地域包括ケア病棟で増収した急性期病院の経営が危ない理由
1.遂に診療報酬改定のターゲットとなった地域包括ケア病棟
本日の中医協総会で示された資料において、2020年度の診療報酬改定に係る議論の整理が行われ、地域包括ケア病棟入院料(医療管理料)に関する要件の見直しが明記されました。
2014年に新設され、2016年には手術・麻酔が包括外(出来高算定)となり、2018年には上限となる点数が上がるなど、届出病院の6割以上が増収増益を達成したとされる同入院料は、創設以来はじめての岐路を迎えています。
2.地域包括ケア病棟の起源は亜急性期入院医療管理料
地域包括ケア病棟の歴史を振り返ると、2004年に創設された亜急性期入院医療管理料の創設までさかのぼります。
点数や要件は時代の経過と共に変化していますが、急性期から慢性期への移行、慢性疾患が増悪した患者の在宅復帰支援を行うといった目的は、現在も引き継がれています。
3.亜急性期入院医療管理料時代から存在した2つの指摘
実は、亜急性期医療入院管理料時代の2011~2012年にかけて、2020年度の診療報酬改定に関連する指摘が行われています。
1点目は亜急性期入院管理料が自院の急性期患者を受け入れるポストアキュート機能に偏っているという指摘で、2点目は亜急性期入院管理料を算定するDPC病院はDPC点数が亜急性期入院管理料を下回るタイミングで転棟するケースが多いという指摘です。
しかし、当時は非DPC病院に対するデータ提出が要件化されておらず、情報が不足していることを理由に実態把握の必要性が主張されるにとどまっていました。
4.データ提出の要件化によって裏付けられた指摘の正確性
2014年に新設された地域包括ケア病棟入院料では、データ提出加算の届け出が義務化されました。
その後、届出病院数の増加と共に多くのデータが集まったことにより、亜急性期入院医療管理時代に指摘されていた内容が改めて問題視されています。
現在見直しが議論されている転棟後の点数見直しの根拠として示された資料は、2011年に提出された内容とほとんど変わらないものでした。
5.地域包括ケア病棟で増収した急性期病院の経営が危ない
DPC病棟から地域包括ケア病棟に転棟した際の点数設定は、期間Ⅱの最終日までDPC点数を引き継ぐ方向で進んでいます。
こうなった場合に恐ろしいのは次回以降の改定です。上記の内容で次期改定が行われた場合、入院期間Ⅱを超えてから地域包括ケア病棟入院料を算定し始めた患者の点数がそれ以前の点数よりも高くなることが予想されます。
この状況が明るみになると、自院からの転棟に対する要件の厳格化や、入院料自体の引き下げが行われる可能性があります。
こういったリスクに備えるためにも、診療報酬改定の直前だけではなく、定期的な情報収集により改定の方向性を先読みする心掛けが重要です。
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