ある女のこと


 わたしは周りから見ると、恋多き女だそうです。わたしは途端に違和感を覚えます。だって本当に恋をした相手なんて、いるんだろうか。恋人が過去にいたのだから、いるんだろうけど、そんなにたくさんはいないと思います。わたしは多分、まともな恋をしたことがありません。愛など果ての果てのほうにあります。
 わたしにとって恋はゲームでしかありません。自分に興味のない人に興味を持ってもらい、好きになってもらうことが好きなのです。ただの攻略ゲームです。好きになってもらうためにどうしようか、なんて、恋をしている人ならみんな思うことなんでしょうが、わたしは少しずれています。わたしは相手に好きになってもらったらそれがゴールなのです。 
 ゲームの最中はとても楽しいです。相手の言動に一喜一憂するし、どきどきします。ただ、相手がわたしを好きになった瞬間、どきどきはなくなってしまいます。自分の言葉で一喜一憂する人間がこの世にいるなんて耐えられないのです。蛙化現象なのでしょう。ときどき、ひとと付き合うこともあります。なんだかそれにしても、わたしはずれているような気がするのです。

 夜の歌舞伎町の相席屋で、適当な人とホテルにたくさん行きました。その人たちは別にわたしに恋などしていなかったでしょうから、非常に心地よかったのです。夜が明ければもう彼らに連絡することはありません。わたしはたとえ恋人がいようとその行為をやめることができませんでした。浮気願望というよりは、必要だからしている、と言う気持ちでした。何かの病気なのだろうと思います。カウンセラーのひとに、最近そのことを打ち明けました。彼は首を傾げていました。正解を見つけるまでには時間がかかりそうです。

 ゲームが終わっても同じときめきを継続させたいし、恋人がいるのならば恋人だけに集中したいと純粋に思っています。そもそも、ゲームなんて表現をしたくありません。これ以上、不特定多数の人間と性的な関係も持ちたくありません。大多数のひとが感じる普通の恋の幸せを、わたしも感じてみたいと切に思うのです。

 くだらなくて、おもしろくない話を、長々としてしまいました。お目汚し失礼いたしました。
 ある女の話です。

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