読了☆シシリエンヌ
所々に登場する洋服のブランド名、特徴的な文体、貴方と僕の一人称。変わらない野ばらちゃんワールド、全開。ロリヰタとは真逆の大人な作品。
本編の殆どが性行為の描写。けれど決して下品ではなく、妖艶で純愛で、悲しさまでもが表現され、独特の文体のおかげもあって自然と読み進められる。
前半の、一目惚れからの暗い美容室でのやりとりのドキドキ感。いつの間にか自分も貴方の虜となる。
後半は、地下の暗さとライトの眩しさ、香水や性行為の匂いや雰囲気までもを感じさせる描写。そんな中でも懸命に明るく生きる主人公と女の子たちの和やかな空気。まるでそこに自分も存在するかのような錯覚を起こさせるのはさすが。
いくら特別な日々を過ごそうとも、体を重ねようとも、思い出すのは何気ない素っ気無いとある日の会話。
大事だから、大好きだから、大きくなりすぎて怖いから、離れる。そんな人間特有の「なんで?」な行動を書けること、そして、それが一層、物語と読み手を無残にも哀しく引き裂いて終わらせる。
だから私は野ばら作品が大好きです。
以下、余談。
個人的な思い出に重なり、更に辛い特別な一冊となりました。
この本に出会ったのは2〜3年前。中古で野ばら本全部200円。迷わずまとめ買いしましたが、この本だけは買うのを躊躇いました。そしてようやく、先週読み始め、今日読み終わりました。この本を読めるまでになるまで、これだけの月日がかかるとは。この本を読むのに相応しいのが今だったのでしょうか。すらすらと読めました。
去年、大恋愛が終わりました。全てが初めてでした。最後に相手が黙って逃げようとしたので大喧嘩して大失恋しました。でも私の中ではまだ区切りがついていません。つけられませんでした。タイミングがありませんでした。時間は癒してくれませんでした。そういう意味では私のこの大恋愛はまだ終わっていないのです。この主人公のように。
この主人公のような奇抜な体験をしたわけではないけれど、色んな部分が私の出来事と重なって、痛くて辛くて、ただただ哀しかったです。
ロリヰタに出会ったのも、鮮明に覚えています。衝撃でした。シシリエンヌも、読むべくして読んだ本なのでしょう。どうしてこうも、野ばら作品は、私の心を惹いていくのですか。