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ドン・チェリー 1 「コンプリート・コミュニオン」 Don Cherry "Complete Communion"
Tracklist
Complete Communion(20:38)A1.a Complete Communion A1.b And Now A1.c Golden Heart A1.d Remembrance
Elephantasy(19:36) B1.a Elephantasy B1.b Our Feelings B1.c Bishmallah B1.d Wind, Sand And Stars
Credits
Bass – Henry Grimes
Cornet, Written-By – Don Cherry
Tenor Saxophone – Leandro 'Gato' Barbieri*
Drums – Ed Blackwell
Recorded By – Rudy Van Gelder
Recorded on December 24, 1965
Recorded At – Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey
ドン・チェリーのブルー・ノートへの最初のレコーディングとなる本作は、チェリーがヨーロッパに渡り、様々な音楽経験を積んだ後の成果の現れと言える作品で、ライナー・ノーツでナット・ヘントフも指摘しているのだが、オーネットから独立した「チェリーの音楽」を印象付けるものであった。
参加メンバーであるが、ドラムのエド・ブラックウェル、ベースのヘンリー・グライムスに関してはこの後のチェリーのブルー・ノート盤2作にも参加している。特にブラックウェルとの共演はオーネットのカルテットから始まり、後のオールド&ニュードリームスまで続いていく長い関係である。チェリーとヨーロッパで出会って活動を共にすることになった、テナーのガトー・バルビエリはアルゼンチン出身で、次作にも参加するが、その後リーダーとしてESPやインパルスへレコーディングするようになる。
本作はブルー・ノート3作の中で一番オーソドックスな作品であるが、音楽としてのバランスの良さがある。ヘントフはライナー・ノーツでチェリーが「ジャズはインターナショナルな言語であり、演奏する人々を一体化する」という信念をもっていることを紹介し、当時のチェリーの発言引いている、曰く「先史時代で歌であったり音楽であったりという感覚がなかった時においても、人々は集まって一緒にハミングし一体感を得たのだと思う。」
これはヨーロッパに渡って様々なバック・グラウンドのミュージシャンと関わった後のチェリー「ジャズの可能性」に対する確信で、彼のこの後の活動を方向付けていくことになる考えだが、彼の人柄がよくわかる言葉でもある。
内容的にはブラックウェルとグライムスの変幻自在のリズム・セクションとホーン2人のインタープレイが楽しい作品で、この辺りはオールド&ニュードリームスまで続く、チェリーとブラックウェルの音楽に一貫するものである。
他にヘントフのライナーで特に強調されているのが、この「ニュー・ジャズ」は「音符」(notes)の解析をするのではなく、そこに現れる「感情」(emotion)に注目してほしい、ということだ。ヘントフは「ビートはよりナチュラルになり、呼吸のようになり、感情の変化としてビートも変化する。ビートは個人に内在化する時間の交歓となる。そして、全てはこの時と場の共有の内にある。これが"Complete Communion"経験である。」とライナー・ノーツを結んだ。
「ニュー・ジャズ」になって、インタープレイがより自在になり、特にタイム・キープがデファクトではなくなったことで、リズムが自在に変化するようになった。それが音楽に現れる感情の自在な変化を可能にし、そしてその感情の自在な動きこそが「ニュー・ジャズ」の成果なのである。ドン・チェリーはこのアルバム以降「オーガニック・ミュージック」として、この表現を発展させていくことになる。