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しびれる表現 no.1  「推し、燃ゆ」

自分のなかからは出てきたことがないけれど、読んだだけで「そうそう、わかる!」となる表現にしびれます。書き留めておくことで、インストールできるわけもないのですが、何ごともやってみようということで。

機材や人を黒い車体に映り込ませて車が去る。

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姉が病院の売店の袋を雑にさぐって、お茶のキャップをぱきりと鳴らした。

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開店前に浄水に炭酸を吹き込みウィスキーを補充、豚肉は毎日絶対に出るから解凍、晩に立てかけた食器を戻し包丁を研いでおく、ところから始まって、いくつも分岐する流れに忠実に動かなければならないけど、これらが体に定着するまでに何度幸代さんに叱られたかわからない。何度も分岐していく道を覚え込んで、このときはこう、こうなるとこう、忙しいときはメモを見る時間もなくなるしそういう時に限って例外が現れて頭からどんどん、こぼれ落ちていく。

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風が鳴っている。戸口を閉めるごろついた音、波打つガラス戸の外から聞こえる二次会がどうとかいう声、幸代さんが食器を洗って立てかけていくとき特有の硬い水音、換気扇と冷蔵庫の音。

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この日は三時までのシフトだったから、いつもほどは疲れの溜まっていない髪を風になびかせながらうちへ帰った。

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母が付き添って病院から祖母の遺体が運ばれてくるあいだ、あたしと姉は先に母の実家についていた。姉がテーブルの上に散らかった新聞紙や賞味期限切れの昆布や小粒の梅干しのパックを端に寄せ、乾いて固くなった布巾を湿らせる。

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雨漏りの音が、ぺち、ぺち、と優しい平手打ちをくらわすように、三人のいる空間に落ちる。秋の雨は白く冷たく、空っぽの我が家をゆっくりと壊していく。

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