見出し画像

Live Recordings of Eric Dolphy  エリック・ドルフィーのライブ・アルバム ①



エリック・ドルフィーは64年に亡くなるわけであるが、死後に様々なライブ音源が発掘され発売されている。反対に言うと本人がその発売を認識していたであろうライブ音源は
①61年の7月16日にファイブ・スポットでNew Jazzがエンジニアリングをヴァンゲルダーに依頼し録音したもの。
②61年の9月8日にデンマークのDebutがコペンハーゲン の"Studenterforeningen"にて録音したもの。
プラスこれは正式であったかあやしいのだが
③61年の9月6日にコペンハーゲン の"Berlingske Has"にてDebutが録音したもの。
ということになる。
Debutの②③はエンジニア不明。
①は"At The Five Spot Vol.1"同"Vol.2"としてそれぞれ61年と63年にNew Jazzから、②は"In Europe"として62年にDebutから発売となっている。
これが正式なものであるが、これに加えて①から"Memorial Album"('65)と "Here & There"('66)が、②と③から"In Europe Vol.1-3"が64年と65年にプレスティッジから発売されていて、これを正規盤に準ずるものと考えても、まあ本人がオーソライズしたトラックではないにせよ、ギリギリ可能としておこうと思う。
何故上述の音源と他を区切るかと言えば、やはりその他はそもそもレコードにするハズではなかった音源なのであって、音質面でも劣るであろうし、音質面ではまともな放送用の録音などがあったとしても、本人的には放送で放出されるものであって、残るものとしては考えていなかったということがある。
まあ、正規盤に準ずるとしたものは本人的には出すつもりはなかったかもしれないので準ずるとした訳で、筆者の意図はご理解いただけると思う。
前置きが長くなった。

①と②の比較だが、録音はなんと②が抜群に良い。これは①に比べて会場の条件がよかったのだろう。なおかつ演奏内容も大変良い。筆者は②の音源に関しては後にプレスティッジから出た"In Europe Vol.1"を持っているのだが、このA面"Hi Fly"のフルート演奏はベースのチャック・イスラエルとのデュオというシンプルさも相まって、ドルフィーのライブ音源中の一押しである。A2の"Glad to be Unhappy"はスタジオ録音("Outward Bound"収録)も良いが、このトラックもテーマを真摯に扱うドルフィーのあり方が良い。ドルフィーのフルートのファンは多いと思うが、このA面はまさにフルートが堪能できて、ライブの臨場感もあり、ライブ・レコーディングとして最高の部類と思う。B面はバス・クラリネットを縦横に吹きまくり、こちらもオススメだ。
③の音源は"In Europe Vol.2"として死後日の目をみているのだが、これも音・演奏とも良い。A1の"Don't Blame Me"はまたまたフルートで、表現は妙だが "Vol.1"とともに売れ線のドルフィーである。バックは控えめな演奏なのだがピアノが入ってからしだいに全体が失速する感があり少し残念。かつ、ドラムが途中スティックを落とし、後半はそのままではないか?A2は②からの音源のようでパーカーばりのビ・バップ。このコペンハーゲン のバンドは普段ビ・バップを演奏していたのであろう、ピアノも含め突然全体が生き生きするが、ピアニストに関してはバッキングがあまり好きではない感がでている。B面もドルフィーは好調であるのだが、筆者はどうもこのピアノが苦手だ。
①のファイブ・スポットは「ドルフィーのライブと言えばこれ」というものではあるのだが、ブッカー・リトルやマル・ウォルドロンのソロも長く入っていてトータルで楽しむべき音源と思う。ただグループ内のインター・プレイが楽しかったりといった要素はなく、ショットで急造したバンドというのが実相なのではないか?
その上"Vol.1"の、特にA1はリズム・セクションの録音があまり上手く行っていない感があり少し残念であるが、中ではB面の"The Prophet"がオススメ。アルトを吹きまくるドルフィーで、次第次第にテンションが上がっていく感じが伝わってきてとても良い。
"Vol.2"('65) はA面の"Agression"(What Is This Thing Called Love?が元)のリトルが良い。ドルフィーはバス・クラリネットでまあまあ。B面は"Like Someone in Love"のゆるいセッションでドルフィーのフルートは良いが他は今ひとつ。
Memorial Album"はA面がオススメでブラックウェルの長めのドラム・ソロが聴ける。
"Here & There"はA面がファイブ・スポットのライブ、B面はスタジオ録音+コペンハーゲン のライブという構成で、ファイブ・スポットは流石に残り物なのだろうな〜と思って聴くと、A1の"Status Seeking"が出色で、これがこのシリーズでまとまり的に一番良いのではと思ったりする。なぜここまでボツにしていたのだろう?A2はバス・クラリネットのソロで期待通り。
と、曲ごとに感想を書くつもりはなかったので、ざっと以上にしたいと思うが、ドルフィーを純粋に楽しみたいとするとコペンハーゲン での録音がオススメ。ファイブ・スポットはこの双頭コンボに関して他のメンバーの演奏もひっくるめて興味がある方むきと思うが、インター・プレイ的な面白さはほとんどなく、オーソドックスにソロを回すスタイルの演奏である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?