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ハイパフォーマンスに欠かせない骨盤力
人の身体は、約200個の骨、約400個の筋肉、約200個の関節で構成されています。
みなさんはこれらを自由自在に動かすことができますか?
スポーツで素晴らしいパフォーマンスを発揮するためには、その競技のスキルが重要なことはもちろんですが、
そのスキルを発揮するために自分自身の身体を思い通りにコントロールできることが必要になります。
思い通りに動かすとは、単純に筋力や柔軟性があるだけでは上手くいきません。
私はこの自在にコントロールする能力を「身体操作」と呼び、普段からさまざまな方に指導しています。
身体操作が上手くなることで、様々な分野でパフォーマンスアップが期待できます。
その中でもトップアスリートに共通している「骨盤力」はハイパフォーマンスに非常に重要です。
この骨盤力とは何なのか?
表現が難しい部分ですが私なりにまとめてみました。
力源となる骨盤の動き
野球でピッチャーがボールを投げる動作。
テニスでボールを打つ動作。
その他のスポーツ動作の多くに共通している動きがあります。
ボールを投げる動作がイメージしやすいと思いますので、その動作を例に説明します。
ボールを投げる時、腕だけ振って150kmの速球は投げられませんよね?
投げる方と反対の足を前に出し、骨盤が回る動きが起こって、その力を利用して腕が振られています。
右投げであれば左足を前に出して地面に設置した時に、左の骨盤が前、右の骨盤が後ろの状態でタメができます。
この状態から重心が前方の左足に移動するのに伴い、左の骨盤が後ろ、右の骨盤が前に移動する力が腕に伝わります。
この骨盤を回す動きを「骨盤力」と表現しています。
この骨盤力が力源となり、指先まで力を伝えることがハイパフォーマンスが発揮できる1つの重要な要素になります。
野球を例に挙げましたが、ランニングなど走行やサッカーなど足を使う競技でも骨盤力がカギになっています。
地面と設置している方の反力が骨盤を介して、対側の下肢の振り出しに影響しているからです。
骨盤力は仙腸関節の動きが重要
この骨盤力とは、具体的にどこが動く必要があるのでしょうか?
股関節の内旋、外旋可動域が必要なのは言うまでもありませんが、もう一つ重要な場所があります。
それが「仙腸関節」です。
仙腸関節は、仙骨と腸骨が形成する関節で、平面関節(半関節)で関節周囲が靭帯に囲まれていてほとんど可動性がありません。
文献にもよりますが、1〜2mmと言われています。
仙腸関節の動きには、ニューテーションとカウンターニューテーションという動きがあります。
ニューテーション
仙骨が前方に傾斜し、腸骨が後方に傾斜する動きのこと。
靭帯の張力が増加し、関節の安定性が向上します
カウンターニューテーション
仙骨が後方に傾斜し、腸骨が前方に傾斜する動きのこと
靭帯が緩むため関節は不安定になるので、筋性の支持に依存します。
(運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価論から引用)
どちらの動きも可動範囲は2°程度と言われていますが、ここが動くことが上述した「骨盤力」を発揮する条件になります。
また、投球動作などでは、左右の骨盤で逆の動きをしてパワーを生み出すこともあります。
逆の動きとは仙骨に対して左腸骨が前傾、右腸骨が後傾というよに捻れが生じます。
ここから左右の腸骨を入れ替える動きでパワーを発生させているのです。
しかし、仙腸関節が固まって可動性がない状態では、股関節の回旋による骨盤の回旋の力しか使えません。
回転軸がセンターより外側にあるので、力の伝達効率が低下してしまいます。
このようなことから「骨盤力」には仙腸関節の動きが非常に重要ということがご理解いただけたでしょうか。
仙腸関節周囲の解剖
仙腸関節は可動性が少ない上に、固まりやすいという特徴があります。
最後に仙腸関節の可動性に影響を与える組織について列挙して終わりたいと思います。
靭帯
前仙腸靭帯
関節包の前下方の肥厚した部分。梨状筋と腸骨筋によって補強されている。
骨間靭帯
仙腸関節の後縁と上縁の空間のほとんどで、太くて短い強靭な多数の繊維束。仙骨と腸骨を結ぶ最も重要な靭帯。
(長・短)後仙腸靭帯
短後仙腸靭帯は仙骨の後外側部に起死し、腸骨粗面と上後腸骨棘に付着する広くて薄い靭帯。繊維の多くは深層の骨間靭帯と一緒になる。
長後仙腸靭帯は第3、4仙骨部に起始し、上後腸骨棘に付着する。
後仙腸靭帯の線維束の大半は仙結節靭帯と一緒になる。
仙結節靭帯
上後腸骨棘、仙骨外側部、尾骨に起始して坐骨結節に付着する。大腿二頭筋の腱と一緒になる。
仙棘靭帯
仙骨および尾骨の尾端外側部に起始し、仙結節靭帯の深層を通って坐骨棘の遠位に付着する。
胸腰筋膜
3層構造。
前層と中層は腰方形筋を包む。内側は腰椎横突起、下方は腸骨稜に付着。
後層は脊柱起立筋と広背筋を覆う。全腰椎と仙骨の棘突起に付着し、一部は上後腸骨棘近傍に付着する。
このような広範な骨格への付着によって仙腸関節の力学的な安定に関与する。
筋肉
脊柱起立筋(腰腸肋筋・胸最長筋)
腰腸肋筋
起始 仙骨後面、腰背腱膜、腸骨稜、腰椎の棘突起
停止 第7〜10肋骨角、第11、12肋骨
胸最長筋
起始 腰腸肋筋と共同腱
停止 第3〜12肋骨(肋骨角と肋骨結節の間)
全腰椎の肋骨突起と副突起、全胸椎の横突起
作用 体幹の伸展、側屈、同側回旋、吸息の補助
神経支配 脊髄神経後枝の外側枝
腰部多裂筋
起始 仙骨、上後腸骨棘、全腰椎の乳様突起、副突起、椎間関節の関節包
停止 2〜4椎骨上の棘突起
作用 回旋、側屈、(両側)伸展
神経支配 脊髄神経後枝
腹直筋
起始 恥骨稜、恥骨結合、恥骨結節の下部
停止 第5、6、7肋軟骨前面と剣状突起
作用 体幹の屈曲
神経支配 肋間神経(T5ーT12)
内腹斜筋
起始 鼠径靭帯、腸骨稜、胸腰筋膜
停止 第10〜12肋骨、腹部腱膜
作用 同側回旋、側屈、屈曲
神経支配 肋間神経、腰神経
外腹斜筋
起始 第5〜12肋骨(外側)
停止 腸骨、鼠径靭帯、腹直筋鞘
作用 対側回旋、側屈、屈曲
神経支配 肋間神経
大腿二頭筋
起始 (長頭)坐骨結節、仙結節靭帯
(短頭)大腿骨粗線、外側筋間中隔
停止 腓骨頭、外側側副靭帯、脛骨外側顆
作用 股関節伸展、外旋
膝関節屈曲 下腿外旋
神経支配 坐骨神経
まだまだ繋がりでみていくとこれだけでは足りませんが、仙腸関節の動きが乏しい時はこの辺りの組織の状態をチェックしてみましょう。
お読みいただきありがとうございました。
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岩瀬 勝覚
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