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婚活物語のつづき

「久しぶりに、帰りに一杯やらないか。」
「そうだな、じゃ、いつもの店でどうだ。」
「良いよ。じゃ20時という事でな。」
幼馴染からの誘いがあった。

いつもの居酒屋は、コロナ明けもあってか
最近はいつ行っても混んでいた。
やっと見つけた席に滑り込んだ。

「最近調子どう?
健康診断で引っかかったらしけど?」
「ああ、50代は激務だからな。
皆、それなりに持病の一つや二つ
抱えているものだしな。」
「でどこが引っかかったんだ?」
「胃潰瘍だよ。胃がんじゃないかと
心配したんだが何とかセーフだった。
今日は、ノンアルコールにしておくよ。
ところで、お前の方はどうなんだ。」
「今のところは、大丈夫だけどな。
時間の問題かもしれないけどな。
今日は、暗い話は置いといて
面白い話を仕込んできたぞ。」
「そうか、聞いてみたいな。
で、どんな話だ。」

「気は優しく力持ちと言う
言葉がぴったりの部下がいるんだ。
そいつは、まじめ人間なんだが
何故か女に持てないやつなんだ。
どうも押しが足らない奴でな。
それに
大体40過ぎで独り者と言うのは
遊び人かバツイチぐらいに思われるらしく
最近は、めっぽう縁が遠ざかってるようだ。
周りの勧めもあり、最近婚活サイトに
登録して、婚活パーティーに行ったらしい。
そこで、奇跡的にカップルが成立して
初デートの運びとなったらしい。」
「ほーう。それは良かったじゃないか。」
「で、デートと言っても久しぶりだし
今どきの若い子とどう付き合ったらよいか
周りに相談したらしい。
すると、今の季節なら、紅葉ドライブなど
が良いんじゃないかと言われてそう決めた。
周りも盛り上がってきて、何とかゴールまで
持っていける演出が必要だという事になり
お前は、体の割に気が小さいから
ここは、男らしさを演出して、相手のハート
を掴む必要がある。そこで」
と言いかけて、
ビールのジョッキーをグイっと飲み干し
次の言葉をつなげた。
「ドライブ途中に、煽り運転に会い
男らしく撃退するのはどうかという事になった。」
「当日、仲間の運転する車が後ろに付けるように
制限速度でのろのろ走り、上手く仲間に合流
出来たらしい。そこで、筋書き通りの演出が
始まったのだが、予定では、注意をしてから
それでも、食って掛かってくる相手を
軽く殴るふりをして、謝らせる手はずだった。
彼女が車から降りて来なかったので
筋書きが違ってしまった。
仕方ないので手っ取り早く済まそうと
やり取りを省いて、車から降ろして
軽く殴るふりをしたらしい。
はた目には、ただの暴力にしか見えないので
あわてた友達が、
もういいから戻る様に言ったら
奴は、それでほっとして
一仕事終えたつもりで
車に帰っていったらしい。」
そこで一息ついて、にやにやしながら
話を続けた。
「彼女を駅まで送り届けた後
すぐラインがきて、見事撃沈した。
どうやら見られていたらしい。
粗暴な人間のように思われたんだ。」

「奴の落ち込みは相当なもので
しばらくは、誰も声をかけられなかた。
それで、昨日みなで残念会を開いた
その席に呼ばれて
俺も初めて事の顛末を知ったんだ。
様子がおかしいので、どうしたのか
心配していたけどそれを聞いて、
可哀そうだけど笑ってしまったよ。
その後、お前は正直で真面目が取り柄だから
下手な小細工はいらないお前のままで良い。
また次の機会もあるから元気出せよと
慰めてたけどな。」
そう言ってけらけらと笑っていた。

俺はその時思った。
こいつすっかり忘れてやがる。
悪気はなかったのはわかるが・・・。

学生の頃、恋愛相談した時に
こいつのアイデアで、
相手にラブレターを渡す
事になって、
その文面まで書いてくれた。
俺は勇気を振り絞り
彼女にそれを渡した。
なかなかの力作で、
期待が持てると思っていたら

彼女から、恋愛小説の
ラブレターと同じです。
からかわないで下さいと返事が来た。
結果、恋はかなわなかった。

その経験が、今また蘇えってきた。
だから彼の気持ちは、良く分かる。
とても笑えるような話で無かった。

自分を飾る必要はない。
自分は自分のままで良い。
俺も、傷ついた彼にそう言ってやりたい。

















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