永井悠大

貧困、社会保障のあり方について現場から発信します。ホームレス支援のNPO職員/広島大学大学院修了(福祉社会学)/※twitterでも日々、発信しています!https://twitter.com/nytissue

永井悠大

貧困、社会保障のあり方について現場から発信します。ホームレス支援のNPO職員/広島大学大学院修了(福祉社会学)/※twitterでも日々、発信しています!https://twitter.com/nytissue

マガジン

  • 一期一会~支援現場のログ

    支援の現場で出会った当事者との交流や、支援過程でおきた出来事を綴ります。 ※なお、ここでの記事は筆者が複数の団体で経験したことをもとにしており、個人や団体のプライバシーに配慮するため、必要に応じて情報を加工しています。

  • ”ソーシャルワーク”を、考える。

    貧困支援の現場に身を置く立場から、「ソーシャルワークとは何か?」についてや、実践のなかで感じたことをつらつらと綴ります。

  • シャカイを、つくる。

  • シャカイづくりの備忘録(タネ)

    ふとした”気づき”や、「一本の体系だった記事にするほどではないものの、思考のヒントとして備忘的に残しておきたいこと」をフリーハンドで綴ります。

最近の記事

  • 固定された記事

なぜ私たちは、「怠け者」や「素行不良な人」も支援するのか?

生活困窮者支援をしていると、一般市民の方から「お叱り」を受けることがある。 それは例えば「お金をギャンブルやお酒に使い込んでしまったり、仕事があるのに働きもしない怠け者だっている。そういう人たちを税金で支援するなんてけしからん!」といったものだ。 これに対して支援関係者や研究者は、「そういう人はごくごく少数」「実態としては働かないんじゃなくて働けないんだ」などと反論をすることがテンプレ化している。私個人としてはこうした“擁護”は時に不自然に感じることがある。 というのも

    • それでも私は、「支援者」という言葉を使い続ける。

      対人支援を職業として、あるいは事業として行う際、その支援対象者および支援者を組織内や対外的な場でどのように呼ぶかというのは、支援者側の一つの「悩みどころ」になったりする。 というのも、「支援者」(あるいは「被支援者」)という語彙自体が、支援を「与える者」「受ける者」という関係性を想起させ、支援業界そのものに対して向けられる「『支援』は持つ者が持たざる者に対する施しであり、持たざる者の羞恥心を新たに生み出す行為である」という批判を先鋭化させてしまいかねないからだ。 こうした

      • ”居場所づくり”は、可能か?ー「欺瞞」と「誤配」の視点から

        「居場所づくり」 福祉に関心のある人で、この言葉を聞いたことがないという人は少ないのではないだろうか。 この言葉および概念は、日本では「ひきこもり」状態の若者支援の文脈で出てきたように記憶しているが、いまや貧困支援や高齢者福祉など、「社会参加」やソーシャルキャピタルを享受しにくい当事者を支援する要素として広く福祉全般で聞かれるようになった印象がある。 とりわけ貧困支援業界では、衣食住を確保するといった古典的な支援だけでは、当事者がよりよく生きるためには不十分であるという

        • 「東京五輪組織委員会の新会長は女性に」に対する違和感

          東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が12日、理事会と評議員会の合同懇談会に出席し、女性蔑視発言の責任を取り、辞任を表明した。 本人の会見でも言及された通り、森氏の辞任は件の女性蔑視発言に対する引責と考えられる。 その後、森氏の後任として名前が挙がったのは、森会長から”指名”されたという川淵三郎氏であったが、一転白紙撤回となり、その決定プロセスの透明性などに社会的な関心が高まっている。 こうした一連の報道のなかで、よく耳にした声の一つが「森氏は女性蔑視

        • 固定された記事

        なぜ私たちは、「怠け者」や「素行不良な人」も支援するのか?

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        • 一期一会~支援現場のログ
          3本
        • ”ソーシャルワーク”を、考える。
          6本
        • シャカイを、つくる。
          6本
        • シャカイづくりの備忘録(タネ)
          1本

        記事

          「個室で生きたい」ー知的障害のホームレス・大竹さんの”闘い”

          支援現場では再三指摘されていることであるが、路上生活をされている方のなかには何らかの精神疾患を抱えている方が少なくない。 そして、これも主に都心の問題として指摘されているが、路上生活をされている方が生活保護を申請してもなかなかアパートには繋がらず、無料低額宿泊所などとして知られる施設への入所がすすめられることが多い。 「居宅保護の無視」と知的障害者の葛藤生活保護には「居宅保護の原則」というものがあり、本来施設などへの入所は本人の意思にもとづくものでなければならないのだが、

          「個室で生きたい」ー知的障害のホームレス・大竹さんの”闘い”

          生活保護の「扶養照会」を、斬る。

          「日本には生活保護があるのに、なぜホームレスの人や貧困に苦しむ人が今なお存在するのだろうか」 テレビで国内の貧困に関する報道が増えた昨今、こんな疑問を抱いたことのある方も少なくないのではないだろうか。 筆者自身、国内の貧困に関心を持って研究に勤しんでいた学生の頃から、これは大きな疑問の一つであった。 生活保護の申請を阻む「扶養照会」の壁無論、生活保護申請にあたっては様々な心理的・制度的障壁があることは多くの学者や活動家の指摘をみるまでもなく、ある程度想像はできたが、「生

          生活保護の「扶養照会」を、斬る。

          中高生の頃の「校則」による「指導」は、今考えると虐待だった

          クラス毎に一列に並べさせられ、裾やスカートの長さや髪の色などを細かにチェックされる・・・。 中学や高校生の頃、こうした経験をしたことのある人は多いのではないだろうか。 2017年、生まれつき茶髪の生徒が高校で髪の毛の黒染めを強要されたことで精神的被害を受けたとして学校側を提訴し、大きな話題となった。これをきっかけとして、評論家の荻上チキ氏によって「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」が立ち上げられると、全国から「理不尽な校則」に関する経験談が多く寄せられている。 詳細

          中高生の頃の「校則」による「指導」は、今考えると虐待だった

          【再掲】緊急事態宣言の前に、やるべきことがまだある。

          昨年の4月に発令された緊急事態宣言。年明け間もない昨日、再びその可能性が高まる動きがあった。首都圏の1都3県が政府に緊急自体宣言の発令の検討を政府に要求したというのだ。 昨年4月も「緊急事態宣言がいつ出されるか」というのは社会的にも大きな注目を集めた。 しかし、実際に発令されたもののそれ以前の自粛要請の頃と実際の行動範囲がほとんど変わっていないという人もいるだろう。 日本の場合、法的な根拠を持って人びとの自由を規制できる内容になっているわけではないので当然と言えば当然である

          【再掲】緊急事態宣言の前に、やるべきことがまだある。

          「#生活保護は権利 ハッシュタグデモ」の先に目指すべきもの

          昨日12月25日、クリスマスのこの日、Twitter上では「仕事納め」といったワードが活気づく裏で、一つの「社会運動」が行われていた。 つくろい東京ファンドの稲葉剛氏が呼びかけた、「#生活保護は権利」というハッシュタグを18時から21時の間に投稿するという「デモ」である。 近年、こうしたハッシュタグを使って社会問題を顕在化させたり、問題提起する動きが盛んだ。 世界的な影響力を持った「#MeToo」運動が最も有名だと思うが、日本でも最近では「#検察庁法改正案に抗議します」

          「#生活保護は権利 ハッシュタグデモ」の先に目指すべきもの

          アメリカ大統領選の「対立」は、絶望ではなく希望である。

          今年行われたアメリカ大統領選。 バイデン陣営とトランプ陣営それぞれの支持者の熱狂ぶりはすさまじく、各地で抗争が起こるほどであった。その様子は日本でも大々的に報道されたので、大統領選によるアメリカ国民の「対立」の様を目の当たりにし少なからず衝撃を受けたという人も少なくないのではないだろうか。 アメリカの大統領は日本の総理大臣とは付与される権限が比較にならないほど大きい。国の根幹が時の大統領のイデオロギーに強く規定されてしまうわけで、アメリカ国民としては誰が総理大臣になるかと

          アメリカ大統領選の「対立」は、絶望ではなく希望である。

          あなたもわたしも、死刑制度の「当事者」である。

          昨日、家でコーヒーをすすっていたら「ショッキング」なニュースが飛び込んできた。 2017年に男女9人の遺体が発見された事件で、強盗・強制性交等殺人罪に問われていた白石被告に死刑判決が下されたのだ。 世間的にも大きな注目を集めていた事件ということもあって、twitterでは一時トレンド入りしていた。 トレンドを覗くと、予想通り、「死刑が妥当」「死をもって償え」といった投稿が相次いでいた。 死刑判決が出る度に目にするこうした世間の声。 筆者は毎回のことながら心底うんざり

          あなたもわたしも、死刑制度の「当事者」である。

          「貧困は自己責任か否か」という不毛な議論に、終止符を。

          先日、貧困支援の現場に身を置くと相談者には「頑張りすぎて」しまう人が多いということを痛感するという旨のツイートをした。 貧困と努力に関わる議論においては、きまって「頑張れるのに貧困なんておかしい」といった意見をよく目にする印象があったが、引用リツイートなどの内容を見ると今回は割と共感を示してくださる人が多かったのに驚いた。 他方で、全く「頑張らない(ように見える)人」がいないのかというと勿論そんなことはない。 現場で多くの困窮者と出会えば出会うほど、本当に色々な人がいる

          「貧困は自己責任か否か」という不毛な議論に、終止符を。

          ある若者ホームレスが教えてくれたこと:「あの晩のパンの味が忘れられなくて」

          みなさんは、「夜回り」という言葉を聞いたことがあるだろうか。 ホームレス支援業界では日常用語と言ってもよいほど浸透しているが、一般的には何のことか分かりにくい言葉かもしれない。 ホームレス支援における「夜回り」というのは、夜の路上を歩き回り、ホームレスの方に直接お会いして食べ物などの支援物資をお渡ししたり、相談に乗ったりするアウトリーチ活動のことを指す。 筆者は2017年の3月から2020年の6月まで、月に一度、東京の路上で「夜回り」を行っていた。 お渡しするものは企

          ある若者ホームレスが教えてくれたこと:「あの晩のパンの味が忘れられなくて」

          "ストレス社会"を生き抜くライフハック:「脳」を強制終了する日をつくる

          日本で「ストレス社会」という言葉が日常言語のように使われるようになって久しい。 これは、サービス残業などの労働条件に起因するものとして話題になることが多い印象があるが、いわゆる「ホワイト企業」に勤めている人も、現代社会では等しくある種の焦燥感にかられるようになっていると思う。 その理由はまずもって、「先行きの見通しの立たなさ」だ。 ポストモダンの論客を引用するまでもなく、私たちが生きる現代社会は不確実性に満ちている。 ウルリッヒ・ベックが「リスク社会」と名付けたように

          "ストレス社会"を生き抜くライフハック:「脳」を強制終了する日をつくる

          12月は“寄付月間” この冬、貧困最前線で奮闘する支援団体を支えませんか?

          2020年もなんと残りひと月になってしまった。 今年はコロナ関連のニュースや出来事以外を思い出すのが難しいほど、その影響に人びとの生活が強く規定された1年となった。コロナに不安を覚え、振り回されている間に1年がたってしまったという印象を持つ人も少なくないだろう。 さて、そうはいってもやはり時間は経つし季節はめぐる。 そして今年も「寄付月間」のシーズンがやってきた。 寄付文化が欧米ほど根づいているとは言えない日本では、この「寄付月間」という言葉自体ご存知ない方も多いだろ

          12月は“寄付月間” この冬、貧困最前線で奮闘する支援団体を支えませんか?

          「生活保護は現物支給に!」は何が問題なのか?

          先日、生活保護について、「選択する自由は基本的人権なのだから、生活保護は現物支給であってはならない」という趣旨のことをTwitterでつぶやいたところそこそこ反響があった。 賛同のコメントや引用RTをいただいた一方で、「生活保護費をギャンブルに使う人もいる!そういうことを防ぐためにも現物支給のほうが良い」という意見もちらほら頂いた。 実は、この「生活保護費を正しく使わない人もいるから現物支給を!」という声は、生活保護に社会的な関心が集まる度に繰り返されてきたものだ。 例

          「生活保護は現物支給に!」は何が問題なのか?