本当の強さって
私は強く成りたかった。自分が人類で最弱の人間だと確信していたから。
だから強く成りたかった。そう成らなければ生き残る事はもう不可能だと確信していた。
強さは追っても追っても一向に近付かない。
やっと追いつきそうになったらすぐに光の速さで明日へ。(ダッシュさ~♪)
さらに厄介な事に追っていた強さが姿形をまるで変えてしまう事すら出てくる。
強さとは一体何なのだろう。私は一体どれほど追えば良いのだろう。いや、大体どの強さの形を目指せば良いのだろう。
そもそもが、目指す強さに辿り着ける事なんてあるのだろうか。
そんなある日、ふとだが、頭をよぎる思いが一つ。
「弱さを自覚し、弱さに絶望し、弱さに悲嘆し、自分の価値の全てを喪失する。」
「それでも立ち上がって強さに向かって行こうとする。その姿が無様だろうが。その顔面が涙と鼻水の嗚咽でグシャグシャだろうが。それでも目指す。それしか無いという状況であっても。」
「本当の強さとは、最弱の存在がそういう意志を捨てず諦めずに持てる持ち続ける事なんじゃないのだろうか?」
今、この時、この国だけでどれほどの人が自分の弱さにあらゆる絶望を抱き、首をもたげて生きているのだろう?
死に場所を求めながら死の恐怖からも逃げる、その弱さに絶望の重ね掛けをして悲嘆に暮れているのだろう?
それでも生きている。
「強く成りたい…こんな自分のまま終わりたくない…」
何をどうすれば良いのか。一体どこに向かえば良いのか。
そもそもこんな自分が強くなんて成れるのか。そんな都合の良いバラ色の未来を想えるものなのか。
それでも横たわる以外に力を出せない身体で強く想う。
「強く成りたい。まだ終わりたくない。」
もしかしたら、それは真の強さへと至る最初にして余りにも大き過ぎる一歩目なのかもしれない。
そうとは気づけないほどの小さくて儚くて頼りなくて。そして嘘臭くて。
そんな人生を揺るがすほどの、未踏の地へと向かう最初の一歩を既に踏み出しているのかもしれない。
それはもう既に、強い人だけが持てる最大最強の意志。その萌芽なのかもしれない。
まだ地面の下で誰の目にも留まらない。自分ですら光を感じられない場所での萌芽なのかもしれない。
「弱さを抱えたままに強さを目指せる強さ」
そんなまだ見ぬ大樹の姿を見せる。