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30冊目. 坂の上の雲五巻


旅順要塞が陥ちた。

乃木希典が愚策を繰り返していたため大量の血と鉄を浪費した旅順が児玉源太郎が指揮を取ることで、嘘のように簡単に旅順要塞を制圧した。これに伴って、旅順港に停泊していた露国艦隊を爾霊山(203高地)から砲撃できるようになったため旅順港も制圧した。

旅順要塞と旅順港制圧までの戦略の裏にある児玉源太郎が戦友乃木希典を想う気持ちには胸が打たれるものがあった。乃木希典は戦略という面では至愚極まりないが、俳句という面では優秀であった。実際に、203高地を爾霊山とつけ、俳句を詠んだ。(俳句の内容は本を読んで確認してください)爾(なんじ)という203を制圧するまでに15,000もの魂が失われた山であることを意味するこの命名には乃木の哀愁が漂う。

日本軍は念願の旅順を陥し歓喜溢れる一方、旅順を陥ちたことを知らずに出発したバルチック艦隊率いるロジェストウィンスキー司令長官は悲惨であった。英国漁船を日本巡洋艦と勘違いし、砲撃を加えたことで英国からの政治的圧力が様々な港にかけられた。これにより、石炭の積み込み、停泊の許可を得ることに苦労した。また、約30,000キロというほとんど地球1週の大航海が艦隊並びに兵を疲労させ、士気を低下させた。

ロシア艦隊が航海を続ける中、海軍参謀長秋山真之は帰国後も戦略に練った。ロシア艦隊をウラジオストックに停泊させては本国の危険は回避できなないことから、日本海軍にはロシア艦隊の殲滅がマストであった。そのために、秋山真之は7段構え戦法を考案する。この作戦がどうような結果を出すのかが本著を読み進めていく上での楽しみである。

また、今回で一番印象的だったことは開城宣言があった際にロシア陸軍と日本陸軍が両軍で歓喜を共にしたことである。これに対して、著書司馬遼太郎は「国家もしくはその類似機関から義務付けられることなしに武器を取って殺し合うということに適いていないという証拠」と述べていたが、まさにその通りだなと感じた。約200日、露国と日本の両国に惨憺たる損害を与えたこの戦いが終わったことに両国が国境を超えて歓喜した。本来、戦争などは
誰も望んでいない証拠なのではないかと思った。

次回、秋山好古、黒溝台でコサック騎兵と激突!!
どうなる日本最左翼秋山師団。



良いなって思った言葉

追随者の悲しさで、意外な着想を思いつくというところまで、
知識と精神のゆとりを持っていない

99p

玉木の武士道
公的なものに献身することにのみ自分の生命と存在の価値を見出すというもの

(開城後)国家もしくはその類似機関から義務付けらレルことなしに武器を取って殺し合うということに適いていないという証拠



歴史について知ったこと

戦国期の戦争と近代国家成立後の戦争の違い
戦国期の軍人は職業であったが、明治維新によって誕生した国家は、憲法によって国民を兵にして、それから逃れる自由を認めず、戦場に至っては服従以外なく、命令に反すれば抗命罪に問われる。

42p

日本の総帥は象徴性、半神的印象を与える存在である場合が多い

233p



言葉

  • 鈍磨 鈍磨 すり減ってなくなるさま

  • 典雅 整っていて上品さま

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