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物理学と意識のエンジニアリングが交わる特異点

【簡略版】
真理探究座談会
『物理学と人間』vol.1
ホログラフィ原理と深層学習における"創発"について
2019.01.30@下北沢ダーウィンルーム

橋本幸士さん
金井良太さん
キュレーター
成田真弥さん
(以下敬称略)

※ダーウィンルームの方針に従い、他人の方の質問は削除。全体的にざっくりまとめ直し、自分の質問と答えはそのまま挟み込んでいます。分かりづらいところがあるかもしれませんがご容赦ください。

まず、
成田さんから、物理学は万物を記述できそうだが、心までは記述できないなと感じていたが、橋本先生が近づき出した?と感じる。そこに金井さんということで、二人の創発が繋がったのが今回のイベントだと素敵なご挨拶で始まりました。

■橋本先生から
ホログラフィ原理と深層ニューラルネットワークの類似を捉えて物理とニューラルネットワークの組み合わせに取り組んでいる。
量子力学と重力が20世紀の二大発明。
素粒子17種類、重力子で重力が媒介されている。実験で確定している。
ところがこの二つを統一する理論はまだない
→量子重力理論?(未証明)
答えが無限大になって、その無限大をどう扱えば良いかわからない。
100年続いている。
という話から、

「人間が一般相対論を美しいと思うのは、人間の外界の認識の仕方が
そもそも座標不変だからだよね」
田中正 京都大学名誉教授

という僕の大好きな田中先生のコメントの引用や解説もありつつ
(
[参考]MATH POWER 2018の橋本先生の講演(タイムシフト 27:20:27頃から)
http://live2.nicovideo.jp/watch/lv314662902?from=#27:20:27
)

ひも理論から、ホログラフィックQCD(クォークの性質も、空間を4次元にすれば解ける)
の話もありました。
そこでは、特殊な条件しか解けない。
どういう条件なら?というところが大切。というお話もありました。

★水野質問
現実と離れた理論を扱っていることについて、どのように考えているのか?
もどかしさなどもあるのか?
橋本
それは別の研究者がやるべき仕事。
自分は理論で世界を認識を広げる仕事。

また物理の空間の捉え方が、テンサーネットワークで近似できるようになってきたというお話、さらにはそのネットワークがアインシュタイン方程式に従っているというお話がありました。

★水野質問
ニューラルネットはブラックボックスとよく言われるが、どうやって方程式に従っていることを観測して証明する?
橋本
メトリック
点と点の距離→ネットワークの重み
という置き換えを足掛かりに、やれるのではないかと思っている
水野
もう出来ているのかと思ったが、現在検証中か?
橋本
そう

★★水野質問
橋本さん(を始め、多く)の物理学は、色々な全く違うものが似ているというのを活用して、単体では解けなかったものを解いているように見える。
AdS/CFT対応、ホログラフィ原理、ニューラルネットによる方程式近似など。
その直感はどこから来るか?
それはAIが一番苦手とするところ
(→→本文最下部にまとめる)

■金井さん
さっそく「意識のハードプロブレム」や「クオリア」といったど真ん中の概念の解説から、

金井
「意識も存在していない?存在していると思い込むことが説明できれば十分ではないか?
という議論さえある。」
「メカニズムとして意識を説明するのは難しい。説明できないからアイデンディティセオリー、情報=意識 となってしまっていた。」
「情報は物理的にリアルに存在している
情報があれば意識があると統合情報理論では捉えている。」

という、統合情報理論(IIT)の本質についての話がありました。
面白かったのは、IITの評判の悪い部分という事で、「主観的経験はシステムの情報構造と同一性をもつ=諦めているのではないか?と批判され、ここが評判が悪い」
というお話が面白く、

金井
「あらゆるものの意識の有無の判定ができる基準がなければいけない→理論になる」
「φというものがある(仮説)」

という話は、「ビデオゲームの美学」で松永伸司さんがなされた仕事に通じるなと感じました。

φの話も、CEDEC2018で金井さんの会社の大泉さんがされた講演「意識の統合情報理論」である程度理解していたのですが、
([参考]https://www.facebook.com/yuta.mizuno.19820312/posts/2102079213205689)

それをもって「創発の指標でもある」というお話やオートエンコーダによるエンコーディング。情報を畳み込んでいる過程が情報処理無意識。外から入ってきたものを伝えるコネクションより、フィードバックのものがもっと多い。これが意識の秘密かも?

というのは大変刺激的なお話でした。

---
★★★
水野質問
ボトムアップエラーシグナル
→ホログラフィ理論の量子エラー訂正符号
という話もあったが、
この二つの共通点、そこから導かれる創発というものがありうるか?

金井さん
どちらもわかってないと答えられないので難しいが…
情報にフィードバックがあるという仕組みが面白い
そのフィードバックの仕組みに意識がある可能性がある

橋本さん
量子重力に大切
パーフェクトテンサーのように
間違えても大丈夫としておきなさい
大事なものを担保する
量子耐性があるものが高い意識があるとなっていると面白い
---

また橋本先生から、物理における瞬間は微分方程式であり、これが積分方程式であれば過去の履歴を全て覚えておかなければいけなかった。という話があり、この指摘にも震えました。

金井
何故同じ意識が続いているのか?
今の状態は、過去と未来のどちらも持つ

★水野質問(質問できず)
未来の持ち方、影響は?
繋がっているというだけ?リカレント的な?

ダーウィンルームの清水さんから、意識という言語で捉えるから、その境界線が問題になるが、意識と無意識はグラデーションという話があり、これは先日の三宅さんと吉増さんの対談で聞いた

吉増剛造さんの答えと同じ!

ということをご本人にもお伝えしました。
[参考]https://note.mu/y_mizuno/n/n5c6ca785c80b

金井さんから橋本さんへの物理における情報の取り扱いの質問、それに対するくりこみ理論でなんとかするという話。複雑性評価の話。
金井さんからの、進化論的意識論の話。

そして橋本さんからの、φを物理学者が評価するべき。物理としても良い物理量が必要という話。

などなど、家に着いてからもしばらく眠れないほど脳が刺激を受けたイベントでした。

■(以下は打ち上げにて直接お話出来た話)
橋本
科学を共有していることは大切

★水野質問
橋本先生は何故物理をやっているのか?
何に到達したいのか?

カタチに興味がある。

★水野
カタチと本質の関係はどのようなものか
橋本
ある形を今までとは違うかたちで捉えられるようになってきた。
ニューラルネットを介することで、今までは意識されなかった特徴が捉えられることがある。

★水野質問
AIは似ているものに気付いて、それを他の物に適用する事が苦手。
橋本先生をはじめとする物理学者の方は、全く違うものだが、それは見方を変えたコレだと気付いて応用している。
何がAIに足りないか?

橋本
AIは逆問題を解くのが得意。
人間は、一部に例外はいるが、不得意。
アナロジーを見つけるのが、物理学者の仕事の一つ。
その違いで良いのではないか。

★水野追加疑問(質問できず)
そういう面はあるが、自分が作りたいAIはツールとしてのAIではなく、汎用的なAI。
その時にアナロジーを見つける事が必要になる。何があれば出来るか?

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