世界に出て、業界のグローバルスタンダードを目指す
日本のベンチャーで、本気でグローバルスタンダードを目指す会社がどれほどあるだろう。「スタンダードだなんてそんなことは夢を見すぎている」とあなたは言うだろうか。
僕らがグローバルに本腰を入れて取り組み始めたのは2015年だった。
顧客がExpedia、Booking.comなど様々な販路を通じて言語や通貨の壁を越えて予約ができる世界はもう既に始まっていた。一見便利な海外OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)が、国内旅行会社よりも更に高額な手数料として、宿泊料金の20-25%もの手数料をホテルから取得している。更にはBtoBで勝手に流通させられてしまい販売先のコントロールが効かなくなっている。海外ホテルと会話すると日本のホテルよりも課題意識は更に強く、予約が増えることが両腕で喜べる状況ではない。みんなが解決策を求めていた。それまで、ホテルへ国内ダイナミックパッケージの予約ソリューションをSaaS型で提供している私たちは、世界中のホテルの課題解決に踏み出すことを決断した。
ミッションは、世界中のホテルが旅行会社に頼ることなくホテル公式サイト内で世界中の航空券とホテルを組み合わせたダイナミックパッケージの提供を通じて、ホテル公式サイトの魅力化、コスト削減、顧客ロイヤリティ向上を図ることだ。
そのためには、「世界中のホテルがシステム連携を通じて使いやすく、世界中の航空券との組み合わせを可能とし、世界中の顧客が多言語多通貨予約できるソリューション」を生み出さなければならない。
1.世界中の航空券を効率的に発券できる仕組みを作る
国内航空券の流通の複雑さをたくさん経験したことと比較すると、海外航空券の流通は比較的わかりやすい。各航空会社は概ねGDS(グローバルディストリビューションシステム)というシステムを通じて世界中のサプライヤーに情報を提供しているのでそのいずれかと連携することがスタート。
我々は何か新しいビジネス企画設計する時に必ずシステムとオペレーションを並行で考える。そしてオペレーションは極力、人が関わらなない形を理想とする。今回は「全世界」=「24時間」となるため、これまで以上に重視するのはシステム先行、オペレーション軽減だ。
多くの旅行業界では未だにたくさんの人がオペレーションに関わっていて、こと海外航空券については90年代のUIUXの業界独自のシステムへ、業界独自のコマンドを打たなければならない。私もGDSのコマンドを習う研修に一度参加したが、まるで大学時代のUNIXの授業に出ているようで、覚える量とマニアックさに驚愕、、。これだけのコマンドを覚えなければならないということは専用の端末を契約し、それを操作できる人を採用しなければならなくなってしまうし、それを24時間対応することも難しい。業界の当たり前は、我々の当たり前ではない。我々はすべてAPIで処理し、自動的に航空券の発券ができるシステムとオペレーションに向かっていった。蛇足だが、他業界や他システムでは特にAPIでの全自動化は珍しいことはないが、この海外航空券の領域としては珍しいことのようで、GDS担当者に「え!APIでできることはあるけど端末を一切使わないんですか!?」と驚かれたのを覚えてる。
次は、航空券発券するためのビジネス面だ。グローバルスタンダードとなるには、提供できる航空会社の数と価格で、エクスペディア等世界大手と同等以上をならない。
航空券の世界にも様々にルールがある。自社で発券するにはIATAライセンスが必要となり利益率もあがるが、この領域は第三者へ委託することとした。サービスの立ち上げはとにかくスピードを重視している。やるべきことはとにかくたくさんあり個別条件よりも実現させることに最大限フォーカスすることが大切だ。
日本発の海外旅行を販売できる会社は、たくさんあり新しさはないが、最初から思想を「全世界の顧客へサービスを提供すること」においていたことがビジネス、システム、オペレーションの設計を変えている。この後も着々と、LCC(ローコストキャリア)のコンテンツや、海外発の航空券を提供するために海外パートナーとの接続を進めてられていく。
よし、航空券側はまずは見えてきた。
2.ホテルと世界最大手予約システムの攻略
国内市場での経験からわかっていたことは、ホテルにサービスを利用してもらうためには、そのホテルが利用する世界の代表的な予約システムと接続する必要がある。しかし予約システムは、見込みホテルの質か量かその両方がないと動かない。 プラットフォーム事業は、卵=ホテルと、鶏=予約システムがいてそのいずれも並行して育てなければならない。
まずは卵は卵でも、誰もが知る、憧れるホテルにご利用いただきたいと考えた。
日本では今は3000を越える多くのホテルに利用いただけているが、その道のりは長く険しいもので一つ一つ事例を積み重ねて展開をしていった。海外では同じ時間とリソースはかけられない。いきなりブランドのある先と会話するためには、①信頼のある人を通じて紹介を得ること、そしてその場で②これまでの日本での実績とクオリティへの理解を得ること、だ。
紹介ルートは既存契約先、株主、業界セミナー参加など想像できるものは色々試みた。中でもご縁だなと思ったのは、友人やお世話になっている方々の思いもよらぬ人間関係を通じて、すごいつながりになったりしてしまうから本当に世の中は面白い。
シンガポールを代表するホテル、マリーナベイサンズは当社グローバルダイナミックパッケージプラットフォームのユーザーだが、その最初のきっかけは、私が20年以上通う美容室だ。海外ホテルとの接点を模索している話を何気なくする中で、偶然にもマリーナベイサンズの日本でのイベントの際にヘアメイクを担当した話を聞き、ご紹介を頼んだところ、その方がCMOだったのだ。オンラインMTGから始まり、その可能性をつないでシンガポールへ何度も通い、通常新規契約にかかると言われた期間の半分くらいで契約に至ることができた。人のつながりに本当に感謝感激雨嵐だ。口にしていると本当になってしまうってこういうことなのかもしれない。
3.乗り越えるべき壁はもう1つ
ホテルの利用する予約システムと連携しなければサービス提供したくてもできない。そしてそれは世界最大手予約システムだ。ホテルから要望をあげてもらうことが効果的であることはわかっていて、順調に予約システムの接続プロジェクトの責任者へつながった。
APACエリアの本部がシンガポールだったのは幸いで、ホテルとのMTGに合わせてプレゼンに行けたが、最初は難航した。「すごくいいアイデアだと思うけど、接続プロジェクトはたくさんあって、利用希望ホテル数か戦略的な位置付けがない限り長い接続待ちの列に並んでもらわないといけない」。明確にNOと言わないが、待ち時間は長過ぎた。ホテルからも要望をあげてもらったり、可能な限り利用希望ホテル数について資料を作るも、あまり響かなかった。
そんな中、日本の会社で接続をしているところがあることがわかり、そこを経由して接続する方法を詰める。これに望みをかけて再度アプローチすると、接続プロジェクト責任者とその方法を共有すると思いもよらない回答がきた。
「その方法での接続はあなたたちのグローバルな構想には合わないから認められない。でもわかった。それではない方法になるが接続プロジェクトを進めましょう。」と。
一瞬この回答の意味がわからなかったが、真意を理解した時は飛び上がった。何度となくシンガポールでプレゼンする中で熱意も買ってくれたのか、我々のビジネスを理解してくれた上での接続方法の提案に感動した。とにかくどんなことも道がなくなっても諦めずに新しい道を模索して熱意を持って何度もチャレンジすることが大切なのだ。
Sabre社とのプレスリリースを出したのは2017年だった。
https://www.sabre.com/locations/apac/releases/time-designs-dynamic-package-booking-engine-connects-with-sabres-synxis-central-reservation-system/
最近はコロナの影響でシンガポールにいけていないが、いつも日本から彼女が好きそうなお土産を探してMTGに行くのを楽しみにしている。
こうして、素晴らしい人たちのつながりに恵まれてハワイのハレクラニやカハラ、バリ島のアヤナリゾートや星のやバリ、シンガポールのマリーナベイサンズ、マカオのベネチアン、等、すべてはここに書き出せないが様々な国や地域で最も有名なホテルたちが我々のサービスに強い共感を示し、彼らの公式ウェブサイトを通じて世界中の顧客へダイナミックパッケージを提供している。現在の当社グローバルダイナミックパッケージプラットフォームの利用施設は400ホテル。ユーザーとは共感を大切にしており必ずしも量ではなく関係性の強さが大切だと思っている。
僕らと同じソリューションを提供する企業は未だなく、チャレンジャーとして世界中のホテル業界の課題を解決することにワクワクしている。今年は新たな大手予約システムとの協業についてもアナウンスを予定しており、グローバルスタンダードを目指すの道を歩んでいきたい。
世界中の顧客が多言語多通貨予約できるようにするためのシンガポール子会社設立と旅行業免許取得や、多通貨決済・多通貨精算システムの構築についてはまた別の機会に書きたいと思う。
読んでいただき、ありがとうございます!
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