1on1にて考えていること
こんにちは、CTOの松本です。CEOの福島がサウナの話を書いていましたが、自分も週2でサウナに通っています。先日初めてテントサウナを体験したのですが、秋空の下のサウナは最高でした。またやりたい。
本題ですが、本日もLayerX Advent Calendarの一環でブログを書いています。今回でもう50日目だそうです。直近Engineering Managerの採用も進めており、それに関連して人のマネジメントに関わることを書こうと思い、今日のお題は「1on1」です。
このブログを読んでくださっている皆さんの会社でも、1on1はだいぶ浸透してきたのではないでしょうか。何を話そうか、どう向き合おうか、など悩みも多いのかなと思います。
LayerXに限らず、自分の関わる組織では1on1をピープルマネジメントの重要な取り組みに位置づけてきました。これに関連して、皆さんが1on1で悩まれた時のサポートになるようなtipsを書いていけたらと思います。
なぜ1on1か、モチベーションの側面から考える
組織のパフォーマンスが最大になるのは一人ひとりのスキル×モチベーションの総和が最大化される時、という仮説を持っているのですが、重要な変数であるモチベーションは一人ひとりのキャリア等踏まえたWantや成長志向という個人のベクトルと組織や事業がどこに向かうかという組織のベクトル、この2つのベクトルがどれだけ近い方向を向いているかに大きな影響を受けます。
モチベーションは様々な要素から構成されます。例えば自分のスキルの高さと課題の難易度のバランス、キャリア的な方向性との合致、自分でコントロールできる範囲の大きさ、などなど。
こうしたものは人それぞれ違いがあり、数式や論理で表せないものも沢山あります。いつだったか、広木大地さんとPodcastで話をしたのですが、手段と目的は階層構造があって、どんな物事も目的でありつつ、何らかの目的にとっては手段となる。この階層構造の中で人が目的化するポイントがその人が愛とか熱意を感じる部分だよねと。ここは論理ではないと思います。
ep18. VR空間で働くこと、あるいは目的と愛の話 ゲスト: 松本勇気(@y_matsuwitter)さん by EM . FM #EMFM
こうした論理の外側も含めて受け入れて組織として成長していくには、常に一人ひとりと向き合いコミュニケーションすることでしかなし得ないように感じています。
定期的に変化をキャッチしお互いすり合わせる
また、先日こんな一連のツイートをしました。
組織は必ず変化しますし、事業環境も変化し続けます。採用市場も変化しますし、様々な変化にさらされてキャリアや事業に我々は向き合っています。
さらに人はうつろうものです。結婚や出産、友人関係の変化や様々な書籍・人々との出会いで考え方が変わっていきます。考え方が変われば、求めるものも変化するでしょう。さらには、外部環境が変わらなくても人は一人でも色々考えて、中身が日々変化しています。考え方や理解の仕方に変化がでます。
1ヶ月もあれば、様々な変化が生まれてくるのが人間、と考えるとその変化をキャッチアップし続ける必要もあります。最初に「完璧な組織と制度を作った!」と思っても、こうした様々な変化で簡単に陳腐化します。ルールとモチベーションのギャップを埋めていくために重要なのが1on1の効用の一つなのではないでしょうか。
ですので、この背景を理解した上で最低でも月一回、可能なら隔週・週次などで1on1を実施し、業務上の課題と目標への振り返り・フィードバックだけでなく、モチベーションを構成する様々な要素について対話を通して知り、それに対してどう組織が貢献できるか、双方向のものとしていくことを意識することをオススメしています。
また、双方向であるだけでなく、時間軸での変化を意識することも有効だと思います。前回や1年前どのような話をしていて、そこからどう変化があって、その理由はなにか問うことで変化を理解できるものです。また、今回出てきた課題に対してどのような取り組みを誰がやるのか整理し、次回の1on1でどれだけコミットできたか振り返ることで着実に改善されていくことに繋がります。
スパンオブコントロールのルール化
ただし、これだけ双方向にメンバーと向き合うのであれば、自ずと向き合える人数にも限界が出てきます。自分は一時期30人以上1on1をしているタイミングもありましたが、正直言って相当限界を感じていました。個人のモチベーション変化のシグナルの見落としが多くなったり、取り組みが後手に回るなど増えていきました。
自分の経験からも、できれば組織において一人当たりのマネジメント対象人員数に制約をもうける方が良いと考えています。おすすめとしては一人あたり5~10人を上限として丁寧に向き合うことで濃いコミュニケーションと改善施策へのコミットが生まれるものだと思います。ちなみにこのマネジメント対象人数や対象領域のことをスパン・オブ・コントロールと呼ぶこともあります。
スパン・オブ・コントロールをルールにしていくと、自ずと組織拡大に伴うミドルマネジメントやピープルマネージャの設置のタイミングが見えてくるものです。あるチームが10人超えてくるなら、一人マネージャを増やすことを検討せねばならなくなります。人は急には増えませんから、その増加を予測して先回りして組織化することに向き合えるようになるでしょう。
型を作り改善する
ただ、じゃあマネージャお願いします、1on1お願いします、と言われてもどう進めればいいのか悩んでいる方多いかと思います。そんな方に向けて、自分が1on1の際に使っている具体的な質問とその背景など説明させていただきます。
1on1にてどういう質問をすれば良いのか、これは案外と型が作りやすい領域です。少なくとも最初の口火を切ることさえできれば、色々な会話が続いていくものだと考えています。
質問例:5点満点自己採点
例えば、自分が使う型の一つとして5点満点の自己採点があります。現状の自分の状況について、キャリア的な方向性や最近の目標設定とそれに対する進捗など鑑みて5点満点で採点すると何点ですか?というような質問になります。この質問の良い点は、これまでとの比較や、あと一点上げるにはどうすればよいか、といった会話がしやすい点になります。
例えば、3点と答えた場合には、なぜその点数か聞いてみましょう。なぜ平均的な数値なのか、その判断根拠を聞いていくと、今の個人や組織の目標をどのように捉えており、それに対して充足していると考える理由が見えてきます。さらに、そこから4点へ上げるには?という問いを続けることで、目標の深い理解を促したり、別な評価軸(例えば事業以外の軸、キャリアなど)を見出したり、今の取り組みのより良い解について議論できるかもしれません。
こうした質問を通じて、相手の現状の理解やより改善する手段、前回までと比較しての変化、そして考え方の理解につなげる事ができる可能性があります。何より、非常に質問構造がシンプルですから最初の会話として、ゲーム的に取り入れてみても良いかもしれません。
質問例:優先度リスト
また、今のあなたの優先度高い項目を上から3つ(ないし5つ)順に並べて見てください、という質問もたまに使います。これは特に何らかのリードを目指している・担っているメンバーの考え方と事業や経営の考え方のSyncを図る意味で便利な質問となります。
順に3つ、となると、全ての事柄に順位を付けざるを得ません、同じくらい大切だとしても、もし迷ったら何を優先するのか、これをハッキリさせることは自律的で素早い意思決定を生み出すために重要です。もしその考え方が、今自分が考えている組織全体や事業、経営のものとズレていると感じれば、その点を議論出来ます。
質問例:10年後のあなたからみた今
キャリアについての議論も重要です。毎度聞いても大きな変化は生まれませんが、四半期や半年など定期的にこの観点を確認し、今の活動が自分の思った通りの方向になっているのか、これを知ることは個人のベクトルと組織のベクトルをあわせるために重要です。
この観点では、10年後のあなたは何をしていたいか、その10年後の自分からみて今の自分を振り返るとどう感じるか、という点を聞いてみることがあります。10年が難しければ3年や5年という単位でもOKです。未来の自分が目指したい方向性はどうなっているか、その具体的像はどういったものか、もしはっきりしていないとしたら、どのような活動でそれを見出そうと考えているか、などの会話から、相手の向かいたい先やそのためのハードルを理解していきましょう。
その上で、その未来の自分から見て今必要な活動を明確にし、例えば四半期や半期などの単位で明確で行動可能なアクションとして洗い出してみましょう。これが実行出来ているか、定期的に議論することでキャリア的な方向性にプラスのアクションができているか共通の理解を作ります。もし活動できていないとしても、まずは活動できていないことを認識するだけで大きな一歩と考えてください。1on1のたびにその課題に向き合い、取り組み方を一緒に考えていくことがまず重要、そこから解決策が見えてくるかもしれません。
型にフィードバックをもらう
他にも様々な質問をリストとしてストックしているのですが、もっと大事なのが定期的にこうした型を社内で晒しつつ、フィードバックを拾うことです。自分の質問リストは社内に公開されていまして、他のマネージャが利用できるようにしています。そうすると、よりよい質問や会話の種が他メンバーから上がってくるなどしてきます。
また、こうした型で拾いきれていない事柄もたくさん出てきます。型といっても30分〜1時間の1on1時間ですから、拾えないことも多々あります。その中でも特に拾うべきポイントは何か、拾えていないものをフィードバックいただくことでよりよい1on1の糸口がつかめてくるものです。
相手に向き合うために、言葉一つ一つの背景を考える
さらに、型としての質問はあくまで会話の入り口に過ぎないことも理解しましょう。大事なのはこの入り口にたった上で、相手の言葉の背景を掘っていくことにあります。ここもある程度テクニックがあるかもしれませんが、ぜひコーチングなどの手法を学びながら習得されることをオススメします。
ちなみに自分がこのポイントで意識するのは、相手の頭の中を整理するサポートの意識です。具体的には一つ一つの言葉のチョイスやその発言の背景を聞いていき、なぜそう思ったのか、なぜその言葉で表現したのか、これを一つ一つ解きほぐして頭の中を整理していきます。このことを通じて相手の理解と、相手自身による課題の発見や改善を促すと、具体的なアドバイスをこちらが投げかけるよりもスムーズに前に進むことができることが多いように感じます。
自分が咀嚼した情報をもとに自分の考えで解決策を生み出す、というのは誰かに言われて解決することよりも遥かに大きい収穫があるものです。この境地にたどり着けるよう情報を整理し、自ら考えてもらうことで、課題とその背景を理解し、応用もしやすい解にたどり着く可能性が高まります。
1on1を通じて納得感あるマネジメントを
ここまで1on1を重要視する背景から、自分なりの具体的な手法やヒントについて書いてきました。1on1活動はマネジメントの非常に大きな部分であると自分は考えています。事業では顧客について丁寧に向き合いますが、社内においても同様丁寧に向き合うこと、その向き合い方を改善し続ける仕組みを持つことが、組織パフォーマンスの向上に大きく寄与するものと考えます。
LayerXでは、さらにこうした活動も組織のスケールに従って仕組み化してより良いチームにしていきたいと考えています。直近では、人事組織の拡充だけでなく、SaaS事業部でEngineering Managerの募集もしております。ぜひ自分やSaaS事業部のメンバーと一緒に、スケール組織について悩みながら創っていきませんか?興味ある方は、下記のJDや自分のmeetyでのカジュアル面談などさせていただけると嬉しいです。
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