主流から外れてしまったミュージシャンの一人でした。才能があって、いつでも演奏できる状態ではあったけれど、本格的にスタートして前に進むまでの間に何かしらの障害があったように思います。
参考:
*Always in Trouble An Oral History of ESP-Disk, the Most Outrageous Record Label in America by Jason Weiss