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【創作】たけし先輩との100日間#07
#7日目「脳天気たけし」
元いた世界では見たことのない赤土を踏み締めると、小石がちくちくと足の裏に刺さる。裸足で歩くことに慣れていないぼくはうんざりしていた。
「先輩、いつまで歩くんですか」
「街が見えてくるまでかなあ」
左右に揺れる毛むくじゃらの尻が汗でじっとりと濡れているのが腹立たしい。
「かなあって何ですか」
「俺もこっちで合ってるのか確証がないんだよ」
「えっ、適当に歩いてるってことですか」
「小石が落ちてるからよお。こっちかなって思ったんだよな」
ぼくは深いため息をついた。てっきり方角が分かっていて歩いていると思っていたので、全身をどっと疲れが襲う。さっき頼もしいと思った気持ちを返してほしい。
「小石がある方向に街があるってどういう理屈ですか」
「理屈は知らねえけど、そのうち着くだろ。チャボテンもその辺に生えてるし、ヤピの木だってある。飲み物も食料もあるってわけだ」
呑気すぎる。確かに赤土の沿道には棘のないサボテンのような植物がときどき生えている。これが食べられるのかという疑問が浮かんだが、きっと食べられるのだろう。そこで不思議なことに気づく、もう6時間は歩いたが日は暮れず、痛みを感じる足裏には怪我がない。
「あれっ、そういえば、お腹が空かないですね」
「言われてみればそうだな。なんだかお前の世界でタフになっちまったのかもな!」
そう脳天気に答えるたけし先輩はさっきより体毛が増えている気がしたが、彼は尻の毛をビリッとむしると適当にその辺に投げ捨てた。
「うわ、そこ歩くんですから適当に捨てないでくださいよ!」
「わりいわりい」
ぼくは苛立ちながら赤土を踏み締めた。