読書メモ:中国S級B級論
著者である高口康太氏がマッハ新書で出版した「B級中国とS級中国の間で」を現代中国の識者4人を加えてガッツリ書き直したのが本書。
めまぐるしく変わる「中国の2018年〜2019年前半」を切り取った、中国の生活・政治・テクノロジーといった中国の今を切り出している。
本書の出版が2019年5月なのだが、仮に2017年にこの本を読んでも半分くらいがピンとこないだろうし、出版の翌月である2019年6月現在ですら米中の貿易摩擦の進展や、香港の逃犯条例改正による100万人のデモの発生などで中国の状況は刻々と変わっており、本書が古くなっているのを感じる。来年あたりにこの本をもう一度読んでみるのも時代の変化を感じられて面白いかもしれない。
おおよその日本人にとって2000年前後は中国はB級の国としての印象しかなかったけれど、2017年頃に日本でも中国のQRコード決済などが一般の生活に普及している状況が紹介されまくり、テクノロジーが生活に根付いた様子が知られるにつれ「中国って実はS級の世界でも先進的な場所なんじゃね?」という認識がされるようになってきた。
日本で生活していると昨今の中国については「隣の国が気づいたらすごい進化してた!」くらいの認識しか持てないのだけれど、そのギャップの狭間に何があったのかを、生活や政治やテクノロジーといった側面から解説している。この点がこの本の最大の価値だと個人的には思う。そして大半の日本人にとってよく分からないのもここだろう。
めまぐるしく変わる中国のことなので、本書の内容はすごい勢いで古くなっていくだろう。けど、その分だけ本書には中国の今が凝縮されており、今読むのがもっともオススメ。
本書の著者の5人は中国の生活の変化について書いたら、きっと世界でも有数の5人だろう。なので、本書のブラッシュアップが中国の五カ年計画とかにあわせて5年ごとに出てくるようになると面白いかもしれない。
5年ごとに出ませんかね?