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【連載小説】風まかせ 2

この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

先生の言葉2

この時代の高専の卒業後には大きく2つの道がある。
1つ目は先に原木先生が言った就職、2つ目は大学3年生に編入する道だ。

この高専は1学科1クラス40人〜45人くらいいるのだが、実は半分の20人くらいが編入を希望している。

高専から大学への道は、普通高校から大学へ行くより楽だ。
高専生の大学編入組の勉強量は、明らかに普通高校の国立大学を目指して受験勉強している生徒たちより少ない。
しかも国立大学の編入試験日程は大学ごとに違うため、試験日が被らなければ受け放題なのだ。
それでも大学に落ちた学生は、高専本科5年のさらにプラス2年の専攻科を受験し入学する道がベターだ。

そう、当時の高専は大学編入できなくても高専専攻科が拾ってくれていたのだ。

そして大学編入の枠を争うのは、他の高専の学生か、工学系短大生、工学系専門学生となる。
ただ、中学を卒業してから20歳までの5年間で4年生大学卒業レベルの専門知識を身に付ける高専生にとっては、高専以外の学生は敵ではないと言われていた。

「次に、大学編入したい者。
大学編入したい者は特に選択科目の選定を良く考えること。旧帝大を受けるつもりなら、数学特論と英語は必須と思っておきなさい。」

(数特と英語か…)

心の中でつぶやいた。

数学特論はとにかく難しいらしい。
就職組にとってはまず選択肢にない。難しい単位を落として留年にでもなったらシャレにならない。

高専にもよるだろうが、この高専は年4回の試験合計で400点中の240点取れば単位が取得できて進級できる。つまり赤点60点だ。
逆に点数が足りない科目は、即留年となる。

原木先生は編入希望者への話を続ける。

「大学編入、専攻科進学をするなら必ず大学院まで行って修士になりなさい。」

先生が何を言っているのか、いまいち理解が追いつかない。
今でこそ修士課程に進学する人たちは多く、当たり前のことかも知れないが、当時の田舎の学生の感覚では、大学を出たら就職というのが普通だという感覚だ。

「今の時代は、研究、開発に携わるために大学を卒業して大手企業に就職しても学部卒ではコアな技術に携わるのは難しくなってきてるんだ。」

「必ず大学院まで行って、修士を取りなさい。親御さんたちにも、しっかり相談しなさい。」

(大学編入か…。俺は就職かな。)

成績40番台で後ろから2〜3番目、1年生、2年生と留年をギリギリ免れた私には、来年の4年生のことなどより、今年留年しないことの重要だった。

そんなことを考えてるうちに原木先生の授業は終わった。


第3話へ


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