ロードマップのせつめい 1
独習の勧め
(現状)
ペラペラになるまで、『4,000時間』と聞いただけで、ゾッといたします。
本当だとしますと、教室の授業だけでは、いつまで経っても、日本語をマスター出来ないことになります。若者は、何かとやらねばならないことをたくさん抱えていますので、余裕がなく、もう、待ち時間等のスキマ時間の利用しか残っていないでしょう。
その他、教材の入手もし難いし、購入に結構お金が掛かるし、持ち運びも嵩張る。また、現状の学習方法では、発音に自信が持てない。聴き取りも難しい。等々、難問だらけです。しかし、それらを、一挙に解決してくれそうなのが、スマホの存在です。
(スマホ)
スマホは、この数年で、ものすごい進歩を遂げています。
翻訳APPの音声入力、翻訳能力、音声出力は、ほとんど成熟して、実用に何ら問題が有りません。今後も、さらに進歩を遂げるでしょう。教材も素晴らしいAPPが、アップロードされ、ネイティブの力を借りなくても、発声、聴き取りのトレーニングも可能です。持ち運び自由なので、携帯して、スキマ時間を効果的に利用できます。
もう、既に、独習の環境が整っているのです。そして、スマホは、すでに皆さんに行き渡っています。後は、この現状に気がついて、実行するだけです。
今後も、更に、優秀な教材や効果的な使い方の開発がなされることでしょうから、なおさら取り組みやすくなります。
独習のために
会話だけに限りますと、仮名も漢字も必要ありません。就学前の児童がそうです。ノマドのオンライン日本語教師の経験談で、『文字を覚える気はないが、会話を教えろ』と言う要求があり、ちゃんと出来たそうです。
残念ながら、『独習』の場合は、そうはまいらず、最低、「ひらがな」が必要でしょう。
リアル50音表(ご参照:展示場2)
いろいろな言語の50音表(ご参照:展示場2)。
なぜ、日本語が難しいのか?
これが分かりませんと、解決方法も見つけ出す事もできません。そこで、日本語の特徴と実際に起こっている現象とかを、考えてみます。
<音節>
日本語は、音節の少ない言語です。従って、それで、何が起こるかといいますと、同じ読みで、意味の異なる同訓異義語、言い換えますと多義語の多いことです。会話は、それを、いわば、仮名(≒発音記号)でやり取りしているということになります。日本人は、多義語が沢山含まれていても、幼い頃から、修行していますので、会話の流れ、文脈から正しい組み合わせを、瞬時に、選ぶ事ができますので、間違ったり、迷ったりは、あまりしません。
しかし、初学習者は、ボキャブラリーも少なく、慣れていませんので、組み合わせを間違い易いのです。そうしますと話の辻褄が合わなくなって、迷ってしまうことになってしまいます。
日本人は、漢字の訓読みを知っていますので、それをヒントに、頭の中で、検索し、瞬時に正しい選択をしているのかもしれません。それは、多義語にそれぞれ漢字を引き当てて知っているからでしょう。逆に言いますと、漢字の訓読みをしっかり覚えていますと、正しい選択のヒントになるのではないでしょうか。
そこで、『音読み』ですが、漢字一字の音読みを言われても、さすが日本人でも、『何?』と聞き返さずにはおられません。音読みが使われるのは、大体が、熟語です。そして熟語は、大体が音読みということになり、しかし、音で聞いただけでは、なんのことかさっぱり分かりません。
漢字の姿、形をイメージし、訓読みして、初めて意味を理解出来、改めて熟語の意味を認識しているのではないでしょうか。
何を言いたいかといいますと、実は、『音読み』より、『訓読み』の方に、ウエイトをおいて、漢字を理解したり覚えたりするべきではないでしょうかと言いたいのです。
熟語を書き下し文(読み下し文)風にしますと、熟語の意味を理解しやすくなります。恐らく、ローカルの日本語教師の方は、このような手法があるのをご存じないと推測します。ローカルの日本語専攻の大学生が、『訓読み』が難しいと感想を述べています。
<音域>
日本語は、狭い低音域の言語です。その中で音の高低でアクセントを付けて、少ない音節をカバーしようとしていますが、音域も異なり、アクセントの付け方も異なる言語の学習者は、聞き取りくいかもしれません。
<日本語脳>
日本語を母語とする日本人の脳は、母音を右脳で処理しているそうです。そして大部分の言語は、子音も母音も全て左脳で処理しているそうです。日本語は母音主体の言語のようで、そのせいかよく分かりませんが、いろいろな現象が起こっています。
彼らは、連母音の処理ができなかったり、長音の処理が、ネイティブのように出来ません。これらを簡単に改善する確かな方法も見つかっていませんので、難しい問題です。英語にも長音があるじゃないかとおっしゃる方がおいでになるかもしれませんが、あれは、強弱のアクセントの言語で、強のアクセントを付けますと、我々には、長音に聞こえてしまいます。
それと関係するのかどうか分かりませんが、開放音節語となって、単語の語尾は「ん」以外全て母音です。日本語化した英単語も開放音節の単語になっていますので、母語から来ているということが、すぐには、気が付かないようです。
関係あるかどうか分かりませんが、彼らには、虫の声は、単なる雑音に過ぎないそうです。蝉の声やカエルの飛び込む音を鑑賞できるまでには時間がかかりそうです。
<膠着語>
我々は、英文法に引きずられて、日本語も、語順が大切だと思ってしまいそうですが、そうではないのですね。日本語は、膠着語と言って、助詞のつく言語なのです。助詞が付きますと、語順から開放されてよいのです。更に進んで、我々は、助詞がなくても、ほぼ理解できます。主語が省略されても、取り違えることは有りません。すなわち単語の単音が、ネイティブが聞き取れ、然るべき範囲にありますと、単語をズラズラと並べるだけで、ほぼ理解できてしまうのです。
すなわち、彼らが、先ず、単音の発音を、あるレベルに持ち上げれば、ネイティブは、話の内容はほぼ理解できてしまうということです。更に、脳科学者は、文章の内、6割の単語がわかれば、その内容は9割わかると行っています。しかし、3割分かっても、内容は2割しかわからないそうです。
ボキャブラリーを増やし、単音の発音を整えますと最低のコミュニケーションが取れることになります。
学習者はこんなことを知りませんので、文法等に囚われがちですが、しゃっちょこばらずに、もっと安心して取り組んで欲しいと思います。
単音の発音改善の方法は、後ほど紹介致します。
<活用形>
私は、動詞・形容詞・形容動詞の活用は、国文法の教え方の方が、身につきやすいと考えます。海老原先生は、シンガポールでお教えになっていたとき、「なんでその方法を先に教えてくれなかったのか」と学習者の方からクレームが付いたとおっしゃっていました。丁寧型と普通型を、別の単語と誤解したりしている学習者もいたそうです。
私は、掛算の九九のように、強引に覚えさせる方が、身につき易く、間違いが起こりにくいと考えます。
<助詞>
助詞の誤用については、実例を示したり、研究はされていますが、ほとんどスッキリ分かる解決方法は示されていません。また、色々説明されても、理解語彙と使用語彙のように、すぐ口の出てくるようでないと困ります。
助詞の場合、動詞・形容詞のような定番の覚え方は有りませんが、それらを含んだ短文で覚えさせれば、理屈で考えるより、早く正確に使用できると考えます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?