半グレごっこ2
2010年、当時21歳だった私は建設業をやりながら薬物をイジったり保険金詐欺やクラブのイベント企画に精を出しそれなりに楽しんでいた。世の中は映画クローズや雑誌ソウルジャパンといった悪羅悪羅系カルチャーが流行り始めていて、不良=カッコイイと言った風潮が一部の人間には浸透していた。
幼なじみの仲間はみんな暴力団の組織に入っていた。その一線は超えたくないと思いながらも当時まだ半グレと言う言葉もなく、十代の頃から暴力団事務所を出入りしていた自分を企業舎弟と認識していてとても中途半端な暴力団の傘下と不満を感じていた。これから先の人生本気で悪い事をして犯罪を生業として生きるかを悩んでいた時期でもあった。
そんな時に地元の不良の先輩から面白い話が舞い込んだ。「関西の組織からうちの島内でシノギをやりたいと言う話が来ている。お前そこでノウハウを吸収して店舗を出さないか?」
私が「その仕事の内容はなんですか?」と先輩に尋ねると、
先輩は「社債ってわかるか?未上場のペーパーカンパニーに投資させて配当を出して計画倒産しておさらば。配当を出していれば捕まらないグレーな仕事だ。先の人間を紹介するからまずは話をしてみてくれ。」
断る理由はなかった。私自身現状に退屈していて不満もあり、何か新しい事をやってみたかった。半グレごっこの始まりだ。
トバシのケータイで先の人間に連絡すると敬語で物腰はとても柔らかかった。私はこの仕事を受けるつもりでいたが、グレーという言葉で濁されてよく内容を確認せずに仕事を受けることに疑問を感じていた事から、先の人間に対して細かく内容を確認した。
「テメーやりくろうとしてんのか?」怒号とともに突然先の人間の態度が急変した。
これが裏の人間のやり口なんだろう。都合が悪かったのか、暴力的な交渉術でマウントを取りに来た。先の人間の意図は不明だが、先輩の顔も潰せない事もあり、私自身悪い事をする事になんの躊躇いもなく、リスクを減らすための確認ではあったが。諦めて最低限の理解で仕事を受ける事にした。
日時と場所を指定され、当日スーツで来るようにと指示された。そこは神奈川県の不良外国人のグループのたむろする繁華街のある駅だった。