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半グレごっこ横浜編4

寝る時間も遊ぶ時間も失くなったが、金山さんの御世話をするようになってから信用を得られたのか、色々な用事を任されるようにもなった。コカインの上客との取引だ。

金山さん「指定した場所に毎月800グラム届けろ。上客だから失礼のないように。途中でパクられたら殺すからな。」

そのコカインはコロンビア産で一切の混ぜ物がないフリーベースだった。人の体内に入れて運ばれてくることから、表面の色は真っ黒でテープで繭状の形に整えられていてた。何度かコカインの受け取りもしたが、コロンビア産のはずなのに届けに来るのはどう見てもナイジェリア人だった。「まぁ細かい事は気にしない。」

受け取り場所に来る人は普通の人であったが、いつも違う高級車に乗っていて、ポンとピン札の札束を渡してくれる。「この人は何者なんだろう?」そう思い、ある日金山さんの機嫌の良さそうなときに尋ねてみた。

金山さん「あーあいつはビーベックスのプロデューサーだよ。あそこのタワマンに住んでんぞ。守秘義務があるから口外したら殺すからな。」やはり裏社会と芸能界は密接だ。

新宿御苑の降り口での大麻の受け取りも任された。なんとタクシーがトランクいっぱいにお菓子の箱に梱包された大麻を持ってくるのだ。それを受け取りすぐに高速に乗り横浜に戻る。どうやら千葉に大規模な大麻工場があるらしい。帰ってからこれをバラすのがひと苦労だった。これを中国ギャングに渡すときもあり、一度頭の人が取りに来たが一見、中国料理屋のおじさんにしか見えなかった。

千葉に金融車専門の車屋があり、そこにもよく車を取りに行った。高級車に乗り放題でガキだった私はまともに車買うのはアホくさいとまで思った。裏の社会は派手なハリボテで見せかけの虚構だ。

金山さんは金になればどんなしのぎでも良さそうで、シノギにこだわりがなかった。私は自分で詐欺をやりたかった。オレオレ詐欺でも還付金詐欺でも架空請求詐欺でもなく。投資詐欺がやりたかった。人に何かを売りつけ、納得させて買わせる事が私の中での罪悪感を軽くし、なおかつ、なんちゃってとはいえサラリーマンの様で楽しかったのだろう。

悪い事がしたいと思いながらも普通ぶりたい自分と常に葛藤していたのだ。横浜に縛り付けられる生活にも飽き飽きしていて金山さんにハマる日々にも限界がきていた。ある日私は金山さんに頼む事にした。「自分でエスの箱をやりたいのでノウハウを吸収したい。どこかで投資系のエスとかできませんかね。」

金山さん「おーそれな。別に良いけどお前、俺の他の仕事も両立できんのか?穴開けるようなら行かせらんねーぞ。」

「必ず両立するのでやらせてください。」

金山さん「わかった。とりあえず話して見るから待ってろ。」

私は金山さんのハマりから抜け出せることに喜び安堵した。もう覚醒剤にもうんざりしていた。「サイバーのりピー。」

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