なにもない
あるところに生きる意味も希望もなくなった若者が夜勤をしていました。
叶えたい夢があって 憧れの街で暮らしはじめたはずだったのに
お金ばかり気にする毎日に。
無知が故の借金 無謀すぎた借金 考えすぎの破綻 裏目裏目の日々。
毎日がびっくりするぐらい早くすぎて
いつ日がのぼって いつ日が沈んで 日付が変わったのかもわからないくらい働いて それでもカツカツなので なにも食べずに過ごす日もあったり…
休む暇はなく…いえ 休む暇を与えると 生きる意味を 頑張ってお金を稼いでいる意味を 考えてしまいそうなので 休むこともやめていました。
そんな日々なので ほぼ生きたシカバネ
なりたくないと思っていた目が死んだ大人に。
「いらっしゃいま…」
そんなとき 目の前に若者のどタイプな子が。
「今日はいつ終わりますか?」
「え?」
「もうすぐ終わりますか?」
「え…あの」
そのどタイプな子は 謎な質問を若者にするだけで 何かを買いに来たようではないようでした。挙動不審になりながらも頭を働かせる若者。
こんなに頭をフル回転させたのはいつぶりなのでしょうか。
「お店出たとこで待ってますね」
「え、いや、え」
若者の答えを待たずして微笑み去っていくどタイプな子。
その微笑みだけで 久しぶりに自分の心臓の音を認識した若者でした。
(誰だ、あんな子、あんなかわいい子、知り合いにいたか?僕が忘れてしまっただけで友達の友達とかか?いや、もっと数年ぶりに会う親戚とかか?おい、ちゃんと思い出せよ…あぁかわいかったな)
たぶん夢 そういえばゆっくり寝たのはいつだったかな。
そんなことを考えて現実逃避をしましたが 早番できた年上のアルバイトの人に
「おい、外に君を待ってるっていう子がいたけど、なんだ?恋人か?」
とニヤニヤと声をかけられ肝で突かれてあの子は実在したのだと
また動悸が早くなるのを感じる若者。
AM8:00
若者にとっての「かわいいあの子」は
本人が言っていたとおり 若者の働くアルバイト先のお店から出た
すぐのところに立っていました。
まだ誰か思い出せない若者。
本当に自分なのだろうか?誰かと間違えているんじゃないかと疑心暗鬼になりながらも かけよると「かわいいあの子」はまた微笑みます。
そればかりか「かわいいあの子」は若者の腕をつかみ
腕をからめ急接近。
「待ってたよ!」
その笑顔 至近距離でやられそうになりながらも 若者はある違和感に気づきました。
そのかわいい子は一体何者なのでしょうか。
「ごめんね、うまくなりきれなかった…でもこういうの好きでしょ?」
死んだように生きていた若者の日々は かわいい子の登場により
彩りをみせ…るのでしょうか?
「それできみは一体、僕のなんなの?」
「それは…」
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