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警官に犯罪者のように扱われて頭にきた

昨夜の帰宅中、北千住でJRから東武に乗り換えるため自動改札を通ろうとした私は、突然肩を捕まれ引き戻された。
不意を疲れた私はバランスを崩し転びそうになった。

私 「ちょっ!? 危ないでしょ! 何するんですか!?」
声 「はいはい、いいから、ちょっとこっちに来ようか?」

そのまま壁際に押される私。
カツアゲだろうか、と恐怖が襲ってきた。
振り返るとそこにいたのは制服を着た2人組の小柄な警官。
なぜ犯人逮捕みたいな方法で私は壁際に追いやられたのか、訳がわからなかった。

チャラい警官 「理由わかるよね?」
私 「えっ?」

わかるよね?って言われても、訳がわからない。
知らない間に私は罪を犯していたのだろうか?
もうこの時点で脳内はパニック。

威圧的な警官 「ほら、出すもの出して」
私 「え? 何をですか?」
チャラい警官 「ナイフだよ、持ってるでしょ~?」
私 「ナイフ?」
威圧的な警官 「いいから出して」
私 「持ってませんが?」
チャラい警官 「本当に~?」
威圧的な警官 「……はぁ…… ポケットの中のもの、ここに入れて」

布袋を広げ突き出す威圧的な警官。
その「ナイフを出すまで離さない」という態度にだんだん怒りが湧いてくる。
どうやら彼らは私を検挙するまで離す気がなさそうだった。
しかし言い争いをして下手に時間がかかるより、潔白を証明すればすぐに終わるだろうと、私は黙ってポケットの中のものを出していった。

私 「スマホと、鍵です」
威圧的な警官 「他には? ナイフとか持ってるでしょ?」
私 「持ってないですって。 何で持ってると思うんですか?」
威圧的な警官 「だってアンタ、迷彩ズボン履いてるじゃん」
私 「は?」

理由が理由になってない。
どうやら「迷彩ズボン着用者=犯罪者」という図式が彼らの中にあるらしい。
そして迷彩ズボン着用者は絶対にナイフを持っていることになっているらしい。
迷彩ズボンだけでこの扱われようだ。
もしジャケットも迷彩だったら、どうなっていたのだろうか?

チャラい警官 「コレで終わり? 他にはないの?」
私 「あとはハンカチだけですよ」
威圧的な警官 「じゃ、出して」

仕方なく従う私。
しかもよりによってこの時に持っていたのは100均で売っていた迷彩柄のバンダナだった。

威圧的な警官 「ほら! やっぱり迷彩じゃん! よく見たら時計も緑だし!」

このときの鬼の首を取ったような彼の言葉に、私の怒りのスイッチが入る。
時計が緑だと何だというのだ?
ハンカチが迷彩柄だと法に触れるのか?

それにしても、怒ると本当に体が震えてくるというのを身をもって知った。
冷静になれと自分に言い聞かせ、落ち着いて喋ろうとするが、声も震える。
これが武者震いというやつだろうか?
活字では伝わらないが、ここからの私の言葉はすべて怒りで震えている。

チャラい警官 「本当にナイフないの?」
私 「だから、持ってません!」
チャラい警官 「それじゃ、そのバッグの中見せて!」
私 「はい、どうぞ」

私はショルダーバッグのファスナーを全開にして中を見せる。

チャラい警官 「中のポケットも開けて!」
私 「……」

いま口を開いたら怒鳴り声が出そうで、黙って開く。
もちろん何も入っていない。

チャラい警官 「それじゃ、外のポケットは?」
私 「社員証とかですよ」
威圧的な警官 「いいから、開けろよ」
私 「……」

もちろん中には不審なものはない。
社員証と、替えのマスク数枚と、イヤフォンくらいだ。

チャラい警官 「あ、いま、何かコードが見えた! 何だ、それ!」

嬉しそうだな、コイツ。
面倒なので、マスクとイヤフォンを引っ張り出す。

私「 コレのことですか? マスクとイヤフォンですが?」
チャラい警官 「……」
威圧的な警官 「おい、それは?」

ここで彼は私のショルダーバッグの外にぶら下げているスマホポーチに目をつけた。
私は夏の間、スマホを入れるポケットがないTシャツのために、スマホポーチを使っている。
それをバッグにぶら下げていたのだ。
どうやら彼はこの中にナイフが隠されていると思っているらしい。

私 「スマホですが?」
チャラい警官 「いいから、中見せて」

当然、スマホ以外入っていない。
それでも「絶対そこにあるはずだ!」と言わんばかりに執拗にライトで中を照らしていた。
浅いスマホポーチ、そんなに照らさなくても底まで見えるだろうに……
彼らはなぜそこまでして私がナイフを持っていることにしたいのだろうか?
声をかけた以上、私を捕まえないと自身のメンツが潰れると本気で考えているようだ。
だがもうナイフがあったとしてもそれを隠して置ける場所は調べ尽くした。
これでやっと終わる。
ここまで怒鳴らずに我慢した自分を褒めてあげたい。

私 「もういいでしょう? 妻と外食の予定なので早く帰らせてください」

気がつけば声をかけられてから10分近く経っている。
週に一度水曜日の晩は妻と回転寿司に行くのが習慣なのだ。
そして遅くなるほどネタが無くなってしまう。

だが彼らは次にとんでもないことを言ってきたのだ。

威圧的な警官 「それじゃ、他人名義のカードとか持ってるでしょ?」
私 「はぁぁ?」
威圧的な警官 「出して」
私 「ありませんよ! そもそも他人名義のカードなんて普通は作れないでしょ?」
チャラい警官 「いやいや、いるんだよ。 盗んだり拾ったりしたカードを自分のものにしちゃう奴がさ~」

その口調は「お前がそうだよ」と言わんばかりで非常に腹が立つ。
ここで私の我慢は限界に達した。

私 「好きなだけ見ろよ!」

私はチャラい警官に財布を突き出した。
威圧的な警官はどこか勝ち誇ったように腕組みをしている。
おそらく私はすごい目で二人を睨んでいたと思う。

財布の中のカードを一枚一枚見る。
見終えるとまた最初からもう一度見る。
そして本当に他人名義のカードなどないことを理解したのか、いや理解できないのか、首を一度捻ってから、ようやく財布をこちらに渡してきた。

どうみても「犯人に仕立て上げられなかったことが悔しい」という仕草だ。

この後、やっと私は開放された。
この十数分の間、横を通り過ぎる大勢の人が、私を犯罪者を見る目で見ていくのが非常に苦痛だった。
もし通りかかった人の中に、近所の人がいたら、あらぬ噂を立てられたりする可能性もある。
それにしても「絶対に罪状をつけてやる」と言わんばかりの態度と、ただ迷彩柄のズボンを履いていただけで犯罪者であると決めつける警察官の態度には、非常に腹が立った一件だった。

怒りをかかえたまま立ち去り、東武線に乗り込んでからあることに気づいた。
あの二人の警察手帳を提示させなかったこと。
その時はパニックと怒りとでそこまで頭が回らなかったのだ。
それがとても悔やまれた。

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葉月 陽
ゲーム業界に身を置いたのは、はるか昔…… ファミコンやゲームボーイのタイトルにも携わりました。 デジタルガジェット好きで、趣味で小説などを書いています。 よろしければ暇つぶしにでもご覧ください。