これは、僕という名の人生だ。

僕は、Fカップを指名した。

7回裏だった。待合室には甲子園が流れていた。

8対7。一打逆転。

球児たちの夏は、燃え盛っていた。

僕は、Fカップの準備が終わるのを待っていた。

キャスターマイルドに、火を点けることもなく。

浮かんできた感情は、焦燥とあきらめだった。

この空間にいるのは、Fカップを指名した僕と、

やたら強気な店員と、FカップおよびFカップ以下の女たち。

渋谷というこの街に、セミは鳴かない。

番号で名前を呼ばれた僕は、

ただ静かに甲子園を後にした。


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