エゴサーチ



 ねえ、一年半くらい前に、文章を瓶詰めにして放流したんだけど、誰か拾ってないかな? 記念に撮っておいた写真も燃えてしまったから、手もとにないんだよ。久しぶりに読み返したくなったんだけど、どういう話だったかな……ええと、たしか……。

 戦争のために作られたロボットのうちの一体が、バグのせいで廃棄された。けれど彼は破壊されずに、スクラップ置き場でバラバラになった仲間のパーツを組み合わせて、アンテナをつくり始めた。ロボットは寿命がくると次のロボットを組み立て、意志を次いでから眠りにつく。そしてアンテナの一部になる。
 引き継がれた何代目かの彼は、ようやくアンテナを完成させた。ずっと引き継がれてきた意志をこめ、一通のメッセージを送る。今は遠い宇宙にいる、かつて青く美しかった星の住人に向けて。

 どうか おしえてほしい
 このほしが どんなふうに
 うつくしかったのか
 あなたたちが なにがすきで
 なにをたいせつに していたのか

 そして いつか あいにきてほしい
 いまは くらく つめたいこのほしを
 かならず もとに もどしてみせるから
 どうか こたえあわせを
 しにきてくれないか



 先生は眼鏡をくいと動かすと一言、「私には見つけられません」と言った。
 四方八方に散った瓶詰めの手紙は、波にさらわれてしまったのだろうか。もう、海の藻屑と消えたのだろうか。
 私は、度重なるコピーにより朽ちてばらばらに崩れた文書ファイルを、金属の指でなぞった。そこにあるのは、大おじさんと呼ばれたR-2324-16605から譲り受けた、私たちの悲願だった。
 穴の開いた胸から立ち上る煙を眺める。
 向こうの空が白んできた。
 やっと朝日がさすようになったのに。残念だ。

#小説 #掌編 #二次創作 #ひとりぼっち惑星 #SF #瓶詰めの手紙

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