スレイト・オブ・ガルラジ2022

「原点回帰、思い付いた時に書きます。って書いてあるけどこれどういう事ちーちゃん?」
「知らん」

2/11年魚市すず(20)

ダイニングバー今夜も乾杯
「いらっしゃいませー。って結か。急に呼びつけて悪いね」
「いえいえ。私も晩御飯のおかずを買って帰ろうと思ってたんで。ほらすずさーん、起きてくださーい!」
カウンターで突っ伏している背中をさすると眠たげな声が帰ってました
「んっ?結さんですかぁー?ちょうどいいところに来ましたね。まずは駆けつけ3杯からですよ。凪沙さんおかわりみっつ!」
「うわっ本当にベロンベロンに酔ってますね。ほらすずさん帰りますよ。それにわたしはまだ未成年なんでお酒はダメです。凪沙さんが捕まっちゃいます」
「なーに正論を言ってるんですか。つまりわたしの酒が飲めないって言うんですね結さん」
そういうと酔っ払いは再び意識を眠りの国に旅立ってしまいました
「かれこれ一時間くらい起き上がってはこんなノリで来たお客にウザ絡みをするんですずを家まで引っ張ってほしいって言った理由もこれでわかったでしょ。今日のおすすめをいろいろ詰めたからこれ持ってって、バイト代って事で」
「ありがとうございます凪沙さん。まあお誕生日だし多目に見てあげましょう」
「そうだな、本当はシラフのうちにあげようと思ったんだけどあっという間に酔い潰れちゃったんだよなあ。このケーキとプレゼント本人と一緒に家に届けてもらっていいかな」
「お安い御用です。代わりにすずさんを助手席に乗せるの手伝ってもらっていいですか?」
「あれ、いつの間に免許取ったの結?」
「わたしも社用車の運転とかしますからね。ハンドルキープは任せてください」
「それは頼もしい。これで3人で出かけても私は堂々と酔い潰れながら車で帰れると」
「もーっ問題児の人数を増やさないでくださいったら!」

3/9 白糸結(19)

ダイニングバー今夜も乾杯
「こんばんはー!」
「おーいらっしゃい本日の主役!お誕生日おめでとう、そして来月から成人おめでとう!」
「成人とは言ってもお酒は飲めませんけどねー。さっきから静かだなと思ったらすずさんはどうしたんですか?」
「大学の同級生が単位落としたとかで『全く仕方ありませんね…』って言いながら勉強教えに行くって。お祝いだけ預かってるよ、はいこれ。こっちはあたしから」
「ありがとうございます!凪沙さんのプレゼントの中身はどれどれ…金属製のタンブラー!」
「お酒は来年って事でその前祝いにね。家で使ってもいいけどお店に持ってきてくれたらそれに注いであげるから存分に使い倒して!」
「では早速!」
「なら早速軽く洗って拭いて…結は飲みたいものとかある?」
「そうですね…折角なので凪沙さんのオススメとかありますか」
「ふーむ…そうだなー…甘酒とかどう?夏の季語だから本当のシーズンはもう少し先だけど」
「ではそれで!」

3/24 桜泉真維(20)

カフェテリアばんざい
「真維ちゃんお誕生日おめでとーっ!」
「真維さんおめでとうございます。これ、本日の主役なんでかけといて下さい」
「あらあらこんな豪勢に。ありがとう二人とも」
「なんとっ!今年は一生に一度の真維ちゃんがお酒を飲めるようになる日という事で」
「主に春花っちと私が手伝って真維さんにいい感じの思い出をプレゼントしようという次第です。まずはこちら、うちの両親からも太鼓判を頂いた岡崎の地酒を…おっとっと」
「そしてこちらがこの前お仕事でお伺いした方に事情を説明して今さっき取ってきたばかりの桜の花びらを載せて…完成、花見酒!ささっどうぞどうぞ」
「お酒に耐えられなかったら送迎できるようにしてあるんで真維さんは心置きなく楽しんで下さい」
「春花…智加ちゃん…ありがとう。ありがたく頂戴するわ」
初めて飲んだ日本酒は優しい味がした

4/1穂波明莉(19)


穂波家
夜の静寂を破るローター音がすぐそこまで近づいてきたと思ったらベランダに人影が降り立ち私の名を呼びました
「アカリ!緊急事態だ、今すぐ来てくれ!」
何が起きたかもわからずかぐりんさんに手を引かれて縄梯子に飛び乗るとそこには以前用意した冒険用の衣装に身を包んだとくちゃんさんが
「よし、ちゃんと全員揃ったわね。それでは出発進行!」
ヘリコプターから近くの空港を経由してチャーター機に乗り込んで飛び立った先は南東の方角。揺られ揺られて赤道の少し手前辺りに来た辺りで二人が神妙な面持ちで私の席にやってきました
「アカリ、騙してすまない。実は緊急事態なんて無くてこれはエイプリルフールなんだ」
「何となくそんな気はしていましたが何のために?」
「それは私が説明しましょう!アカリちゃん、今日は何の日?」
「エイプリルフールで、わたくしの誕生日ですわ」
「そう!そして法的に今日からアカリちゃんは成人です。お姉さんの仲間入りです」
「という事でとくちゃんが本場バヌアツの成人の儀をしようと企画書を持ってきたのでアカリのご家族含めて全員で乗っかった形なんだ」
そう言うと二人が後ろに隠していたバースデーケーキを取り出して
「「ハッピーバースデーアカリ(ちゃん)!」」
響くクラッカーの音を聞きながら私はふと昔本で読んだ知識を思い出しました
「ありがとうございます…ところでとくちゃんさん、わたくしの記憶が間違ってなければバヌアツの成人の儀って…」
「ナゴールって名前だけどつまりはバンジージャンプよ」
「やっぱりでしたわー!」
「大丈夫だよアカリ、先にお姉さんの先輩であるとくちゃんが飛ぶから」
「土壇場で私を売るのかぐりん!?」
「最初っから計画に織り込み済みだよ。現地の方との交渉は全部ボクがやってきたからね」
「嘘やーっ!」
お父様、今年もカグラヤ怪奇探偵団は賑やかですわ

5/5神楽菜月(16)


カグラヤアジト
「『お誕生日おめでとうかぐりん!久しぶりに実家に帰省するので直接プレゼント渡せなくてごめんね!その分愛情たっぷりなのはお姉さんが保証します』かぁ」
「とくちゃんさん度々『実家の味が恋しいーっ!そばめしー!明石焼きー!』って叫んでましたし進路報告とかもちゃんとしてないって言ってましたから寧ろ今行かないといけないやつですわ」
「そうだね。進路報告といえば彩乃さんは東京の調理師学校で資格を取る事にしたんだってこの前花菜から手紙が来てた」
「わたくしの所にも『ミルが来年受験だから予備校に行ってる時間が多くて暇ー!明莉ちゃん遊ぼうよー』って吉田さんからメールが届きますわ。あらお届け物。しかも結構重いですわどなたからでしょう」
「花菜からだ。『菜月さんお誕生日おめでとう!それと先日もまたガルラジオブザ・デッド3の企画会議に付き合ってくれて重ねてありがとう!カグラッティとカナーニャがレイディオ復活の為にフジタ仙人を探す旅の途中でリュウゼツランの花が咲くシーンの話をしたのを覚えていますでしょうか。そのシーンはラジオドラマだけれども実際にふたり見てみたいと思っています。鉢を贈りますので花が咲いたら教えてください。ライブツアーを投げ出してでも見に行きます』だってさ」
「今調べたらリュウゼツランの成長期は確か最長50年くらいかかる筈なのでだいぶ先の予約ですわね」
「全員還暦を超えた#2072年もガルラジ!いいじゃないか。是非やりたいね。藤田さんは大変そうだけど」
「そうこうしているうちにお茶ができましたわ。ティータイムにいたしましょう。今日の茶葉はニルギリですわ。ケーキはわたくしのお手製ですわ」

5/22 玉笹花菜(16)


玉笹家
「ただいまー!」
「「花菜ーッ!おかえりーっ!」」
「数日振りの我が家、一日千秋の想いでした。まさかアイドルグループの方でイベントをやって帰ってくるのがこんな時間になるとは思ってませんでした」
「花菜のご要望に応えて晩御飯用意しているけど…本当にこれでいいの?」
「うん!のーちゃんのお味噌汁と焼魚がとても恋しかった。今日これを食べるためにわたしはずっと頑張ってきた」
「そう言ってもらえると家事冥利に尽きるわ…ささっ冷めないうちに食べて食べて」
「ちょーっと待ったァ!」
「五月蝿いバカ美。あたしの完璧な晩御飯にケチをつける気?」
「あるんだなあそれが!さあ花菜、こちらを!」
「彩美卵『寿』…?」
「うわっ何それ…特に名前…って言いたいけどそれ無茶苦茶高いやつよね。あんたの一日分のバイト代が消し飛ぶくらいの」
「流石彩乃、お目が高い。日本最高の卵と名高いこれで卵かけご飯を作れば…!」
「ああっ!花菜が欣喜雀躍の体制に!」
「みーちゃん、のーちゃん。品がないのは重々承知ですがわたしはご飯をおかわりする欲求を抑えられない。ゴゴゴゴゴ…!」
「見るだけでわかる。流石の超高級品だわ…花菜、明日の朝ご飯にこの卵使って何か作ろうと思うんだけど食べたい物ある?」
「本当!?神崎仏様彩乃様!オムライス!」
「あんたには言ってない!」
「わたしも食べたい!」
「任せて花菜!宇宙一のを作るから!」

6/21玉笹彩美、玉笹彩乃(23)


???
「みーちゃん、のーちゃん。目隠しを外してください」
「花菜…!?ってここは…」
「お誕生日おめでとう!みーちゃん、のーちゃん!」
「ここあたしのバイト先のお店!」
「店長さんに事情を説明して夜まで貸切にしてもらいました。朝から晩までいつも二人に助けてもらってばっかりなので今日はわたしがおもてなしをする番です」
「じゃあ今日は花菜にオムライスにハート描いてもらったりわにわにきゅんしてもらったりツーショチェキを撮ってハートマーク書いても許されるの!?」
「いいのです!えっへん」
「最後は現役アイドルとしていいのかな…いつもあたしが作る側だったけど花菜の心のこもった手料理を今日は食べていいんだ…じゅるり」
「彩乃ってたまに実妹に対してヤバい目つきする事あるよね」
「アンタ鏡見た事ある?」
「もちろん。世界一のセクシーアイドルが写ってる」
「…みーちゃん、のーちゃん。ご注文はお決まりですか」
(無言で顔を見合わせる)
「「スマイルください!」」
「はいっ!」

7/1二兎春花(21)


???
「はい、春花。着いたわよ」
「ここは…どこ?ホテルみたいだけど」
「ここは名古屋市内の宿泊者限定のナイトプール併設のホテル。毎日外を駆け回って茹蛸みたいになっている春花っちに一足先に夏の涼を届けようって事で真維さんとわたしが計画しました。夜通し遊んでそのまま三人で一泊するところまで親御さんに話は通してあります。という事でハッピーバースデー春花っち」
「ちーちゃんすごーい!…けどわたしお仕事終えてそのままだから水着も何もないよ?というかオカジョ卒業してから水着とか買ってないよ?」
「ちゃんとレンタル水着があるから安心して。防水カメラとかその他プール満喫グッズは私がきちんと用意してきました」
「今気付いたけど真維ちゃんすごい荷物だね…車のトランクがパンパンだ」
「わたしたちも今年の暑さには辟易してたから涼みに行くのを楽しみにしてたけど真維さんはかなり本気で用意してたな…」
「だって私達花も恥らう現役女子大生と専門学生と若社長なのに春花が言ってた通りオカジョ卒業してから一度もプールとか海に行ってないのよ!?せめて春花の誕生日くらい全力でエンジョイしないと!」
「言われてみれば…ありがとうちーちゃん、真維ちゃん!全力で満喫しようね!」
「「おーっ!」」

7/9誕生日とか関係ないある日

金沢駅前のスタバ
「この通ーりっ!どうかお願いします手取川先輩!」
隣の席に座っている少女が手を合わせて頭を下げる
「いや急にそう言われても…何回か言ってるけど私未経験だよ!?」
「そこを何とか。ちゃんと先輩の機材は用意しますしお礼も後日ちゃんとするんでどうか何卒!」
「そもそも私受験生なんだけどわかってる…?」
「OGの先輩のめっちゃ目立つ髪色の友人さんが『あの子なら推薦で東京の大学行けるだけの内申あるから』って言ってましたけどダメなんですか!?」
「ったくあの先輩は…姉に似て私の扱いだけは手慣れ過ぎてる…」
諦めの境地に至った私はため息をついてから後輩と目を合わせた
「じゃあ確認しますよ。文化祭の日の軽音部のライブで対バンの助っ人をやる。それ以降の拘束とかは特になし。受験前とかに呼び出したら本当に怒りますからね?」
「おおっあなたが神か。取り敢えず今日はわたしが奢るんで何でも飲んでください!」
こうしてわたしの高校最後の夏はちょっと騒々しい形で幕を開ける事となった

7/26手取川海瑠(18)

徳光PA
「わざわざこんな所まで呼び出してどうしたんですか吉田さん。プレゼントなら朝にもらいましたよね」
何度も見てきた2階の休憩スペースにわたしに背を向けて座っている吉田さんがこちらを向くと共に傍から何かを取り出す
「ガールズラジオチーム徳光。海瑠と文音のマンデーラジオー!パーソナリティの吉田文音でーっす。まず早速ですがお便り紹介!RN:シスターヨシヨシ…ちゃんからのお手紙です」
「いやちょっと待ってくださいよ吉田さん!何で!急に!ラジオが始まるんですか!」
肩を掴んで激しく揺さぶられてやっと吉田さんは奇行を止めた
「お便り読んでる途中だってのにもー。それがさーこの前用があって静岡の方に行ったから金明さんのお店に行ってみたんだよ」
「…唐突ですね。わたしも興味はありましたがいかんせん飲み屋なので未成年には気軽に寄りにくい場所ですからね」
「めっちゃいいお店だった。2年後につれてってあげる。その時にさー、2ndシーズン終わった年の年末に富士川の3人で観覧車の中でラジオをした話を聞いてこういうエモいやつミルが高校生のうちにふたりでやっておきたいよなーって」
あまりにも吉田さん個人の欲にまみれた動機で思わずため息が出た
「…理解はしました。ところでその葉書は?」
「最近近況が気になってたアタシの友人とか実家に寄るついでに妹たちからミルへのメッセージ貰ってきた」
「…そういうのは先に言ってくださいよ。心の準備がいるじゃないですか」
吉田さんが自分の横の椅子を指で指し示す。お前の特等席はここだろ?と
深く、深く息を吸い込み吐き出す
「みぃ〜んなぁ〜!何度墓石の奥深くに押し込んでコンクリで固めて出れないようにしても直ぐに封印を突き破って帰ってきちゃうミルミル星のおしゃまな王女様、プリンセスミルミルだよぉ〜っ!今日は〜、な・ん・と!記念すべきミルミルのお誕生日〜!お友達のヨシヨシちゃんも駆けつけてくれて、いろんな星のプリンセス達からお手紙を貰ってきてくれたの〜!ミルミル嬉しくて、泣いちゃうかも〜!」
今度こそ、今度こそ最後だから…!ミル本人はそう思っていたらしいがその口は心の底から笑っていたんだよなあ(後日吉田文音が実家でこの話題が出た時に語ったとされる感想)

8/31 吉田文音(26)

徳光海水浴場
ご飯の支度とかはお母さんがやるから夕方5時に海水浴場に来てください。とミルが言っていたので愛車を走らせて来たが流石にこの時間に泳ごうなんて人間はほとんどいない。砂浜を歩きながらひとり黄昏ていると聞き慣れたバイクの音が聞こえてきた
音が止んだので振り向くと待ち人が息を切らして走ってくる
ミルの背中には背中に大きな…なるほどそういう事ね
「すみません吉田さん。ちょっと支度するので待っててください」
そう言うとミルは背中に背負ったケースから中身を取り出す。この夏受験勉強の傍らお母さんに怒られながら練習していたギターを構え私と向かい合う
「お誕生日おめでとうございます吉田さん。これが今の私の気持ちです」


どんな内容かって?それは秘密。ミルの本心を知っていいのはアタシとミルだけ。くるみさんにだって内緒。ただまあ…秋の学園祭までもっとギターの練習しないとねってのはお互いに思ったみたいだけど。でもすっごく嬉しかった。好きな人が慣れない事しながら必死に思いを伝えてきた夏の終わりのこの時間をアタシは一生忘れない

9/20 金明凪紗(27)

ダイニングバー今夜も乾杯
「いらっしゃいませー!ってあれ?すず。ここ最近顔見せなかったけど何かあったの?」
「去年同様短編が一本作れそうなくらいの大冒険をしてきたところですね…。ただし今年はお父さんではなく私自身がですけど」
「…って事はまさか…例のアレを手に入れたの?」
「勿論です。天才美少女年魚市すずの行動力を見くびらないでください。じゃんっ!山奥に引き篭もってる陶芸家さんが年に数個しか作らない特製のビアカップです。市販の缶ビールですらこれで飲むと最高に美味しいと噂になっていた奴です」
(バタン!)
「凪紗さん!約束通り釣ってきましたよ!」
「結!半分冗談だったんだけどまさか本当にカツオを釣ってきたの!?」
「港の漁師さんに頼んで漁船に乗せてもらいました!捌き方も教わってきたのですぐに食べられる状態ですよ」
「すず…結…」
「さあさあ美味しいものは新鮮なうちに!わたしはまだお酒は飲めないのでソフトドリンクですけど乾杯しましょう!」
「そうですよ本日の主役さん。ほらグラス持って。今年も、来年もこれからも誕生日はあなたと」
「「「カンパーイ!」」」

2022/9/25 手取川海瑠最後の学園祭

海瑠の通う高校
息を切らして体育館に着くと入口であんまり見たくない顔を見つけてしまった
「あれ、誰かと思えば我が愛しの妹じゃん。どうしたの?」
「げっ、何でいるんですか姉さん。今年の学祭は招待制の筈では」
「そりゃあミルのためなら色々なコネをちょちょいのちょいと。今演奏してる人の次がミル達のバンドだからちょうど良いタイミングに来たねえ」
「OGだから後輩達に色々捕まってしまって何とか撒いたところです。何で中に入らないんですか?」
「うーん、乙女心?」
「相変わらず訳の分からない事を…」
「いやアタシも入ろうかと思ったんだけど何かこういう晴れ舞台を親とかに見られてると嫌な気持ちってあるじゃん。だったら入り口から見える範囲で陰ながら見守ろうかなみたいな」
「いつの間にか後方彼氏ヅラオタクみたいな事を言うようになりましたね姉さん。姉さん風に言うなら『手取川海瑠は1stシーズンから今日まで色々な人と、場所と共存できるようになった』んですからそんな事一々気にしたりしませんよ」
「あ、やっぱり?なら行こっか」
「う、腕を組まないでください!恥ずかしい」
『胸張って……』
「あっ始まる。急げマイシスター!」
『Ladies and Gentlemen! and Boys and Girls Listen!』

10/10 徳若実希(23)

カグラヤアジト 徳若の部屋
「とくちゃーん!お誕生日おめ…」
「しーっ…!ですわかぐりんさん」
「どうしたのさアカリ。とくちゃんの誕生日パーティの段取り忘れちゃったのかい?…ってなるほどそういう事か」
「『仕事も!趣味の占いも!ライフワークたるカグラヤの活動も!全部こなしてみせる!それがデキるお姉さんスタイル!』って豪語なさってましたが日頃の疲れが溜まってらっしゃるのですわ。アジトに来たのも遅い時間でしたし…プレゼントとご馳走は起きてからのお楽しみにしましょう」
「そうだね。けどソファで雑魚寝のままだと風邪ひいちゃうから毛布持ってくるよ」
「…かぐりーん、アカリちゃーん」
「!?!?とくちゃん起きたの?」
「いえ、寝言ですわ」
「すきー…えへへ…」
「起きて何言ってたか知ったら顔が真っ赤になるタイプの寝言だね…それでこそとくちゃんだと思うけど」
「わたしたちカグラヤはー…ずーっといっしょー…おねーさんのいうことはー…」
「「「ぜったーい」」」
「だもんね」
「ですわ」
「それじゃあアカリ、朝になったら宜しく」
「ええ、かしこまりましたわ。おやすみなさいませ」

11/13 藤田ゆきの(??)

どこかのオフィス
「……さーん!…田さーん!」
同僚が私を呼ぶ声で目を覚ました。どうやらお昼を食べた後机で突っ伏して寝ていたようだ。
「さっきクール便とか宅配便とか色々来ていたのでここ置いておきますね。確かこのガルラジって藤田さんが以前担当されていた部署の企画ですよね?」
はて何だろう。事務局を引き払った時に荷物はまとめて持ち帰ったし紙の書類は纏めてシュレッダーにかけた上で焼き芋を焼いて美味しく抹消した筈なので忘れ物はない筈なんだけどなあ…?
宛名を見ると少し前まで何度も見た名前がそこには書いてあった。ガルラジに参加していたパーソナリティのみんな。ガルラジを支えてくれていたスタッフのみんな。ガルラジを好きでいてくれたリスナーのみんなが思い思いの贈り物を私に贈ってくれたのだ
「こんなに沢山お誕生日のお祝いが届くなんて随分慕われていたんですねえ藤田さん…って泣いてる!?ちょっ!ハンカチいります?」
 こうして届いた沢山のケーキや贈り物のお酒のせいで健康診断の判定が微妙な感じになってしまい冬の社内マラソン大会を全力疾走する羽目になったのはまた別の機会に語るとしましょう

12/10 萬歳智加(21)

カフェテリアばんざい
ドアを開けたら派手なクラッカー音が炸裂して見知った顔が抱きついてきた
専門を出て、希望の企業に就職したはいいけれども夏を過ぎたら入社初年度とは思えない激務に次ぐ激務。土日祝の概念も崩れて今日がなんの日なのかもすっかり忘れかけていた。
「ちーちゃんお誕生日おめでとう!」
「はい、鞄。こっちで預かるわ」
まるで若奥様のような動きをする女子力の塊の真維さんと私よりも先に社会に出て、あちこち駆け回っているのに疲れひとつ見せず私を祝いに来てくれている春花っち。私の大切な友達が私を迎えてくれる。専門の友人や、会社の同僚とかとも付き合いはある。けれども私の大切な日に真っ先に駆けつけてくれたのはこのふたりだった。これからもずっとそばにいてほしいかけがえのないふたり
「ありがとね。本当にありがとう」
「どうしたのちーちゃん。熱でもあるの?」
「春花、智加ちゃんだってたまには素直になる日だってあるのよ」
「ほんにこのふたりは…!」
「まあまあ智加ちゃん、折角だから座って座って。ケーキも用意してあるけどこの前面白いものを見つけたから三人で一緒に見ましょ」
「面白いもの…?」
そう言って真維さんが取り出したものはタブレット。映し出されたのは…どこか見慣れた、けれども少し違う風景
「ラジオブース…?」
「そう、私たちが高速道路のSAでラジオやったのに憧れて野良ガルラジをやりたいって思って自分で始めた子達なんですって」
「凄いね!ちーちゃん、まいちゃん、応援のお手紙書いて送ろうよ!」
私達が起こした波が誰かに影響を及ぼし、また新しい波が生まれていく。願わくばこの連鎖が善く続いていきますように
「うん、そうだね。みんなで書こまい」

スレイト・オブ・ガルラジ2022完

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