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【創作】たけし先輩との100日間#14

#14日目「特別扱いのたけし」
 白塗りの車は凄まじい速度で、街の中央に見える高台へと向かった。入り口には王座入り口と書かれていて、この国の防衛が不安になる。
「あれ、先輩。ポンチョどうしたんですか」
「暑いから脱いだぜ」
 もしかしてたけし先輩が加工品は着れないと言っていたのは単に着たくないということなのだろうか。ぼくは呆れて何も言えなかった。入り口の城門は固く閉ざされ、この国の入り口と同じ格好をした衛兵が立っていた。
「怪しい奴!」
 このくだり何回やるのだろう。衛兵たちは槍をこちらに突き出したが、今度はすぐに槍をおさめた。
「やっ、失礼しました。たけし様、お待ちしておりました!」
「お前もオレのこと知ってんのか」
 城門が音もなく浮上して開門する。
「これ、どうなってんの?」
 たけし先輩があっけらかんと聞く。
「反重力装置を使っておりまして」
 その時、国の西側にあった巨大な湖から間欠泉が吹き上がった。
「うわっ」
 思わず身構える。遠くのほうで吹き上がったのに、その規模が大きくてすぐ隣で起きたかのようだ。
「ああ、オレの国にもあったな。確か」
「反重力エレベータといいます」
「そんな名前だったか? もっと大きかったような、こんな小型化できたんだな」
 たけし先輩はやはりこのひとはぼくの世界の人ではないのだなと思った。反重力だなんて想像がつかない。ふと、たけし先輩の尻が黒く覆われていることに気がついた。こんなに毛深かったか。

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