アーチー・シェップ 6 「ザ・マジック・オブ・ジュジュ」 Archie Shepp – The Magic Of Ju-Ju
Tracklist
A The Magic Of Ju-Ju 18:34 B1 You're What This Day Is All About 1:47 B2 Shazam 4:43 B3Sorry 'Bout That10:08
Credits
Bass – Reggie Workman
Drums – Beaver Harris, Norman Connor*
Percussion – Dennis Charles*
Percussion [Rhythm Logs] – Eddie Blackwell*
Percussion [Talking Drums] – Frank Charles (2)
Tenor Saxophone – Archie Shepp
Trumpet, Flugelhorn – Martin Banks
Trumpet, Trombone – Michael Zwerin*
Engineer – Bob Simpson
NYC, April 26, 1967
アーチー・シェップの中で"Attica Blues"と双璧をなす人気盤ではないだろうか?なんといってもアート・ワークが目を引く。サイケデリックの時代である。マイルス・デイヴィスはコルトレーンの死因に関して「L.S.Dのやりすぎ」説を唱えたが、まあ全体的にそういう時代で、音楽にもアートワークにもその特徴が出ている。
本作の目玉はなんといってもA面を占める"The Magic Of Ju-Ju"なのだが、エド・ブラックウェル(per)、デニス・チャールズ(per)、+トーキング・ドラムのフランク・チャールズ(この人に関しては詳細不明)の3名によるリズムが始まるや否や即シェップのテナーが入り、そのまま一面全部吹きまくる。クレジットによると他に2管なのだがこのトラックではほんの最後に出てくるだけで、シェップにしては珍しいワン・ホーンものとして堪能できる。
冒頭から同じパターンを延々と繰り返すリズム。やり手はトランス状態にならざるおえない。しばらくたってからビーバー・ハリス(Drs)、ノーマン・コーナー(Drsこれが初レコーディング)のドラムスとレジー・ワークマンのベースが入ってくるのだが、この入ってくるあたりがピークを作っていてとても良い。
シェップはアフリカン-アメリカン・ミュージックとして広く南北アメリカとカリブの音楽を定義する。ジャズもサンバもルンバもマンボもロックもソウルもファンクもヒップ・ホップもアフリカン-アメリカン・ミュージックと呼ぼう、と言う。そのパースペクティブにおいて、自らの音楽を捉えて行くわけで、この"The Magic Of Ju-Ju"もその視野の中でトライしたものなのだろう。
また、シェップは「ポップ」であることにこだわり続けている。自分は一部のエリート向けではなく大衆音楽をやるのだ、という姿勢である。また「ポップ」=「コマーシャル」ではまったくなく、コマーシャルではないポップを志向しているのだと言う。
この"The Magic Of Ju-Ju"はまさにその成功例ではないだろうか。
B面は3曲とも"Four For Trane"(4管)や"Fire Music"のA面(4管)、"Mama Too Tight"のB面(6管)に通じる複数管をアレンジしたテーマと構成を持つ。かといって相変わらず、というわけではなくB3などはアントニオーニの"Blow Up"のテーマやリチャード・レスターの"Knack"のテーマを想起させるリズムでモッズ的である上、B2、B3はシェップの熱量の高いテナー・ソロがかなりの尺でフィチャーされ、リズムの複雑さも相まり聴きどころの多いトラックとなっている。
67年当時はコルトレーン とファラオ・サンダースが激烈な演奏を聴かせていた時代で、シェップも当然それを意識せざるおえない。前者はファナティックなまでにひたすら求道的であったが、シェップはベースのトラックでアフリカン-アメリカン・ミュージックの王道たるダンス・ミュージックのベースを維持し、リズムを保持する方向性をもっていて、その上において熱量の高いソロを繰り広げることを基本においていたと思う。
これに外れるのはここまでで"Mama Too Tight"のA面ぐらいと思うが、それはそれで構成にドラマ性を持たせる工夫をしていたりする。
さて、この年このレコーディング後にはコルトレーンが亡くなるわけである。前にも紹介したが、シェップは後年「コルトレーン以後本当に何も起こらなかった」と振り返っているわけで、まあ言い過ぎている部分はあるにしても、何か大きな喪失感があったのである。
このアルバムはその前の最後の作品ということになり、現時点から振り返ると彼のキャリアの中である種の転換点になっているアルバムだと思う。
追記: このアルバムはエンジニアがボブ・シンプソンで、ヴァンゲルダーではない。ボブ・シンプソンはRCAのエンジニアで、所謂リビング・ステレオものを多く手がけたメジャー・レーベルのエンジニアである。ミンガスものなどちょくちょくインパルスの作品も手掛けている。このアルバムのスタジオはRCAだったのだろうか?