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都市計画・まちづくり・再開発/建築史・建築論研究室修了/組織設計事務所/1990年神奈川県生

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都市計画・まちづくり・再開発/建築史・建築論研究室修了/組織設計事務所/1990年神奈川県生

最近の記事

とどまる思想の社会デザイン論 vol.2 (後編)

03.直接性と曖昧性  土地・建物の所有者、自治体、デベロッパーなどの関係者の様々な動機をうまく連動させて、ひとつの事業として成立させる仕組みが市街地再開発事業であり、このように複数のつながりが複合して成立している事例は他に少ないだろう。ただし、ただ複合していれば良いという事ではなく、前回までに取り上げた片町きらら★1の成り立ちを見ると必要な工夫が見えてくる【図1】。つまり、片町きららの場合は権利者自らで保留床を購入(増し床)してリーシングを行うことで、デベロッパーに任せる代

    • とどまる思想の社会デザイン論 vol.2 (前編)

      01.はじめに  前回の投稿までの「とどまる思想の社会デザイン論(その1〜3+あとがき)」では、市街地再開発事業、文化財保存活用、スパイラルなどの都市・建築に関する事例を取り上げて、交換様式論★1などを参考にしながら事例ごとの成り立ちを分析し、その中で各主体がコントロールできる範囲を広げる事や自己言及的に事業を成立させる工夫などから、「とどまる思想」という考え方を導いた。つまり、何かしらの事業に参加するときはいずれかの交換様式(贈与、再分配、商品交換)を手段として、自分たちの

      • とどまる思想の社会デザイン論(あとがき)

        11.あとがきとして 前回までの投稿で「とどまる思想の社会デザイン論」としてその1〜3を投稿してきた。  最後に書いたように、交換様式A(贈与)、B(再分配)、C(商品交換)のいずれからも距離を取ってとどまることが、より自由な都市・建築を生み出すだろうと考えているのだが、普段あまり意識せずに使っている「自由」という言葉をあらためて定義しようとすると案外難しい。今回は自由の定義を勉強しながら、本論その1〜3の内容を自省的に考察することであとがきに替えたい。 12.二つのモデ

        • とどまる思想の社会デザイン論(その3)

          07.自己言及的 前回、他分野を参考にしながら交換様式A(贈与)、B(再分配)、C(商品交換)というつながり方の組み合わせで物事が構築されているという前提で、市街地再開発事業の分析を行った。この考え方を継続して他の事例にも応用していくが、まずは文化財の保存に関する考察から再開する。  文化財の保存では、所有者や研究者がその対象建物の歴史的、芸術的、考古資料及びその他学術的な観点などから価値を認識して保存活動(交換様式A)を行っていることに対して、行政が文化財保護法に基づく登録

          とどまる思想の社会デザイン論(その2)

          05.社会とは何か 都市・建築の実践において、その背後にある様々な主体の関わり方、収入の内訳、支出とのバランスなど、事業を成立させる要素を解きほぐして考察するために、哲学や人類学といった他分野にも迂回しながら補助線を導入して、ロジックを整理しながら進めていきたい。  早速ひとつ目の補助線として引用する文章は、1970年代の巨大建築論争における林昌二の意見として書かれた「その社会が建築を創る」という論考★1のなかの一文である。    この論考が書かれたのは、日本経済の成長に伴

          とどまる思想の社会デザイン論(その2)

          とどまる思想の社会デザイン論(その1)

          01.はじめに 本論は、都市・建築に関する様々な実践を対象にしながら、都市論や設計論だけでなく、それらの背後にある事業計画の成立過程を論じる試みである。  事業の成り立ちを、権利者、行政、企業などの各主体がどのような手段で参加しているかという視点で解きほぐし、それを哲学や人類学の視点を参考にしながら構造化する。同時にそれぞれの成り立ちがどのように変化したかの遷移を捉えることにより、事業の成り立ちを能動的に組み替えるための手法を見出し、より自由な都市・建築の実現を目指す。  ま

          とどまる思想の社会デザイン論(その1)