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喫茶ウズラ
来る前から、なんとなく心が惹かれていた、しかし家から近いとはいえない距離にあり、自転車を走らせようにも毎日暑いので、なかなかその距離を埋めることができず、今日まで来てしまったが、ようやく最近秋の風を感じるようになってきたので、その風を感じながら自転車を走らせて今日は来てみた、ウズラ、思っていた通り、まるでずっとここにあったかのように、どこか懐かしさ漂う雰囲気の店だ、一方でガラスやテーブル、棚やタイルの綺麗さはまったく不自然なほどで、いや、それを不自然だと感じさせないのが素晴らしいのだが、とにかくサイズ感のちょうどよいテーブル席の、ベルベットソファに包まれる優しい夜空のような空間、洋楽が流れる、そこで名物らしきのりトーストとアイスコーヒーを頼み、しばし、黙想にふける、
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断層の縞が美しいのりのトースト、まるで祖母の家で餅を食べているような錯覚に一瞬陥りかけるが、トーストの風が、今ここの現実を思い出させ、人間を窮地から救い出す、そうして救い出されてみればこそ、そもそも祖母の家でこのような餅を食べた記憶はなかったことに気が付くのだが、存在しない記憶、そして海苔で挟むのではなく、海苔を挟むというアイロニカルな表現、それらが想起させる三島由紀夫の文学、また新たな黙想が始まろうとしていた、コーヒーはコクがあまりなくスッキリと感じられた、スモーキーで、少し、番茶に似ていた。