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28冊目. 坂の上の雲3巻

三巻は日露戦争に至るまでの政治的思惑や軍事構想の話がメインであった。

日露戦争とは、諸外国から見れば窮鼠猫を噛むような戦争と捉えられていたし、自国の日本においてもそうであった。当初から、日本は露国に対して勝利を目指しておらず、優勢な状況に持ち込み、交渉にて戦争を終わらす事を望んでいた。しかし、露国に勝利してしまうあたりが面白い。

大国はつねに自由であり、小国はつねに制限されるという帝国主義の原則の基で大国ロシアが強引な南下政策を実施している現状に対して、小国日本は必死に国力を上げて対抗した。例えば、予算2億円(明治時代の1円は、今の3800円ぐらいに相当)の海軍軍備拡張計画を実施し三笠を竣工させたり、外交を円滑に進めるために日英同盟を締結させた。しかし、露国の日本に対しての態度は依然として変わらず、強気で傲慢であった。これに対して、日本も外交で処理しようとするが、当時の露国が条約を破棄することは通例のようになっていたため、条約を結ぶことなく開戦に至った。

開戦に対して日本の国力は露国に対して圧倒的に不足していた中、日本が勝利を遂げたのは多くの歴史的偉人が寄与している。軍費調達のために渋沢栄一を説得した児玉源太郎。日英同盟の締結に貢献した林董(ただす)。旅順閉塞作戦を決行し、戦死した広瀬武雄。日本海軍を一から築き上げた山本権兵衛。

多くの偉人の国の実利を上げることに奔走した結果、
日本はロシアに勝利することができたと言えるだろう。

個人的に三巻の一番の見どころは海上開戦であると思った。露国の主力艦隊バルチック艦隊とは戦っていないが、閉塞作戦を実施しようとする東郷とマカロフの海上での戦いは読み応えがあった。




良いなって思った文章

政治家がどのような理想をもっているかで人物の品格が決まるのだが、しかし政治が現実から離れて存在しない以上、理想の比重が重すぎる人物は、結局は単なる願望者か、詩人かそれとも現場否定のヒステリー的な狂操者だ。

90p

実行なき理想はただの狂操者なんだなと改めて考えた。政治家だけではなくて人の品格を決めるのは理想であるのなら、壮大な大義を抱えて生きよう

どの時代のどの国の軍人でもその単純な頭脳が侵略事業に熱中したとき、侵略以外の態度をとる国民や政治家を非愛国者の扱う性向にある

93p

今の日本は平和事業(?)に熱中していて、軍備拡大や武装について扱う政治家や国民を
過剰に批判する傾向にあるように思う。日本の歴史から見れば難しい問題ではあると思うが
いつの時代でもこういった状況は起きるのだなと思った。多分、共通の敵を見つけたときにその集団は団結力を増すのではないかなと思った

(日露)戦場では互いに勇敢さを美とみる美的信仰があり、自分も美であるとともに、敵もまた美であってほしいという望む心を持っていた

130p

大軍の将帥は片々たる才気だけでつとまるものではなく、
全人格がそれに適いているかどうかで決まる

156p

リーダーは頭が良いだけでもダメだし、懐が深いだけでもダメで
全方面に適している必要がある。意外とリーダーは器用貧乏の人が向いてるのかも


優れた戦略戦術とはうわば算術程度のもので、
素人が十分に理解できる簡明さを持っている

196p

難しいことを難しいく伝えるのは簡単で
難しいことを分かりやすく伝えられることが大切なんだなと

運と兵員の死を初めから願っているような作戦なら、作戦家は不要である

秋山真之257p

真之が生きていれば、太平洋戦争はきっと変わっていた


”此度の壮挙に死すれば、求仁得仁のものなり。邦国の前途は隆盛疑いなし
憂慮を要せず、安心して死すべし”

八代六郎261p

閉塞作戦を実施する際に八代が書いた手紙。
維新後飯を廃止し、士族の特権を解消し、徴兵令を布くことで国民を兵にした。
閉塞に行くことは死ぬ確率が高く、その志願者に2000人以上の人が集まった事実に
八代はこの国民的気概があれば日本は大丈夫と思ったのだと思う

参謀の要務とは円滑滑脱として上と下との油にならなければならない。
光明は断じて表してはいけない

秋山好古288p

潤滑油的な存在は組織には重要。
功績を自分から決して言わない真之はかっこいい

一家一族、邦家の実利を挙げ、名利は放棄して速やかに閑居するを要す

秋山好古289p

司令官はあまりにも鋭敏であってもよくない。反応が鋭敏すぎると帰って事を誤る。極所において鈍感になる必要がある

319p

歴史について知ったこと

日清戦争当時の日本海軍は劣弱そのもの。一等戦艦(一万トン以上の戦艦)は日本にないがロシアは十隻。二等戦艦(七千トン以上の戦艦)日本はゼロ、ロシアは八隻。三等戦艦(七千トン未満の戦艦)日本ゼロ、ロシア十隻。日本が持っていたのは2等巡洋艦以下の艦種。

45p

薩摩的将帥の典型。
1.自分の実務を全て任せる優れた実務家を探す。
(自分の感情と利害を抑えて選択する)
2.実務家がやりやすい環境を整えて全てを任せる

51p

→西郷従道(つぐみち)、西郷隆盛の弟

戦艦”三笠”ができたのは西郷従道が予算を流用した結果。
もちろん、国家予算の流用は違憲。それがバレれば腹を切って死のうと
権兵衛に言った。

64p


ロシアと日本の民族性の共通点は対外的な華やかさを好む点

69p

帝国主義の原則は、大国はつねに自由であり、小国はつねに制限される

103p

ロシアは民族としてお人好しだが、
国家のことになると常軌を逸した行動をする

105p


日本が経験した歴史的事実は諸外国間での外交史の中でも嗜虐的外交。
白人同士では通用しない外交戦略が異教の劣等人種とみられている黄色民族ともなると、平気で取られるというところに日本人の辛さがある

司馬遼太郎178p

→・米国の広島の原爆投下
→・ソ連の不可侵条約を破って満州へ大軍を殺到させる
   倫理的良心はわずかしかなく、日露感でもそうであった。

国家観的な人種問題的課題は平時ではさほど流出しない、しかし、戦時ギリギリの政治心理の場になるとアジアに対してはやっていはいいのではないかという思想が露出する。

著者179p

艦隊保全主義、士気の低下 陣地推進主義のロシア

日本人は古来、小部隊を持って奇策縦横、大軍を翻弄撃破することに戦術があるとして、そのような奇功の主を名将とした。源義経の鵯越の奇襲や楠木正成の千早城の籠城線など。

285p 

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