鉄道写真が教えてくれたこと
私は高校生くらいの頃から鉄道写真のために全国を練り歩くようになり、写真展への出展、同人誌の作成など幅広く写真に関する活動をしてきました。鉄道写真を撮りに他の国や地域に出向くことは、様々な学びを得ることが出来る素晴らしい活動だと思っています。本日は「鉄道写真が教えてくれたこと」をいくつか紹介したいと思います。
①「ニュースで話題の地」を生で見る
私の信条の1つとして「鉄道写真で命を取られない」があるので、基本的に危険な場所は訪問しません。それでも訪れたややディープな場所として、中国の新疆ウイグル自治区があります。
ここには現役の蒸気機関車が残っており、蒸気機関車目当てでツアーにて訪問したのですが、報道の通りやや政治的に不安定な場所です。日本にいても「収容所がある」など黒い噂を色々聞く場所ですが、現地は犯罪が横行するような状態ではありません。ただし、その治安は別の地域ではありえない数の大量の警官によって維持されています。私たちが泊まったホテルにも「外国人がいる」ということで警官が常駐していました。目に見える犯罪は少ないとはいえ、物々しい雰囲気は常に感じられる場所でした。噂の真偽のほどは知らないので語れませんが、抑圧されているという事実は間違いなくあるように思います。
②北半球でも太陽が北回りする地域がある
日本にいると太陽は東から昇って南中して西に沈むのが当たり前です。南半球ではその限りではない、というのはなんとなく想像がつくかもしれませんが、実は北半球でも太陽が北回りする地域があります。
タイのバンコクに行った時のこと、とある撮影地で順光(電車の顔と側面に光が当たった上のような写真)を狙って訪問した撮影地がいつまで経っても順光にならず、おかしいと思って調べると、タイは北半球でも北回帰線と赤道の間にあるので、夏は太陽が北回りすることが分かりました。日本にいると北回帰線なんて意識することはないので、鉄道写真のためにタイに行ったおかげで初めて意識することができました。
③田植えの時期と休耕田の話
こちらは国内の話です。このような田んぼを入れた鉄道写真は私だけでなく多くの人が撮影するシーンなのですが、ここにもちょっとした雑学があります。基本的に本州の関東より南は5月上旬〜中旬に田植えをして9月頃稲刈りをするスケジュールの地域が多いです。ただ、いくつか例外の場所があります。
まずは千葉県の房総、いすみ鉄道の沿線。こちらは田植えの時期はあまり変わりませんが、稲が実ってくるのはお盆〜その少しあとくらいの時期になります。南房総は温暖な気候を生かした早稲(早場米)の生産が盛んなので、少し早いのです。
もう一つは兵庫県。特に北条鉄道や加古川線の沿線は二毛作が盛んです。麦の収穫が終わってから稲の作付けが始まるので、他の地域よりやや遅い6月に田植えが行われます。写真の観点で言うと、梅雨の時期まで田んぼの水鏡がしっかり残るので、雨に少し揺れる水鏡を撮れるチャンスが増えます。
ただ、ここ最近本当に休耕田が増えました。田んぼの撮影地にいくといつも作業をしているのは高齢者ばかりで、維持できなくなると荒地で放置されていきます。田んぼを撮れる名撮影地にて休耕田の増加でかつてほどの眺望が楽しめなくなったり、田んぼがソーラーパネルに切り替わってしまって景色が台無しになってしまったり、そんな場所が出てきました。農業の持続性に関して議論されて久しいですが、美味しい日本のお米の存続が不安になってくる現実があります。
以上、「鉄道写真が教えてくれたこと」と題して、カメラを持って線路端に出かけることで発見できた新しい知見を紹介しました。外で写真を撮っていると、ニュースと現実の繋がりを肌で感じることが多くなり、世界を見る解像度が上がるように思います。鉄道写真を既に撮っている方はぜひ、線路の周りも見てみると世界が広がるのでオススメです。