声のかけ方(インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカス)
声の掛け方でパフォーマンスが変わる
人に指導することがある方は、普段どのような声かけを意識しているでしょうか?
・否定しないようにする
・褒める
・良くないところを指摘する
・選択肢や方法を教える
・相手に考えさせるように問いかける
・身体の特定の部位に意識を向けさせる
・動きの大まかなイメージを伝える
など、さまざまなことを意識して声をかけているかと思います。
どのような声かけに良いも悪いもなく、状況に応じて使い分けることが大切です。
その中で、相手の成長に繋がる、かつ、自分の意図した反応や変化を相手が示してくれたら正解と言えるのかもしれません。
重要なことは、こちら側がどう声をかけるのかで相手の反応は変わるということです。
私はよくトレーニング指導を行うのですが、声の掛け方によって動きがスムーズになったり、できなかったことができるようになったりします。
しかし、反対に過度に意識させすぎてしまい、身体に余計な力みが生まれ、かえって動きがぎこちなくなったりしてしまうこともあります。
せっかく指導したのにパフォーマンスを下げてしまうなんてことがないように、100%うまくいく方法はないとしても、うまくいく確率の高い方法、再現性の高い方法を知っておくことは非常に大切です。
そこで今回は、指導する時に知っておいて欲しい、インターナルフォーカス(内的意識)、エクスターナルフォーカス(外的意識)という意識の向けさせ方についてまとめたいと思います。
キューイング
指導する時の声かけを「キューイング(Cueing)」もしくは「キュー(Cue)」と言います。
このキューイングは、大きくインターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスに分けられます。
インターナルフォーカスは、身体の内側に意識を向けさせることです。
反対にエクスターナルフォーカスは身体の外側に意識を向けさせます。
例えば水泳のクロールで
・「肩甲骨から動かすように」とか「身体の捻りを使って」というようなキューイングはインターナルフォーカス
・「水を押すように」とか「イルカのように」というキューはエクスターナルフォーカスになります。
この意識の向けさせ方がパフォーマンスにどう影響するのかを調べた論文はいくつかあります。
結論から言うと上記の例ではエクスターナルフォーカスの方がタイムが速いです。
動作においてインターナルフォーカスを用いてパフォーマンスが向上したと言うことはほとんどありません。
水泳に限らず、垂直跳び、ランニング、ピッチングなどさまざまな動作でエクスターナルフォーカスの方が記録が良くなったという報告があります。
私の見解では、インターナルフォーカスは身体を意識することで過度に筋緊張が亢進してしまい、動きの繋がりを阻害してしまうためかと思っています。
このような報告があるにも関わらず、多くの指導者がインターナルフォーカスをしてしまいがちです。
(もちろんインターナルフォーカスのメリットもあるので後述します。)
こんな声かけしてませんか?
背中の曲がっている高齢者の方、あるいは猫背気味な誰か、でもいいです。
その人に対して「もっと背筋を伸ばして」「胸を張って」などのキューはインターナルフォーカスです。
これによって腰回りの筋肉が過度に緊張して、腰痛を助長してしまったりするセラピストは結構います。
しかし、面白いことに、このような人に対して「えんぴつのように」などのキューを用いると姿勢がよくなります。
ただし、このキューが「えんぴつ」が良いのか?、「シャー芯」が良いのか?、他のものが良いのか?、はその人のイメージのつきやすいものによるので工夫が必要です。
背中をまっすぐにしているつもりの人に対して、インターナルフォーカスはあまりよろしくないですね。
スポーツではどうでしょう?
・野球の投球で「肘をあげろ」
・サッカーのシュートで「膝下の振りを速くしろ」
・走る時に「足をもっと高く上げろ」
など
このような指導を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
これらはすべてインターナルフォーカスです。
あなたはこのような指導をして、選手のパフォーマンスを下げていませんか?
インターナルフォーカスはどのような時に使うべきか?
動作においてインターナルフォーカスはほとんどの場合パフォーマンスを下げます。
ではインターナルフォーカスが有効な時はどんなときでしょうか?
例えば、筋トレやストレッチなど単部位の運動では有効です。
論文の報告によると、単部位の筋トレで筋電図を用いてインターナルとエクスターナルを比較したところ、エクスターナルフォーカスの方が筋出力が低下していたそうです。
また、不活性化されている身体部位に対して、活性化させる目的で指導する時にも有効だと考えます。
身体操作のトレーニングの初期段階、リハビリの初期段階などは重要になってきますね。
まとめ
・局所の部位を活性化させる目的の時はインターナルフォーカスを用いると有効なことが多い。
・動作の時はエクスターナルフォーカスを用いる方が有効なことが多い。
・エクスターナルフォーカスは比喩(メタファー)を用いるが、どのようなイメージを持たせるかは人によってしっくりくるものが違う。
大きくまとめるとこの3点が今回の話のテーマになります。
私自身もまだまだ、どのような声かけが良いのか?また、どのようなイメージで伝えたら良いのか?
迷うことがあります。
試行錯誤しながら、クライアントのパフォーマンスを向上させられるように関わっています。
みなさんもインターナルフォーカス、エクスターナルフォーカスをうまく使い分けて指導してみてください。
お読みいただきありがとうございました。
謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚
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