MASUというブランド
ひさびさにnoteに文を書きたくなった。最近夜中の3時とか4時とかに目が覚める。とほうもなく不安で寂しい夢を見て、目が覚めたとき娘と息子が両脇にいても、宇宙に放り出されたような気分になる。それはきっと、向こうにある死だ。
今日、いや昨日、MASUというファッションブランドの帽子を買った。青いベースボールキャップで、前面にシンデレラの被るティアラが青、赤、白のようなカラフルな原色でスプレーペインティングしてある。値段は20000円くらいだ。
買った場所はアディション・アデライデという原宿の店で、表参道ヒルズのちょうど裏手にある。MASUのポップアップストアイベントをやるというので、初めていってみた。20時が閉店で、職場が品川なので、18時には早めに仕事を切り上げ、突然の私用を思い出しすみません、ということで急いで買いにいった。
原宿はオシャレな街だ。と、40にもなる自分がいうと意味が色々ある。18の大学受験で神戸から上京したが、色々理由はあるうちの一つが、原宿に行って裏原ブランドを買いたかったからだ。その頃はA Bathing Apeを中心に、ストリートウェアが日本のファッションを席巻していく時代の真っ只中で、神戸のランチキというセレクトショップに通うことでファッションに目覚めた自分は、そこにたまに入荷されるナンバーナインの、river poolと胸にポンと描かれた黒のTシャツをはじめて買うことをきっかけに、裏原に触れた。上京して店舗にいったら、恵比寿のはずれだったが。
あの頃の原宿に初めて行った日を覚えている。竹下通りの目の前に出る、めちゃくちゃ小さな原宿駅の出口があって、ごちゃごちゃしてるけど全然裏原みたいなオシャレさがなくて、アイドルの写真とかクレープとか売ってる店のほうが目立っていた。今もそんなものかもしれない。そこからどんどん降りていくと明治通りにぶつかるが、さらに下ると裏原ブランドの店がいくつもあった。きっとそうなんじゃないかと思う、というのは、当時インターネットもなかったものだから店の位置が実はぜんぜん分からなくて、雑誌には地図が付いてたこともあったが街で開くのも恥ずかしいのと、原宿にいるんだという緊張から、結局はなんとなくこの辺という記憶と足を手がかりにグルグルと迷路のような道を練り歩いて店を探したからだ。
そのあたりでは結局服はほとんど買わなかった。店はどれもお上りさんには入り辛かったし、選択肢が洪水のようにやってきて、ちっぽけな自分は溺れてしまった。神戸のランチキの狭い店内が恋しかった。ようやく同じような匂いのするナイチチというユニークなセレクトをするこじんまりとしたショップにたどり着いたものも、その内上京してきたランチキの原宿店に逃げこむようになって、そこでメインで取り扱いしていた、今やneedlesのほうが有名なネペンテスの本店に浮気しはじめて通うようになる、というのが私のリアルなところの原宿だった。余談だが、今ネペンテスの店舗はランチキの原宿店のすぐそばにあり、ナイチチの店員さんだったssteinというデザイナーさんがやってるキャロルというショップや、この話の中心なんだがいっこうに話せていないMASUや、その次に大好きなHATRAを同列で売るハウスミキリハッシンというショップがあの辺に集まっていて、あそこに当時好きだった原宿が残っている感じがする。
アディションアデライデの話に戻すが、ディスプレイが簡素な店で、とてもかっこよかった。MASUのポップアップ以外見る余裕がなかったが、パッとみでfeticoやLuudanなどほかの個性的で国内外問わず注目株のブランドの服が目に入ってきて、その存在感だけで店の装飾になっていた。もう少し原宿の外れになるが、ザ・エレファントという店とも似た簡素感だなと思った。どう意図してるかはともかくとして、服だけがあってそれでやっていくんだという感じが本質的で好感がもてる。
さて、MASUの話をしないとなんだが、今日買ったキャップ以外にすでにこの春夏のコレクションは数点買っているし、年始に横浜で行われたイベントにも行って、いわゆるサンプルセールといって昔の在庫を安く売るイベントだった訳だけど、あまりにも点数を買いすぎたところをファッションメディアのWWDに取材され、それが実際に記事になったりもした。ご察しのとおりお金も相当使っている。40の子持ちの男性が。
MASUの素晴らしいところは、何なんだろうか。それがこの文章の趣旨だし、最初から書けば良いのだが、はいこれですと言いにくい。ブランドのデザイナーの後藤さんのインタビューも全て目に通していて、さんざん語ってくれている。今日もファッションスナップでかなりあけすけに語ってくれていた。その服のテーマを淀みなく言えないとデザイナーじゃない。着る人のことを思いやってクオリティを高くする。気持ちを乗せることになんなら全振りしてる。など、全てそうだな、と思うところだけど、着てる側としてはそれ以上の何かがもっとあるんだと感じている。
じゃあそれは何なんだろうなと思った時に、これまでの服のこと、原宿のこと、それ以外にも書いてない、例えば初めて恵比寿のマルタン・マルジェラに行ってみたときのこととか、色々思い出して、それの全てがMASUにちゃんとあることや、昔から捨てずにクローゼットに残ってるそれら全ての過去に対して、いかにMASUが手を差し伸べるように、優しく、調和して違う未来の世界に連れていくかということ、その見捨てなさが今の自分にどれだけ安心を与えているか、指針になっているか。ということを書いて、伝えたかった。
服を買うとどこか後ろめたさが付きまとうのだけど、MASUの服には不思議となくて、まあこれを選択して今が良くても悪くても、きっと大丈夫だろうと思える。それがきっとfutureってことだ。