ビルの窓辺のそのまた向こう ー「黄金町秋のバザール Koganecho International Artist’s Network 2023 誰も知らないアーティスト」
8日、曇りときどき雨。バスで黄金町まで行き、バス停のそばから黄金町まであるく。黄金町駅から日の出駅の周辺には空き家をリノベーションした場があった。場のそばには大岡川が流れており、あとで、終戦後に不法の水上ホテルが運営されていたとしる。そして次第に青線地帯とよばれ、市は「横浜開港150周年」に向けて2005年に「バイバイ作戦」と呼ばれる警察の集中摘発をこの地帯に行ったという。その場に展示が開催されていた。
「黄金町バザール」とよばれ、2007年から組織された実行委員会によって運営されている。私はまず高架下スタジオSite – Aギャラリーでチケットを購入し、その会場からめぐることにした。この会場では台湾出身のウ・ジャンジュンの作品《置換》が目に入った。手書きの譜面が描かれた紙が壁面を埋めており、それらが黄金町で感じた不安定さを曲にまとめた作品となっている。譜面が貼られた壁面にモニターが設置され、演奏も聴いたりみたりできる。もし、私たちが別の国に訪れたときに感じる不協和音について想いを巡らせる体験となっていた。はたしてそれは、不協和音なのだろうか。
私はその後、竹内化成ビルに移動した。会場に到着するなり、まったく知らない文具会社?が入居するビルであると気づかされる。エレベーターを使ってあがり、会場に着くとひらけたフロアになっていた。そこに事務机が配置され、受付の人が案内をしている。会場には受付とは別にぽつりと事務机が配置され、モニターにはこのフロアでスタッフが寝ていた記録動画が流れている。中国出身のアーティスト、ユ・ジミンによる作品、《眠る身体-竹内化成ビル》である。キャプションに記載された「穏やかで純粋な状態の身体」というのが寝るという行為の描写になっていた。ふと、日常のなかで当たり前のように行われている行為がそうでもないのではないのかと疑ってみてしまい、眠れない身体について考える。
下のフロアへ。つくとすぐに人の声が聞こえてくる。どうやら箱から声がなっており、耳を近づけると「ばくぜんとしたアメリカ映画」「アメリカすげぇみたいな」という男の声だった。会場をみわたすとメモ書きのようなものが散見され、それらをよんでみると台湾出身の映画監督、エドワード・ヤンについての記述となっていた。鈴木史のインスタレーション、《Scattered story, scattered love》と箱作品、《都会の女》であった。まったく作品とは関係のない先週みた「エドワード・ヤンの恋愛映画」に登場したオフィスとこのフロアがごっちゃになってしまう。すぐ近くに会長室と応接室があるからだろうか。
そこから八番館にうつり、おなじ作家のべつ作品、《女らしくみえるゴミ》をみた。作者の鈴木がならべられたゴミをひとつずつ手に取り、おとずれた人にこれはどれが女らしいゴミなのかたずねている。となりの部屋にはそのゴミらしいものが散乱しており、私たちの中にも無意識に刷り込まれた性別二元論について考えてしまった。
館のうらてにある一軒家にまわるとそこにも会場があり、宮地祥平の写真作品が壁一面に点在している。男っぽい体格の身体と身体がぶつかりあっているようにも見える写真からは、改めてこの場について考えてしまう。それと共に、私たち自身が無意識に刷り込まれている当たり前の価値基準についていま一度、ふりかえるタイミングが来ていると気づかされた。
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