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麺屋 猪一
ミシュランガイドにも載る有名店らしいとは知りつつ、今まで素通りしていた。べつに僕は京都旅行をしているわけでもないし、ラーメンに対する情熱もあまりない人間だ。冷めていたのだ。芯まで冷え切っていた。だから通り過ぎるたびに目に入る店前の行列も、そういう目で見ていた。けれど最近、逆にこういう店にいつでもふらっと気軽に来れるのが、地元の民のいいところなのでは、と思うようになり、実際に来てみた。まずは整理券が配られた。1時間後だ。いつも見えていた行列は氷山の一角にすぎず、あくまで同じ時間の整理券を持つ人々のそれにすぎなかったのだ。なんだろう。ちょっと熱くなってきた。1時間後に舞い戻る。芯まで熱くなっていた。
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今回頂いたのは、
炙り和牛そば(白醤油)と、
炙り帆立と豆腐のだしマヨ丼。
本当に何というか、すごいとしか言いようがない。
まずは目で見て思う。これはすごいな、と。
手前で塊になった和牛の存在、一筋の大きなメンマ、その先で咲く薔薇の花のような鰹節。
次に味わい、やはり、すごいと思う。
和牛はぷるぷるで、噛むと口の中にゆっくりと旨味が広がる。
筍は奥深い煮物の味。
鰹節はほんとうに香りが豊かで、どこまでも身体を労わるようなやさしさがあり、スープを飲んでいると何だか泣きそうになってきた。
サイドメニューとして頼んだ小さな丼も、サイドと呼ぶにはあまりに忍びない。今日のご飯はこれだけだと言われても充分生きていける。もちろん喜びと共に。そんな気がする。
シンプルな言葉になるが、
一つ一つの食材がほんとうにおいしい。
シンプルなのに、すごい。
すごいのに、シンプル。
この二つの言葉の意味は同じだ。
だから本当にすごいのは、
そうだ、
シンプルなのは、普通じゃない。すごいことなんだ。
そう、思い出させてくれることではないだろうか。
一杯の、ラーメンを通じて。
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別皿に添えられた柚子と、
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カウンターに備え付きのとろろ昆布による味変もあり、
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最後までまったく飽きずに完食した。