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フェルミ推定のアプローチ法
昨年に就活を終えてから、Matcher(マッチャー)にて就活支援を軽く始めたのですが、「外コンの選考に向けてフェルミ推定の面接対策をしてほしい」との要望があったため、久しぶりにフェルミ推定をやってみることにしました。
現役時代はどのようにフェルミの問題を解いていたかを思い出しながら、実際の3つの問題に対してどのようにアプローチしていくかを書きたいと思います。
ちなみに私は現役時代、東大ケーススタディ研究会著の「地頭を鍛えるフェルミ推定ノート」を使ってフェルミ対策を行っていたので、今回はそこで学んだアプローチ法に準じて書きたいと思います。
お題①:日本にスーパーマーケットはいくつあるかを求めよ
定番問題です。スーパーは一定間隔で存在していることから、面積ベースの問題として解いていきます。ただ、人口密度によってスーパーの存在する間隔も変化することに注意して解きます。
前提確認
スーパーマーケットの定義:「食料品を主体に、日用雑貨、衣料品などの家庭用品をそろえ、大量、廉価、現金販売を原則とする小売店」
スーパーマーケットには、総合、食品、衣類、業務、問屋などのジャンルがありますが、ここでは一般的な食品スーパーマーケットを想定します。
アプローチの設定
スーパーは人口に比例して存在するとします。最終的には日本全体のスーパーの数を求めたいですが、各都道府県によって人口密度が異なります。そのため、日本のスーパーの存在間隔を一定と仮定して、日本のスーパーの数を一度に求めることは少し強引さが感じられます。ですから、ここでは東京都のスーパーの数を求め、1人あたりのスーパーの数を計算した後、日本の人口を掛けることで日本のスーパーの数を求めることにしましょう。すなわち、以下の式を解くことを考えます。
①東京都のスーパーの数÷②東京都の人口×③日本の総人口
(①÷②=東京都における1人あたりのスーパーの数)
①東京都のスーパーの数の算出
これは面積ベースで算出していきます。東京都のスーパーの数は以下の式で求めることができます。
①東京都のスーパーの数=④東京都の面積÷⑤東京都のスーパー1つあたりの面積
ここで、東京都は3/4が平地で、1/4が山地であることを考慮すると、以下が算出されます。
④東京都の面積=3200平方km×0.75=2400平方km
また、人間の徒歩の時速は4kmであることから、スーパーは徒歩10分以内に1店舗あると仮定した場合、半径0.67kmの円の中に1店舗存在することになります。したがって、以下の通りに算出されます。
⑤東京都のスーパー1つあたりの面積=0.67km×0.67km×3.14=約1.4平方km
以上の④と⑤から算出された数値より、東京都のスーパーの数は以下のように算出されます。
①東京都のスーパーの数=2400平方km÷1.4平方km=約1700店舗
②東京都の人口の算出
東京都の人口は夜間人口である1200万人とします。
③日本の総人口の算出
日本の総人口は1億2000万人とします。
以上の①~③から、日本のスーパーの数を計算すると以下になります。
約1700÷1200万人×12000万人=約17000店舗
現実性の検証
統計・データでみるスーパーマーケットによると、東京都のスーパーマーケットの数は2939店舗、日本全国のスーパーマーケットの数は22762店舗でした。今回のフェルミ推定で算出した店舗数はそれぞれ、1700店舗と17000店舗だったので、少なめに算出された結果となりましたが、悪くない数であると言えます。また、初めに仮定したスーパーの数は人口に比例して存在するという仮定もある程度当たっていると言えます。
お題②:コロナ前のディズニーランドの年間売上を求めよ
こちらも定番問題です。ただし、入場時間や年齢層によって購入するパスポートの料金が変わってくるため注意しましょう。
前提確認
求める年間売上は、日本国内にある東京ディズニーランドとし、ディズニーシーは考慮しません。また、年間パスポートについては考慮せず、全員が使い切りのパスポートで入場すると考えます。
アプローチの設定
東京ディズニーランドの年間売上は以下の式で求めることができます。
東京ディズニーランドの年間売上=①1日あたりの来場客数×②客単価×③営業日数
①1日あたりの来場客数の算出
入場者数は、平日と土日で大きく異なります。ですが、ここでは平日と土日を区別しないで考えます。1日あたりの来場客数は、以下の式で求めることができます。
①1日あたりの来場客数=④ターゲット人口×⑤平均来場回数÷365日
④ターゲット人口は、東京ディズニーランドに行く見込みのある客数とします。なぜ、日本の総人口ではなく、ターゲット人口に絞ったかというと、高齢者や幼児は客になる確率は極めて低いためです。また、海外からの観光客は今回無視して考えており、ターゲット人口には含めません。
日本の人口ピラミッドはつぼ形をしており、以下の割合になっています。
0~20歳:20~40歳:40~60歳:60~80歳=2:3:3:2
今回、東京ディズニーランドのターゲットを10歳~50歳とし、上記の同一区分内においては、年齢が異なっても同じ割合存在するとするならば、④ターゲット人口は以下の数になります。
④ターゲット人口=1億2000万人×(0.1+0.3+0.15)=6600万人
また、次に⑤平均来場回数を求めます。これは、居住地によって変わってくるため、1都3県(神奈川、埼玉、千葉)とそれ以外で考えます。
1都3県には、約3600万人、その他の都道府県には、8400万人いることから、人口比率は以下になります。
1都3県の人口:その他の都道府県の人口=3:7
1都3県に住む人は東京ディズニーランドに近いことから平均来場回数を0.5回(2年に1度)、その他の都道府県に住む人は遠いことから平均来場回数を0.2回(5年に1度)とします。これらの仮定をもとに、平均来場回数を計算すると以下になります。
⑤平均来場回数=0.5×0.3+0.2×0.7=0.29回
①1日あたりの来場客数=6600万人×0.29回÷365日=約5.2万人
②客単価の算出
東京ディズニーランドのパスポート代は、入場時間と年齢によって決められています。そのため本来であれば客単価を考える際、これらの客の属性を考慮する必要がありますが、ここでは簡単のために一律のパスポート代で考えると、客単価は以下の式で求めることができます。
②客単価=パスポート代+食事代+軽飲食代+お土産代
パスポート代(1dayパスポート)を8000円、食事代(昼食代+夕食代)を4000円、系飲食代(ドリンク、チキン、チュロス等)を2000円、お土産代を4000円とすると、客単価は以下のように算出されます。
②客単価=8000+4000+2000+4000=18000円
③営業日数の算出
東京ディズニーランドの営業日数は、簡単のために365日とします。
以上の①~③から、東京ディズニーランドの年間売上を計算すると以下になります。
東京ディズニーランドの年間売上=5.2万人×18000円×365日=約3400億円
現実性の検証
2018年(コロナ前)における東京ディズニーランドの平均来場者数は89000人になっています。この人数は、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合算なので、今回推測したように東京ディズニーランドの平均来場者が約52000人であるのは、なかなか良い予測なのではないでしょうか。一方で、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合算の年間売上が約3400億円であることから、予想を大きく下回る結果になってしまいました。平均来場者人数は近い予測ができていたため、客単価を大きく評価してしまったことが原因です。仮に、客単価が1.2万円だと東京ディズニーランドの年間売上が約2200億円になるので、このくらいが妥当な単価ではないでしょうか。
お題③:2030年の日本で走っている、自動運転タクシーの台数を求めよ
応用問題です。そしてこの問題は、実際に私がBig4の選考であったフェルミ面接で出された問題です。現在のタクシーの台数を求めればいいわけではなく、未来の台数の予測をしないといけない点が肝です。
前提確認
自動運転タクシーの定義:「自動運転レベルは0~5の6段階に分かれていますが、ここでの自動運転タクシーの定義としては、地域限定で無人自動運転が可能な自動運転レベル4に達しているタクシーとします。」
アプローチの設定
このお題は、未来の数を予測する問題なので、直接フェルミ推定で台数を予測することは困難だと思われます。一方で、現在のタクシー台数を予測することは、今まで学んできた一般的なフェルミ推定のアプローチで可能です。そのため、このお題に対しては、現在のタクシーの台数を求めた上で、そのうちの一定割合が自動運転に切り替わっているという考え方で求めることにしましょう。そうすれば、自動運転タクシーの台数は以下の式で求めることができます。
自動運転タクシーの台数=①タクシーの台数×②自動運転の割合
①タクシーの台数の算出
タクシーの台数を求めるのは、ストック問題と考えることができるため、1日あたりの需要と供給から予測することにしましょう。すなわち、現在のタクシーの台数は以下の式で求めることができます。
①現在のタクシー台数=③1日あたりのタクシー需要÷④1日あたりのタクシー供給
1日あたりのタクシー需要は以下の式で求めることができます。
③1日あたりのタクシー需要=日本の人口×タクシーの利用率×平均利用回数
日本の人口は1億2000万人、タクシー利用率を1/30(1ヶ月に1回)、平均利用回数を1とすると、1日あたりのタクシー需要は400万人分になります。
また、1日あたりのタクシー供給は以下の式で求めることができます。
④1日あたりのタクシー供給=回転率×稼働率×稼働時間×平均乗車人数
回転率を2.0(1時間に2回転)、稼働率を0.5(半分の時間は待機時間)、稼働時間を12時間、平均乗車人数を1.5人とすると、1日あたりのタクシー供給は1.5人/台となります。
これらより、現在のタクシーの台数を求めると以下になります。
①現在のタクシー台数=400万人÷18人/台=約20万台
②自動運転の割合の算出
自動運転タクシーの割合は、未来の話なので予測が難しいです。なので、全くの根拠の無い数字になりますが、ここでは自動運転の割合を0.20とします。
以上の①、②から、2030年の日本で走っている、自動運転タクシーの台数を計算すると以下になります。
2030年の日本で走っている、自動運転タクシーの台数=約20万台×0.2=約4万台
現実性の検証
平成25年においては、日本におけるタクシー台数は約24万台だったみたいです。令和4年の今年でも、大きくはタクシー台数は変化していないと思われるので、現在のタクシー台数を約20万台と予測できたことは上出来だと思われます。また、そのうちの何%が自動運転に切り替わるのかを予測することは困難ですし、実際のデータもないのでここでは検証することができませんが、個人的には上で挙げたような2割くらいのタクシーが自動運転に切り替わっていたら嬉しいなと思っています。
実際に面接で聞かれた質問
なんだかんだ、フェルミ推定の面接をしてから3ヶ月は経っているので、ほとんど聞かれた質問は覚えていないのですが、覚えている範囲内でまとめたいと思います。
①説明した中で、内容を変えるとしたらどこを変える?
②因数分解をもっと細かく分解すると、どのように分解できる?
③タクシーの回転率・稼働率って何?
④計算した数値を見て、妥当な数字だと思う?
最後に
今回、たまたま機会がありフェルミ推定の記事を書きましたが、もともと私はフェルミ推定が好きでも、得意でも、熱心に勉強したわけではないので、今回ご紹介したアプローチ方法も荒削りの部分が多いと思います。その点は多めに見ていただけると幸いです。私はコンサルタントになるわけではないので、実際にフェルミ推定を業務で使う機会は少ないと思いますが、フェルミ推定を学ぶことを通じて、要素を細かく分解するスキルと、場合分けのスキルを高めることができたと思います。これらのスキルは抽象→具体の変換に大いに役立ちますし、どんな仕事をするにもこの具体化スキルはあっても損しないものだと思うので、フェルミ推定を勉強してよかったなと思っています。