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エンジニア採用に必要な4つの軸

[2016.10.19 にMediumに書いた記事の転載です]

ソフトウェアの会社やっているとつくづく思いますが、エンジニア採用って難しいですよね。会社にとってのタイミング、相性、スキルなど、考えなくてはいけないことがとても多い。僕自身も常に悩みながら取り組んでいるのですが、最近、社外の経営者の集まりなどで採用のやり方について聞かれることが増えてきたので、一度考えを整理してみたいと思います。

どんな人が欲しいのかをまず決める

採用活動はマーケティングであり、実務の内容は営業活動に似ています。ターゲットを決めないマーケティングが成功することはほとんどないですね。ダイレクトリクルーティングがいい、このメディアがいい、などなど、ついノウハウから入ってしまいがちですが、そこはぐっとこらえる。ゴールから目をそらしてしまったらPDCAを回すことは不可能です。ターゲットを決めましょう。

この「どんな人を採用するべきか?」という問いに対して巷でよく聞くのが「事業のビジョンに共感する人」「必要であれば何でもできる人」という答え。これは確かにそうなんですが、もう少し考えを深めておいたほうがより良い採用のチャンスが広がるんじゃないか、とも思っています。

では、どうやって考えていくのが良いのか。ひとつの事例として、僕が実際にとっている手法を紹介します。

課題リストをつくる

まず、事業や組織がいま直面している、あるいは近い将来に相対するであろう課題、解くべき問題を書き出していきます。ここではエンジニアの採用ですので、主に技術的な内容になります。課題の内容と解決に必要なスキルは1対1で対応することが多いので、ついでに書き出しておくと、後のステップが楽になります。

例えば、

APIのレスポンスタイムを確保するためにDjangoアプリ内のクエリを最適化したい

自然言語処理系のスループットを確保するためにマイクロサービス化の標準フレームワークを構築したい

社内オペレーションのQCDを保つために、業務フローの分析と業務ツール改善施策をまとめ、設計・実装に落とし込みたい

といった塩梅です。

課題の書き出しを一通り終えたとき、おそらくあなたの前にはかなりの数の項目が並んでいるはずです。すべてを満たす人を見つけるのはまず間違いなく無理でしょう。だからこそ、冒頭で述べた「必要であれば何でもできる人」が重宝されるんですね。

しかしながら、採用の成功は、採用した人の入社後の活躍度合いで決まることも事実。得意ではないことを延々とやらせるのは誰にとっても幸せになりません。ここでもうひと踏ん張りして、どうにか採用のマッチング精度を上げる方法を考えたいと思います。

課題/スキルリストに評価軸をつけていく

書き出した課題に対する優先順位のつけかたは色々あると思うのですが、僕は以下の4軸を使っています。

1. 事業にとって重要度がどのぐらいか

2. 事業にとって緊急度がどのぐらいか

3. 人材市場において、その課題解決スキルはどのぐらい希少か

4. その課題解決スキルの習得コストは何か

1と2は、品質管理の現場で、バグの優先順位を決めるのに使うマトリクスの2軸に似ています。エンジニアの人は知っている人も多いと思います。この場合の重要度は、事業のポジショニングや参入障壁を築くために資するか、その課題解決能力に資産性はあるのか、という視点で判断します。

この2軸は例えば、重要度が比較的低いが緊急度が高い課題に対しては、外注やコンサルをうまく使えば良いかも、といった、調達チャネルの判断に使います。

3は主に、その課題解決スキルを持つ人間を獲得するのにどれぐらいの時間と労力がかかるか、というところに効いてきます。希少性が高いスキルを持っている人というのは、年収相場うんぬんの前にそもそもなかなか見つかりません。希少性が高いスキルの掛け合わせというのは望まないほうが吉ですし、この意味で「必要であれば何でもできる人」を求めるのは無謀といえます。逆に、希少性が高く重要度も高いスキルを持つ人に出会った場合は、絶対に逃してはいけない、というスイッチが入らないといけません。

4は、入社後の育成可能性をきちんと評価するために使います。習得コストは「フルタイムで◯◯週間」というように時間軸で書いていきます。スタートアップは常に時間との戦いですので、ここに気を配るのは重要です。チャレンジ精神、マインドセットは確かに大事ですが、習得コストは意欲だけではなかなか下がりません。

希少性が高くても、習得コストがそこまででもない、というケースもあるので、そういう場合は思い切って育成・成長戦略に舵を切るのもアリ、と思います。その場合、採用面接でチェックするのは習得期間に大きな影響を与える「素養」に絞ります。

こうやって評価軸でブレークダウンしていくことで、事業やチームの特性があぶり出されますので、シンプル過ぎるアドバイスに惑わされることが少なくなります。

定点観測で見る目を養う

「重要度」「緊急度」「希少性」「習得コスト」の4軸ですが、これを正確に見切るのはなかなか難しいです。前の2軸は日頃の経営の延長とも言えますが、後の2軸はより社外に目を向けざるをえません。

僕自身は、定点観測のアプローチをとるようにしています。

まず「希少性」に関しては、懇親会ありの勉強会に出たり、ダイレクトリクルーティング系のデータベースをいくつか契約して眺めていると肌感覚がつかめてきます。また「習得コスト」に関しては、手を動かす系の勉強会に実際に参加してみるとこれもまた感覚がつかめてきます。ソフトウェアの分野に関しては、ライブラリやミドルウェアの発達により一気に敷居が下がることもあるので、そのあたりの潮目の変化は見逃さないようにしたい。するとやはり、定点観測しかありません。


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