多裂筋について
自分の身体の状態をよくできるセラピストの重要性
私は普段、理学療法士、スポーツトレーナーとして仕事をしています。
私がこの仕事において大切にしていることは、ストレッチやセルフケア、トレーニングを「自分自身がしっかり実践すること」です。
自分が行うことで、その効果や意識するべきポイントがわかります。
この作業が普段関わるクライアントへの指導に繋がります。
これは決して教科書を読むだけでは得られない、そして伝えられない部分でだと思っています。
なので身体が硬い人はある程度のレベルまではクライアントの柔軟性をあげることはできても、本当に細かい部分では硬さを残してしまていると思う。
インナーマッスル(深部筋群)が上手く使えていない人が運動指導したら、かえって身体を痛めてしまうこともあると思う。
自分自身が体現しているかどうかはそれくらい差があると思います。
自分自身が腰痛で悩むセラピストに腰痛を相談したいですか?
太っている人にダイエットの相談をしたいですか?
多くの人が相談したいとは思わないですよね!!
でも、過去に腰痛で悩んでいたセラピスト、太っていたけど今は痩せている人だったら相談してみたいですよね?
経験しているからこそ言えることというのは、けっして教科書では語れないことを多く含んでいます。
だからこそ、自分自身の身体を良くしていくことがセラピスト自身に必要です。
もし、今現在何か身体の不調に悩んでいるセラピストの方は、逆にチャンスです。
その不調を解決する過程が、そのまま同じような悩みを抱えるクライアントの役に立ちます。
私たちセラピストにとっては、自分の身体をよくすることも立派な勉強になるのです。
(だから私にとってこの仕事は天職だと思っています。)
苦手な部位や動きは無自覚に避けて、クライアントに指導、アプローチしてしまうのでぜひ自分の身体を徹底的に良くしてみましょう。
多裂筋は腰だけじゃない
そんな中、最近自分自身の足りない視点に気づきました。
多裂筋に対してみなさんはどのように理解しているでしょう。
私の中では、ざっくり述べると
・腰部で一番発達している。
。腹部のインナーユニット(横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群)を形成する上で重要。
という腰部の多裂筋に対してばかりフォーカスしていました。
しかし、多裂筋には胸多裂筋、頚多裂筋も存在します。
どこの多裂筋も姿勢保持をする上で超重要です。
私は姿勢が悪く、顎が前に出てしまうことが多いです。
顎が前に出ると、下部頸椎屈曲、上位胸椎が屈曲してしまい多裂筋が適切に機能していないことが多いです。
そこで胸多裂筋を意識した運動、頸部の運動(頸部は多裂筋以外にも頚長筋など他の部位も意識しているのでまた別の機会にまとめます)を実施していると明らかに変化を感じています。
これまで行っていた運動も意識するポイントを変えるだけでまったく効果が変わりました。
やはり、
「どんな運動をするか?」
よりも、
「どんな意識でその運動をするか?」
のほうが超重要です。
教科書的によくある多裂筋の運動として、上の写真のような「四つ這いで対角にある手足を伸ばすエクササイズ」がありますが、ただフォームだけ真似していても期待している効果は得られません。
また、どこを意識するかでも効果は違います。
例えば、
・腹圧を意識
・股関節を意識
・脇肘を意識
・胸多裂筋を意識
・腰の多裂筋を意識
など、
(こちらは悪い例。顎が前に出て、腹圧も抜けてしまっています。結果的に手足もまっすぐ伸びていないですね)
また反対に、過度に意識しすぎることで力んでしまってマイナスの効果が出てしまうこともあります。
自分自身が実践していないと、そこの意識の向けさせ方は絶対に指導できません。
私の言いたいことは伝わっているでしょうか??
多裂筋
前置きが長くなりましたが、自分自身の復習も含めて多裂筋についてまとめます。
まずは視覚的にイメージ。
腰部、胸部、頸部にかけて長く走行しています。
ただし、一つ一つの筋自体は2〜4椎体上に着くので長さは短い筋肉です。
最表層には広背筋、僧帽筋があり、その奥に菱形筋、菱形筋の深部に上後鋸筋、下後鋸筋などの筋肉があります。
頸部のあたりには頭板状筋、頸板状筋があり、その深層に最長筋、腸肋筋という大きな筋があります。
さらに深層に棘筋、半棘筋があり、その深層にようやく多裂筋があるのでかなり深層の筋肉ですね。
多裂筋の奥には回旋筋という小さな筋肉があるくらいです。
※棘筋、半棘筋、回旋筋も含めて「多裂筋群」とまとめている書籍もありました。
多裂筋だけでなく、走行が短く、深層にあるインナーマッスルはどこの関節においても姿勢保持には超重要な役割がありますね。
起始停止
起始:仙骨後面、後仙腸靭帯、腰椎の乳様突起、全胸椎の横突起、C4〜C7の関節突起
停止:起始部に対して2〜4椎体上の椎骨の棘突起
作用:伸展、同側方向への側屈、対側方向への回旋
神経支配:脊髄神経後肢
胸椎の後弯が増強しているような姿勢の人には、胸多裂筋を特に強化する必要があります。
僧帽筋を鍛えようとする人がいますが表層の筋肉はパワーはあっても持久力は乏しいことが多いので姿勢保持には不向きです。
胸多裂筋のトレーニングの方法はいくつかありますが、重要なポイントは肩甲骨が内転してこないことです。
肩甲骨と脊柱の分離した身体操作ができなければ、思ったようなトレーニング効果は得られません。
頭部のポジショニングも同時に意識(下位頸椎の伸展、上位頸椎の屈曲)して行うことで姿勢改善に役立ちます。
大まかなポイントは以上になります。
ただ、動きのクセなど人によって違うので、文章で誰にでも適切な効果を出せるように表現するのは難しい部分はあるので、専門家に実際にトレーニングを見てもらうと良いと思います。
まだまだ、世の中ではトレーニングの「方法」がフォーカスされてしまいます。
「〇〇がやっているトレーニング」
「○○トレーニング」
「○○メソッド」
など
これらは人が注目しやすいので客引きしやすいという「提供する側」の発信であることが多いです。
本当に大事なのは「方法」ではなく「意識の向け方」です。
特別なトレーニング方法だけでは変わりません。
トレーニングする側の人が、「姿勢をよくするためにどんなトレーニングをすればいいか?」ではなく「姿勢を良くするためにどんな意識でトレーニングすればいいか?」という聞き方をできるようになる。
そのような世の中になったら、心身の不調で悩む人はもっと減るだろうな。
まだまだ時間はかかりそうですが、、、
今は地味なことや複雑なことよりも「わかりやすさ」が求められていますからね。
だからこそ、専門家によるしっかりとした指導がまだまだ必要です。
理想は専門家の指導がなくても、世の中に浸透しているくらいになれば不調で悩む人なんていなくなると思っています。
微力ではありますが、少しずつでも世の中を変えていけるように尽力いたします。
※タイトルは「多裂筋について」ですが、多裂筋の知識以上に大切だと思うことをまとめてしまいました。
多裂筋について調べていたつもりがラッキーと思えるような内容だと感じてもらえたら嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。
謙虚・感謝・敬意
知行合一・凡事徹底
岩瀬 勝覚
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