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日の出前の憂鬱

数年ぶりのオールを終えて朝を迎える。
そうは言っても、年の瀬の朝5時の街は未だ暗い。
大学生以来だ。こんな風に時間を過ごしたのは。
ただ違うのは、何となく離れがたかったこと。寂しかったこと。

職場の同僚と久しく腹を割って話せても、
二次会の終わり頃に別の同僚が飲み会に駆けつけてくれても、
終電までのつもりの三次会が終電を無くすくらいに伸びても、
あんなに苦痛でしかなかった2時半の眠気を通り越しても、
まだまだ朝は遠いなと呟いていた4時前を通り越しても、
オールのためにカラオケに高額な料金を支払っても尚、
日が出るまでの束の間にどこかマックでも空いてないかな、なんてバカげたことを思いつつ、この苦行を続けたくなる。
きっと、この離れがたさは日が昇っても、
この会にいる誰かが仕事の為に離脱しても、
薄れることは無いのだろう。
嫌な感じだ。

ちょうどいい、まだ物足りないな、くらいで終える飲み会が一番楽しいことは分かっているのに、こんなことをしたくなるのは、歳のせいなんだろうか。
いや、でも、こないだ旧い友人と久しく飲んだ時、
幼い頃お世話になった恩師と久しく言葉を交わした時には、
そんな気持ちにはならなかったはずなんだけどな。

タッチの差で乗りたかったはずの電車を逃し、30分も地下鉄の駅のベンチで待つ。
そんな何とも言い難い気持ち悪い感覚を打ち消すように、
遠くで走る電車の走る音が響く誰もいない地下ホームで、目を閉じてうつらうつらする。
やっと来た電車に乗り、乗り換えのために降りた大型ターミナル駅で、冷たい空気に身を曝しながら、
いつも見る景色とは違う、ディスプレイの消えた真っ暗な交差点を渡る。
夜明けと言うにはまだ早い時間の地元駅のプラットホーム。
冷えきった風に身を当てていると、モヤモヤする頭もクリアになっていく気がする。
ふと、自分は学生の頃から、こんな悶々とした気持ちは、こうして冬の夜風に当たって整理してきたことを思い出した。

遠くの空を見ると、朝焼けのオレンジ色に輝く雲が見えた。
朝だ。こうして、また新しい1日が始まっていく。

Photo by jcomp (from Freepik)

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