Kager's fat pad
足関節の動きは正常に戻せているか?
足関節捻挫、外果骨折、ジョーンズ骨折や下駄骨折、舟状骨骨折など足関節の外傷を経験されたことがある方は多いと思います。
特に捻挫はクセになっているという方は私はこれまで何人も見てきました。
捻挫がクセになるのは仕方ないことなのか?
いえいえ、そうではありません。
捻挫がクセになっているのは、足関節の動きが正常に戻っていないまま生活しているからです。
つまり、リハビリが適切に行われていないためにクセになってしまう可能性が高いです。
捻挫に限らず、足関節の外傷後はしっかりと正常な動きがでるようにアプローチしていきましょう。
足関節の評価
以前にショパール関節の動きも足関節の背屈に関与すること。
内側アーチや外側アーチに対するアプローチを書いてますのでご興味のある方はこちらを参照にしてください。
<足関節背屈>
足関節の背屈で問題になるのは、距骨が後方に滑り込まずに足関節の前方が詰まるパターンです。
このような場合、通常の背屈軸より足部を外転することで背屈角度がアップします。
しかし、この代償動作のまま生活することで慢性障害の原因になってしまいます。
この問題を解決することはセラピストとしてマストだと考えましょう。
徒手的に評価はもちろんできますが、ここではセルフ評価をお伝えします。
片膝を立てて、立てた足の人差し指に向かって背屈を入れていきましょう。
この時に、足関節の前面が詰まる方は正常に背屈の動きが出ていないといえます。
<足関節底屈>
足関節の底屈では、まっすぐに底屈できるかどうかをチェックしましょう。
エラーのある場合は内反してきてしまうパターンが多いです。
このような状態でカーフレイズなどのトレーニングなどは、かえって痛みを作ってしまうリスクがあるので気をつけましょう。
この他にもチェックポイントはありますが、ここでは簡単に背屈と底屈の2点について触れました。
そして、この問題を解決するためのキーポイントは「内果周囲の軟部組織」になります。
前置きが長くなりましたが、今回は軟部組織の1つ「Kager's fat pad」についてまとめます。
Kager's fat padとは?
まずは、内果周囲の解剖を図で整理しましょう。
(ネッター解剖学アトラスから引用)
Kager's fat padとは、アキレス腱の深層かつ長母趾屈筋の表層にある脂肪体のことです。
後脛骨動静脈と脛骨神経が近くを走行していて、それを保護する役割があります。
(運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略から引用)
この脂肪組織は3つのパートに分けられます。
①アキレス腱パート(A):アキレス腱の深層部分
②長母趾屈筋パート(F):長母趾屈筋
③retrocalcaneal wedge(R) パート:アキレス腱付着部の深層部分
足関節の外傷やover useによって、脂肪体が拘縮するとアキレス腱の滑走性低下によるアキレス腱への応力集中、retrocalcaneal wedgeの炎症による疼痛などが起こります。
また、長母趾屈筋は距骨の後方を通過しており、背屈時の距骨の後方滑りを制限する因子になります。
脂肪体が拘縮することで長母趾屈筋、下腿三頭筋の滑走性低下を引き起こし、背屈制限になっている例はかなり多いです。
底屈ではretrocalcaneal wedgeが踵骨隆起とアキレス腱の間に入り込むのだが、滑走性が低下することによって異常な関節運動や疼痛の原因になります。
Kager's fat padの触診
アキレス腱を触知し、アキレス腱の深層部分をつまむように把持します。
側方から圧迫し、反対側の指は圧迫を開放すると脂肪組織の側方移動が生じます。
これをアキレス腱の深層部分から長母趾屈筋の表層部分まで行い、移動量の左右差など比べてみましょう。
圧痛初見と合わせて拘縮があると判断します。
あとは、見た目でアキレス腱のレリーフが綺麗に見えるかどうかもでも簡易的に予測はできます。
硬くなっているひとはアキレス腱がのぺっと太く見えることが多いです。
足関節の動きに問題がある方は、Kager's fat padの拘縮が原因になっているパターンはかなり多いので、きちんと評価してアプローチしていきましょう。
ちなみにアプローチ方法は脂肪組織を把持して牽引するように操作することで滑走性が出てきます。
表層のアキレス腱パートだけでなく、深層の長母趾屈筋パートまでしっかりとアプローチできるように組織間をしっかり触れる技術も身につけていきましょう。
お読みいただきありがとうございました。
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岩瀬 勝覚
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