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ポール・ブレイ 「バラージ」 Paul Bley Quintet – Barrage

A1 Batterie   A2 Ictus   A3 And Now The Queen   B1 Around Again    B2 Walking Woman   B3 Barrage

Credit
Alto Saxophone – Marshall Allen
Bass – Eddie Gomez
Drums – Milford Graves
Piano – Paul Bley
Trumpet – Dewey Johnson
Engineer – Alfred Wade, Jr.
Composed By – Carla Bley
Studio: Studio 76, New York City. Recorded October, 1964.

ポール・ブレイのESP1枚目。
ブレイは50年代から活動歴があり、53年にミンガスのレーベル、デビューから「イントロデューシング・ポール・ブレイ」を出して以来2016年に亡くなるまで、夥しい数の録音を残している。ぼくはブレイに関して近年までの活動をフォローしているわけではなく、ESPとECMの盤をそれぞれ数枚持っているだけであるが、どれもわりとよく聴く盤ではあるので、以下覚書程度。

このESPの「バラージ」はドラムにミルフォード・グレーブス、アルトにサン・ラとの活動で著名なマーシャル・アレンが参加しているあたりが聴きどころで、ベースはエディー・ゴメス。トランペットのデューイー・ジョンソンはコルトレーンの「アセンション」に参加している以外はこの作品(こちらが先)への参加が目立ったキャリアである。

このグループは同じメンバーでいわゆる「ジャズの10月革命」に参加していて、レコーディングと同月の10月1日に「The Celler Cafe」でパフォーマンスを行っているから、このレコーディング・セッションはその勢いというか、その熱をそのまま持ち込んだようなセッションであったと想像できる。ESPの存在理由のような、らしいセッションの一つとも言えるだろう。

現段階から見た場合、他のポール・ブレイのセッションとの違いはやはりミルフォード・グレーブスの参加で、彼の背景を埋め尽くすようなプレイはこの時期のドラミングの新しい流れを体現していると思う。エディー・ゴメスもグレーブスによく対応している。ゴメスはビル・エヴァンスとの共演の印象がどうしても強いのだが、ESPでは他にこの後1ヶ月後の録音となるジュゼッピ・ローガン・カルテットに参加しており、これもグレーブスとリズム・セクションを組んでいる。

そこにブレイとホーン二人が絡む。主に簡単なテーマがあり、若干のグループ・インプロビゼーションがあり、各々のソロが続きテーマで終わるといった構成で、聴きどころはピアノ・トリオ的になる部分とホーンが乗ってくるところでのインタープレイということになると思う。

A1とA3は後のトリオでのアルバムにも入っている曲。B3 Barrageでは冒頭で編集によるカットアップのような効果が使われていて興味深い。

個人的には上物ではマーシャル・アレンのプレイに興味が行く。アレンのサン・ラ以外でのこの時期の録音はかなりレア。全体に前述の「ジャズの10月革命」の余韻もあってか、期待に違わぬパフォーマンスとなっていて、当時の熱気を偲ぶのに格好のレコードではないだろうか。

ポール・ブレイのリーダー作としてよりも「ジャズの10月革命」の一片として聴くとより興味がますと思う。




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