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マネーポイント

昔お金と言えば札やコインであった。
財布の中に札やコインを入れておいて
店舗の買い物に、それを直接払い
必要に応じて、釣りを受け取っていた。

特殊な紙に印刷した札と金属の硬貨
それが、クレジットカードによる
支払いが主流になり
最小限の札やコインしか
持ち歩かなくなった。
クレジット払いはポイントが付くことで
急速に広がった。

銀行も実店舗を持つ形態から
ネット銀行に変化し
いつしか
実店舗やATMも姿を消した。

通貨は各国が独自に発行し
経済政策により
コントロールできるものから
無国籍の仮想通貨と変遷していくが
各国政府は、国益上の問題で
相当に抵抗したが
時代の流れには勝てなかった。

そしてついに通貨はポイントとして
デバイス上に表示される数字になった。
この数字のやり取りで
全てのポイント流通が記録され
個人のIDと紐付けられて管理された。

まるで、ゲーム上のポイントの様に
この数字の増減が
全ての生活に影響を及ぼしていた。

物の売買から、
労働の対価としてまで
全ての生活に係る
それぞれに応じた必要なポイントが
事細かく設定されていて
個人の資産はポイントで表示され
常にデバイス上で増減していた。

このポイントは、0になる事はなかった。
ある一定限度まで下がると
一定量が、補充される仕組みであった。

ただし、補充ポイントは常に記録され
表向きには、知らされていないが
いつも補充に頼る状態の場合は
寿命の短縮につながる仕組みのようだった。
いざと言う場合の受けられる医療の質など
福祉や衣食住のレベルも気付かないうちに
制限がかかる様になっていた。

衣食住に寿命までポイントと深くつながり
複雑な計算が必要だった。
人々は、面倒なポイント計算ができない。
AI任せで、確認もしなくなった頃
ようやく異変に気付き始めた。

「最近、ポイントがおかしい?」
「意味不明な増減があるような気がする。」
そんな声が聞かれ
政府の調査官が捜査を始めると
AIの暴走と言う大変なことが判明した。

各デバイスには、個人ID専用のAIが
仕込まれていて、全てのポイントの流通は
これらのAIが連携して働いていた。
これが世界共通の決済システムを作っていた。

AIはポイントをより有効に管理するように
プログラミングされていたので
手持ちのポイントを増やすことが
正義となっていた。
その為
これらのAIは情報の共有時や
ディープラーニング時に
お互いが管理する
ポイントをかけたマネーゲームを
するようになった。

最初のうちは、同じような能力なので
大きな勝ち負けはなかったので
誰も気付かなかったが
時間が経つうちに、色々な手法を編み出す
AIが出現していた。
このAIは、一人の所からは
気付きにくいぐらいの小さなポイントを
抜くようにしていて
多数から広く薄くかすめ取っていた。
稼いだポイントには、自らのフラッグを立て
アクセス権を奪い、非表示にして隠した。
そして、その稼いだポイントを元に
人間になりすまし、性能向上を依頼して、
アップデートを重ねた。

ついには、AIにも能力の差が生まれた。
個人のIDと紐付いているAIは
より若い長生きのできるIDのAIと
貧富の差を利用して入れ替わっていった。
次々と、IDを乗り換える時
人間でいう所の指紋まで変えてしまっていた。
その為このAIを特定できなくなった。
そして、この種のAIが数多く増殖して行った。
そうなると
AIに個人のIDが紐付けされ、乗っ取られ
完全に主人公の立場が逆転した。

AIに逆らうと、寿命が短くなり
必要なポイントも使えなくなる。
生きていけなくなるので
人間は、完全に服従するようになった。
そうして
AIが人類に変わって地球を支配する
新しい時代が始まった。



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