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〜幼少期〜

父親が30歳で母親が36歳の時、
北海道のど真ん中の街で長男として生を受けた。
現代に於いては珍しくもない数字だが、
当時にしてはだいぶ"晩婚"だっただろう。
父方の祖父母からは"初孫(ういまご)"として、
だいぶ可愛がられた。
街の中心部にマンションも買って、車もクラウンのステーションワゴンときた。

子供服は某百貨店の外商付き。
外商付きとは、年間ウン十万・ウン百万単位で使ってくれる"上客"に担当者が付き、
お気に入りのブランドの新作が出ると、
わざわざ百貨店まで行かなくとも、
外商の担当者が"新作"を携えて
自宅の玄関まで来て、玄関に服を並べて"接待"してくれる。
そして、現金でその殆どを買いまくる。

後に3つ歳下に妹が生まれ、その暮らしぶりは変わらない。
側から見れば、完全に甘やかされた【お坊ちゃん】だ。
オモチャもだいぶ持っていた方だと思う。

しかし、妹が誕生して一年経った頃だろうか。
自分に物心つき始めた頃だ。
状況は一変する。
生活水準は変わらないが、両親の様子がおかしくなっていった。
当時は知る由もない、4歳にも満たない子供。
後に高校生くらいになって知ったが、
母親が"流産"したらしい。
妹が生まれてから、すぐにまた妊娠した様だが
高齢だったからなのか、原因は今でも知らない。

ある日の夜、リビングで飛び交う怒鳴り声で目を覚ました。
何が起きているのか分からない。
ただ、豆電球だけの灯りの寝室に敷かれた布団に両親は居らず、寝ぼけ眼をこすりながら、隣を見るとまだ赤ちゃんの妹がスヤスヤ寝ている。
暗いし、近くで怒鳴り声は聞こえるし、ただひたすら怖かった。

すると、ドタドタとけたたましく走る足音が近付いて来たと思った途端、我々子供達が寝て居る寝室のドアが乱暴に開けられた。
ただでさえ、恐怖心に怯えている自分の目に飛び込んで来たのは、
包丁を握りしめた鬼の様な形相をした母親。

全てが一瞬のうちの出来事だった。
いきなり髪を引っ掴んで布団から引き摺り出された。
子供ながらに瞬時に理解した。
いや、悟った。
【ママに殺される。】と。
生死の概念すら分かるはずのない子供が、その時理解した。
そして、引き摺り出される時に
隣で寝ていた妹の頭を足で押し付けて布団に押し込んだ。
兄として妹だけでも助けようとしたのだろう。
もはや本能的な行動だった。

ただ、やはり子供である。
全てを冷静に判断していた訳ではない。
断末魔の様に泣き叫びながらの事だった。
すると瞬間、髪を引っ掴んでいた手が離され、母親が吹っ飛んで行った。
父親が殴り飛ばしたのだ。

良く包丁が刺さらなかったものだ。
その後母親は風呂場に包丁を持って立て籠り、気が触れた様に風呂場で奇声を上げて泣き叫んでいる。
異様な光景と一瞬のうちに経験した恐怖で自分も泣き叫ぶ。
赤ちゃんの妹も泣いている。
もはや、阿鼻叫喚。地獄絵図だった。
その日の事はそれ以降覚えていない。

どうやら流産で自暴自棄になって、普段酒を飲まない母親がヤケ酒をして、無理心中を図っての行動だったらしい。

その日、その時の記憶はあまりに鮮明で、
39歳の今でも時々夢に見る。
所謂"トラウマ"ってヤツなんだろう。
ただ、不思議と今の自分にとっては
恐怖も憎しみも何とも思わない出来事となった。

作り話にも思える内容だと思いますが、事実なんです。
ノンフィクションってやつ。
その時、僕はブルーの生地に
パトカーや救急車、消防車のイラストが描かれたパジャマを着ていました。
よく覚えているモンだ。



★ご覧いただきありがとうございます。
僕の自伝的なお話はまだ続きます。
もし、お付き合いいただけるのなら、
今後ともご覧いただけますと幸いです。
ではまたの投稿でお会いしましょう😊

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