見出し画像

減塩台湾攻略①2023.12/25-26

タイガーエア初搭乗

 コロナでずっと我慢してきた海外旅行だったが夏の香港旅行が決定し、すっかり旅心が刺激されてしまった。そんな私の元に届いた「タイガーエア」のセールを知らせるメール。即座に予約をしたのは香港に出発する5日前だった。
 その後に前回投稿した腎不全末期宣告があり、シャント造設手術があった。手術前に何か聞いておきたいことはないですか?と尋ねる執刀医に
「あの、シャントにしたら海外旅行とか行っちゃだめですかね?」
「全然平気ですよー」
心の中でガッツポーズを決める私を、夫は呆れ顔で見ていた。
  

羽田上空

 海外なんか無理だってキャンセルしろよ、と口では言いつつ術後の妻の心配をする夫は、深夜発のLCC利用なら空港泊が我が家のデフォなのに、天空橋にホテルを取り、チェックインに合わせてタクシーまで予約をしてくれる過保護っぷりを発揮した。
 仕事納めをしてそのまま海外に向かうスケジュールはさすがに初めてである。荷物が少なかったからこそ出来る技。同僚にも
「その荷物で海外?!」
と驚かれた。
 勢いで予約したタイガーエア、夫は乗ったことがあるが私は初めて。手荷物重量制限が厳しいLCCは2度目だったので、荷造りは慎重に行った。
 荷物は二人で17kg(無料で持ち込めるのは一人10kgまで)。重量だけでなく個数の制限(一人二個まで)が厳密なので驚いた。こんなこともあろうかとシートゥサミットのスリングバックを忍ばせておいて大正解。2:30にチェックイン開始、5:17に出発。外はまだ真っ暗で空港周辺の灯りと月がきれいだった。
 タイガーエアのCAさんには男性もいて、ベルト代わりに虎模様のバンダナを腰に巻いてたり、爽やか細マッチョのイケメンさんがきびきび働く姿はなかなか目の保養である。
 機内で入国カードの配布はなかったが、出発前にオンライン入国登録をしたので無問題。ちなみに、空港について入国審査の列に並んでいるエリアでも、記入台はあるけどカードは置いていなかった。登録済みのパスポートを示してするりと入国できた。時刻は午前8時過ぎ。一日を始めるのにちょうどいい時刻ではないですか。

荷物を見守る可愛いビーグル


持ち込みは許さないワン


 入国後の5000元チャレンジは夫婦そろって外れ。同じエリアでいくばくかの日本円を両替する。本日目指すのは嘉義。高鐵乗り場を目指す。 

2度目の嘉義

 実は嘉義を訪れるのは2度目である。ただし観光をした記憶はない。夫が到着してすぐ高熱を出して薬局に行ったくらいで、翌朝すぐに台北に向かったからだ。
 その時はまだ高鐵は開通していなかったと思う。今は高鐵のおかげでとても行きやすい。MRTで高鐵駅に向かい、嘉義行きの切符を購入。事前にネットで予約すると安くなるサービスなどもあるらしいが、台湾には積極的にお金を落としたいので正規運賃を支払うのは苦ではない。

出稼ぎポケモン
クリスマス気分のゆるキャラ
監視カメラで常に見守られているエリア
人にやさしく

 待ち時間が一時間ほどあるので、改札前のベンチで待つことにする。すぐそばにセブンイレブンがあるので店内チェックも怠らない。

いもは台湾でも人気。焼き芋じゃなくて蒸してるらしい
これがないと台湾とは言えない。随時補充蛋白質って売りが明確。
みんな大好きボケミルク

 やってきた新幹線はカナヘイコラボ車両だった。カナヘイ、台湾で根強い人気らしい。

車内もカナヘイ
細かいところにも
車両ごとにラッピングデザインが異なる


嘉義駅のカナヘイツリー

 高鐵は揺れも少なく、うとうとするうち1時間ほどで到了。
 まずは故宮博物院南院を目指そう。バスを探しているとタクシーの客引きがすごい。不要不要、といなしつつタバコ休憩中のバスの運転手さんに「故宮南院」とスマホの画面を見せると「俺のバスだ、乗りな!」と教えてくれる。乗客は我々の他は一人。ほとんど貸し切り状態で空地だらけの町なかをがんがん飛ばしていく。このあたりはまだ開発真っ最中らしく、目立つ建物がほとんどない。本当にこんな辺鄙(失礼)なところに故宮博物院があるんだろうか?

大きいはずの建物があんなに小さい
ハヌマーンがお出迎え


長いよ!橋が!!

 到着、と降ろされたバス停から入り口までは随分距離があった。
 もし、年老いた父を連れてくるとしたらバスじゃなくてタクシー出入り口近くまで来た方がいいな…などと考える。
 10年ちょっと前に、両親と母方の親戚をアテンドして台湾旅行をしたのだが、大学で日本史を学んだ父は故宮博物院の本院に一日中籠っていた。それでも足りなかったらしい。元気なうちに(私が)また台湾に連れて行ってあげたいなぁ、と思っている。
 ようやく入り口につき、行李寄存の看板を掲げたインフォメーションで荷物を預けようとするも、何故か免費シャトルバスの案内をされる。荷物を持ったまま観覧するのは嫌だな…と思いつつ、蓮の花が咲く池をぐるりと回って長い橋を渡り、はるか遠くに霞む博物院の入り口を目指す。
 這う這うの体で建物内に入ると、日本語を話せるスタッフがさっと駆け寄ってきて、荷物はインフォメーションで預かるよ!とカウンターへ誘導してくれる。小さい荷物ならロッカーもあるらしい。
 ようやく身軽になり、夫の障碍者手帳で入館は二人とも無料。漢字の国なのでダメもとで提示してみたけど、この後様々な場所で免費入場の恩恵に預かった。(台湾に金を落とすんじゃなかったのか)
 

ハヌマーンと犀尊のボンボン

 南院はとにかく人が少なくてゆったりと観覧することが出来た。部屋によっては貸し切りのところも。小さい企画展がいくつも同時並行で開催されている様子で、興味のあるものだけかいつまんでみてもいいかもしれない。我々は廊下のソファーでの休憩をはさみつつしらみつぶしに見て回った。
 仏像・花紋様・茶文化・琺瑯・馬をテーマにした展示があり、入り口にそれぞれの展示を説明するカラーの小冊子が置かれていた。
 

高貴な碧
プリけつ
燭台だったかな?ポーズがかわいい
何故この形なのか
これを作った職人の名前が知りたい
どの茶器も繊細で美しい。茶文化の奥深さを感じる
ヒスイの蓋碗でどんな茶を飲むのがいいのかと
こんな大きいものも
目が眩むほど細かい琺瑯細工


肉はここにいた
写実的な表現にうっとりする

 どの展示もため息が出るほど細かく美しく、一体どうやって作ったんだろう??と凝視しても皆目わからない。そして展示ケースが最新なのか映り込みが少なくまるでガラスが無いように見える。(夫がデコを激突させていた)静謐な空間で美しい品々をじっくりと思うまま目に焼き付けて、まさに眼福なひとときだった。(後日本院のあまりの混雑と喧騒っぷりに南院が懐かしくて仕方なくなった)
 地下のミュージアムショップと郵便局がまた、ツボを心得たラインナップで、帰りの荷物の重さを考えて慎重に選ぶ。

抹茶は大人気
しなもん!しなもん!!
布丁狗!!!大耳狗!!!!
今日一テンションが上がったグッズ

 ディズニーと故宮のコラボはデザインが秀逸すぎて、鼻息荒くなってしまった。本院でも買えるだろうと思いつつ、籠に放り込む手が止まらない。
(本院では売り切れが多くここで買って大正解だった)
 名残を惜しみつつ、荷物を受け取り教えてもらった免費バスの乗り場を目指した。ちなみに帰りのバスは博物院建物のすぐ横が発着場だった。

怪しい雰囲気のホテル街に立つお宿

 バスは高鐵駅の先、街の中心部にある嘉義駅まで走る。少しずつ賑やかな街並みが増え、中心部に近づいていることが分かる。台湾の高鐵駅は後から作られたせいか街はずれにあるのが玉に瑕なのかもしれない。
 1時間ほどで台鐵嘉義駅に到了。ホテルは駅の反対側だというが、改札の外に跨線橋らしきものも地下通路も見当たらない。どうやって駅向こうへ?と人の流れを見ていると改札で駅を通り抜けるための通行証(レシートみたいな紙っぺら)を発行していて、それをもらってエレベーターと長い行人路を渡っていけばいいらしい。
 

一度乗ってみたい阿里山鉄道
駅舎内もレトロ
趣のある駅舎

 駅前に焼き腸詰を商うおばあさんの屋台が出ていて、コークスの懐かしい香りがする。空腹のあまり1本購入し、二人で嚙り付く。そう、ここまでなんと何も食べていないのである。食べる場所もなかったと言えばなかったのだが、非常食として日本から持ってきたおやつ(カロリー多くて塩分少なめの)をちょっと食べたくらい。
 宿にチェックインして荷物を置いたらとにかくご飯を食べに行かねば。
 台湾の安宿は香港の様に雑居ビルにある訳ではなく(台北ではどうか知らないけど)、ふるーいホテルがリノベもしないまま営業しているパターンが多いように思う。今回もそうだった。ただし、駅には近い。コンビニも近い。そして近隣には似たような古ホテルが林立している。どのホテルも「休憩・住処」と2種類の価格表を掲げているのでラブホも兼ねているのだろう。夫が選ぶ宿に文句を言っても仕方がないので色々目をつぶり、荷物を置くなり食事処を探しに出た。
 今回、グーグルMAPの情報が便利だということが嫌と言うほどわかった。地図を出せば近くの食堂が星付きですぐに出てくる。嘉義と言えば鶏肉飯、と探して評価の良い店までほてほてと歩く。メインストリートから外れているので、住宅と店舗が入り混じったどこか懐かしい街並みが続く。
 香港が異国!という雰囲気むんむんなのに対して台湾がどことなく懐かしい風景に見えるのは日本の統治が長かったからなのだろうか。初めて台湾に降り立った時、空港バスから見える風景が南武線の車窓風景にあまりにそっくりで、外国に来た感じがほとんどしなかった。
 

銀さん!こんなとこで何やってんのぉ?!
台湾は香港に比べてご飯が安くて助かる
トッピングのフライドオニオンが効いてる

 まだ夕飯時には早いので、店はガラガラ。鶏肉飯と茹で空心菜の魯肉かけを注文するとあっという間に出てくる。薄味で美味しい。これは塩分を気にしなくてもいいやつだ。
 念のためいざというときは白飯にふりかけでしのごうと、おとなのふりかけセットを持参したのだが、結論から言うと一度も使わなかった。台湾はメニュー選びを間違えなければ薄味でも美味しいご飯が色々楽しめることが分かったのは大いなる収穫であった。(でも、台湾の透析患者数は日本と並ぶくらい多いらしい)
 そして台湾は大サイズでも牛丼並盛よりちょっと少ない。ポーション少なめなので食べ過ぎる心配もない。野菜ももりもり食べられる。
 お腹も満足したので、少し街歩きをしよう。目指すは「黄金のピッチャー像」。

「KANO」の聖地

くるくる回る黄金の投手

 この投手は甲子園で準優勝を取った選手の像なんだそう。
 台湾で?甲子園?と思われた方は下記を一読されたし。

 詳細は伏せるが、今回の旅の目的の一つはこの台湾から甲子園に行き、奮闘した天下の嘉義農林の偉業を辿ることなのであった。
 そこでまず、黄金の投手像。駅の真ん前に通じる大きな通りのど真ん中でくるくる回る様子はちょっとおかしみを感じる。
 そういえばこの間の「異郷の駅前食堂」が嘉義で、スギちゃんがこの通りを歩いていたっけ。
 通り沿いに素敵な雰囲気のジューススタンドを見つけたので、木瓜牛乳を作ってもらう。

看板だけちょっと新しい
他はとてもレトロ。老舗の風格

 後で調べるとパパイヤはそこそこカリウムが多いらしい…うん、これが飲み収めと言うことで。(都合がいい解釈)果物だけでなく、牛乳の質がいいのか濃厚で甘すぎず美味しかった。
 夫が筆談用のメモ帳(漢字圏では必須)を忘れた、と言うので大きな雑貨店を覗く。文具売り場併設の書店があり、なんとそこに「今日からシティーハンター」があるではないか。

ソクラ先生!!!

 香港でも日本のコミックスはたくさん売られていたけれど、実は台湾の出版社が刊行しているケースが多い。広東語と台湾の公用語の発音は全く異なるけど、表記は繁体字と共通しているので可能なのが面白い。だから、コミックスに価格をHKDとNTDで併記している場合がある。
そして、台湾のコミックスの判型は日本よりも大きい。これは理由がよくわからないのだが。
 ホテルに戻りシャワーを浴びて休憩。少しうとうとしてもまだ19時。小腹も減ったので(さっきのは昼ごはん)夜市に繰り出してみよう。

文化路夜市はのんびりまったり

 宿から歩いて10分ほどの場所にある文化路夜市は広い道の両サイドに店が点々、と言う感じで士林のように屋台が林立して人もぎっしり、と言う感じからは程遠い。でもさびれているというわけではなく、人出はそこそこあり、店によっては行列もできている。

のんびり眺めながら歩ける程度の心地よい混雑
苺たんふーるーは台湾でも人気
なぜか店先で踊るカメックス
市場でも苺は大人気だった

 最初に目をつけていた鶏肉飯屋さんが臨時休業だったので、若者や幼児を連れた家族連れの老若男女が続々入っていく店を選んで着席する。

2杯目。トッピングなしシンプル
コミケのベローチェ並みにオペレーションが早い

 これまた注文するとあっという間に出てくる。ファストフードより早いかも。鶏脂のコクがありつつあっさりとしてて、するすると食べられる。台湾と言えば魯肉飯、と思っていたけど鶏肉飯、いいじゃないか(孤独のグルメ風)。
 そして12月だというのに夜でもあたたかく、でも汗ばむほどではないのでもしかするとこの季節は台湾旅行のベストシーズンなのでは?
 大変気分よく長い一日目は終わるのであった。




 
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?