一本道から迷路へと

道にうずくまっていた。道のような場所、真っ暗な場所にただ一人。
歩く力も無く、歩いたとてどこに行けるのか、行けたとしてそれが何になるのか。
「人生にゴールはない」
その言葉に絶望しかなかった。

それでも歩いた。理由は分からない。心に積もる想いは何も無かった。
ただ、自分の中に何があっても宿り続けた自分の存在そのもの、そんなような何かが歩く事を選択させた。
させてくれた。

何も見えなかった暗闇に、小さな光が見えた。だから進む足を速められた。
その間、自分の周囲にも小さな点の様な光がポツポツ見えた。気がした。
きっとそれは自分と同じような光だったのだろう。そう思えた。そう思いたかった。

いつしか自分が歩く場所は、暗闇の一本道ではなく果てしなく入り組んだ迷路になっていた。本当に、いつからか、気が付く間もなく。
迷路は限りなく続き、踏破出来るのかも全く分からない。
それでも歩む足の力はとても強く、行き止まりにぶち当たる度に冴えわたる頭を使い、今は光に溢れ見渡せる周囲の景色を頼りに出来る。

今、その途中で昔の事を思い出し、そして今を想う。
不思議でしかない。
「人はこうも成れるものなのか」
自分自身に感嘆する。それが自然とできる自分にも又感嘆する。

今がかつての自分の様にただ苦しいだけの人に、頑張れば報われるとは言わない。言えない。
自分はたまたまこう来られただけの存在だと知っているので。
それでも自分に対してだけは自身をもって力強く言いたい。

「それで良い、そのまま行けば良い。それだけでお前の人生は上々だ。」

-独り言-
自分が分からなくなり人生の道を見失う原因はとてもシンプル。自分の心の声を全て封印して隠してしまうから。
「自分の人生は誰かのものじゃない」なんて当たり前の言葉の意味が心で分からない内はきっと自分を覆いつくす心の闇は払えない。少なくとも自分はそうだったから。
自分が弱いままでも構わない。涙目でも歩けるのなら。でも自分の弱さから目を逸らして逃げ続けるだけじゃ絶対に望む場所には行けないし綺麗な景色が自分の眼前に広がる事も無い。
そして最悪なのは弱いのに何の担保もなく強がってしまう事。自分は強く賢いそこらの連中とは一線を隠す存在だと確信出来てしまう事。それは元々あった弱さを何乗にも深めてしまう最悪の人生選択。
「弱くて小さくて目も当てられない、それが今の自分。」そうハッキリと自覚し受け入れて、そしてそこから始まる人生があるという話。
ある人の強さのレベルは弱さに立ち向かい続けた時間に比例する。僕らは生まれついての虎じゃなく、知恵以外は特に強みも無いただの脆弱な人間だから。