【民法改正】法定利率引下げl交通事故の被害者・加害者は必聴!
はじめに
こんばんは。弁護士のマイクです。
今回は、2020年4月1日に施行された民法について解説していきます。
民法改正の中でも、市民生活に影響のある3つにテーマを絞った上で全3回にわたって解説していきます。
今回は、このうち法定利率の引き下げについて解説します。
この法定利率の引下げは、特に交通事故の損害賠償の金額に及ぼす影響が多きいので、交通事故の被害者や加害者は、是非最後までお読みください。
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法定利率の引下げ
(1)改正前の民法の復習
まず改正前の民法についておさらいをザっとしておきましょう。
これまでの民法では、法定利率は年5%と定めらていました。また、会社間の取引では商事法定利率6%と定められていました。そして、これらの法定利率は、変動もありませんでした。
そして、法定利率は、どのような場合に適用されるかというと、例えば、①や②のような場合です。
①は、交通事故の損害賠償の遅延損害金です。交通事故に遭った場合、被害者としては、加害者に対し、治療費や通院交通費、慰謝料の損害を請求することができますが、例えば、治療費については、その治療費だけでなく、その治療費について交通事故日から実際に支払われるまでの間年5%の割合による遅延損害金をも請求することができるわけです。
②について説明すると、交通事故で被害者が死亡した場合、被害者が平均寿命まで生きていたら得られたであろう収入を損害賠償として請求することができます。この平均寿命まで生きていたら本来得られたであろう利益のことを、逸失利益といいます。
本来であれば、この平均寿命まで生きていれば得られたであろう利益は、平均寿命まで数十年か・数年かけなければ得られなかった利益なわけです。
これが、一括で得られるとすれば、平均寿命までの年5%で計算した分の利息を控除しなければなりません。これが中間利息という意味です。
なぜ、この法定利率が改正されたのかというと、民法の年5%の利率が、一般の市場の利率よりも高かったからです。
次のグラフを見てください。
このグラフは、法務省が出しているグラフで、日銀が各銀行に対しお金を貸し付ける際につける利息の推移を表しています。2020年時点で、この利息は、0.3%なんです。
これと比較すると、いかに民法の法定利率の年5%が高いかわかりますよね。
なので、今回の民法改正によって、法定利率が引き下げられたんです。
(2)新民法の内容
では、改正後の法定利率について詳しく見ていきましょう。
次のスライドをみてください。
左が改正前の民法で、右のピンク色になっているところが改正後の民法の部分です。
これまで民法で年5%と定められていた法定利率は、2020年4月1日から年3%に引き下げられました。
そして、法定利率は年3%で今後も改正されるまで固定されるのかというと、そうではありません。この法定利率は、3年毎に見直されることになります。なので、次に法定利率が見直されるのは、2023年4月1日ということになりますね。
では、法定利率をどのように見直すのかというと、③で書いたような基準で見直しがされます。ちょっと複雑なので③については覚える必要はありません。
また、商法はどうなったのかというと、商法の法定利率6%は削除されました。削除されてどうなったのかというと、民法の法定利率に統一されることとなりました。なので、法定利率を考える際に、会社間の取引だからと言って民法の法定利率と違いはなくなりました。
この民法改正によってどのような影響があるのか気になりますよね。
そこで、冒頭の法定利率の説明で紹介した遅延損害金と逸失利益が改正によってどのようになるのか、解説しようと思います。
まず、①の遅延損害金ですが、これは単純で、法定利率が引き下げられれば、遅延損害金はその分下がります。
これまで損害額に対し年5%をかけて遅延損害金を算出していたものが、改正によって、損害金に年3%をかけて遅延損害金を算出することになるので、当然のことながら遅延損害金は減ることになります。
損害金が減るということは、被害者にとっては不利ですし、加害者にとっては嬉しい話です。
次に②の逸失利益についてみていきます。
②の逸失利益は、法定利率の引下げによって、増えることになります。なぜなら、これまでは、平均寿命まで本来年5%で計算した額を逸失利益から差し引かなければならないところ、法定利率の引下げによって、平均寿命まで年3%で計算した額だけを逸失利益から差し引くだけでいいからです。
なので、被害者がもらえる逸失利益の額は、法定利率の引下げによって、増えることになります。被害者にとっては有利ですし、加害者にとっては不利になりますね。
(3)いつから適用されるか
最後に、この法定利率の引下げは、いつから適用されるのかという話をします。
新民法は2020年4月1日から施行されましたが、交通事故に代表されるような不法行為については、その不法行為発生時の法定利率が適用されることになります。
例えば、2020年3月1日の事故であれば、これまで通り年5%で遅延損害金や逸失利益は計算されますし、他方で、2020年6月1日の事故であれば、年3%の法定利率で計算されることになります。
まあ、改正前後で不利益にならないように配慮されているわけです。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ここまで改正された民法のうち、法定利率の引下げについてみてきました。
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