喪中葉書
一枚の葉書が届いた。喪中につき新年の御挨拶は……というお決まりの文句に続き、故人として私の名が書かれている。差出人は義理の弟だった。
おい、これは何の冗談だ。義弟宅を訪ねて玄関先で葉書を突きつけると、すました様子で、何って喪中ですからと言う。ふざけるな俺はこうして生きているだろうが。怒鳴っても、なぜ怒鳴られているのかわからないという様子。何て奴だ。
義弟の目の下には分厚い隈が溜まり、前回会ったときよりも白髪が増えているように思われた。疲れているのかもしれないが、それでもやっていいことと悪いことがあるだろう。
ところで前回とはいつのことだったか。先月か、先々月か。そう思って改めて見ると義弟は黒いスーツに身を包んでいた。いつからだ? まさか最初から?
お義兄さん。彼がくたびれた調子で言う。まだ生きているつもりでおいでですか。
彼のかけている眼鏡に私の姿は写っていない。自身の胸を見れば白い着物の合わせが左前になっている。折れ曲がるほど強く握っていた葉書は、義弟に宛てた封筒に替わっていた。私は黙って皺だらけの封筒を彼に手渡す。
四十九日ですよ、義弟が言う。そうだったか、私は声にならない返事を返す。