特別な一本道。
「チングルマ」という花がある。
この時期、ある山ではチングルマが咲き乱れる。
そこは限られた時季の特別な一本道となる。
先日、その道へ出かけた。多くのハイカーが訪れ、あちこちから「来てよかったぁ~」「生きててよかったぁ~」「今年も見れてよかったぁ~」。
皆さん笑顔。幸せな時間を精一杯、楽しんでいる様子。
その特別な一本道の先にトレイルランナーの団体が。歩くでもなく、小走りで。どんどん近づいてくる。避けるハイカー。走るトレイルランナー。
その山には私もトレイルランニングをしに結構な頻度で出かけるのだが、そこの道は通らない。チングルマの時期じゃなくても絶対に通らない。この一本道はいつ来てもとても印象的で大人気。ゆえにハイク以外は通らない。
山では他人に注意なんてしない。だってみんな笑顔なんだもん。その笑顔をわざわざ消すような行為はしたくない。
が、その団体に注意をしてしまった。
「なんでわざわざここを走るのですか?」
「きれいな道なんで」
「だったら歩いたらいいじゃないですか?」
「ここの道を走ると気持ちいいので」
この時点でキレ気味の私。
先頭の男性と話しをしていたのだが、様子を伺っていた後ろの女性がぼそっと。
「トレイルランナーへの風当たりって強いよね・・・」
そっからの私は完全に・・・。
「てかこの山でトレイルランニングする大部分の人はこのコースは通らない。あっちを真っすぐ行って・・・・・・・・。」
まくしたてるように話す私。黙る団体。
トレイルランニングはそのファッション性の高さから趣味としている人が多くなってきていると感じる。ソフトフラスクをつけた小さいバックパックを持ち、流行りのシューズを履き・・・。
THE★トレイルランナーしているその女性。
その女性の恰好になぜかテンションが下がった私は、冷静に
「私もトレイルランニングするんですが、この道は走っちゃダメだと思います。理由は想像して下さい」
と言い。歩き出した。
後ろにいたおばちゃんグループからの
「ありがとね。こんなとこ走らなくてもねぇ~」
に対しても、釈然としない私。
山は自由だ。
自然は自由だ。
私も心底そう思う。
自由の中で注意をしてしまった私。
笑顔の消えた団体。
その後のハイクもちょっとだけつまらなくなった私。
きっとあの団体も。
あの一本道に今週末も行こうと思う。
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