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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)
第297回 のちのおもひに(立原道造)
夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村へ
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を
立原道造(たちはら みちぞう、1914~1939)のソネット形式の詩「のちのおもひに」の第1連。1937(昭和12)年に発表した詩集『萱草(わすれぐさ)に寄す』に収録される。
立原は東京の日本橋で平家の流れを汲む家系に生まれた。幼時から文学に親しみ、13歳で歌集を作った。第一高等学校では短歌クラブに所属し、詩作に没頭する。
東京帝大の建築家に進学し、在学中に辰野賞を3度受賞した。1年後輩に丹下健三がいた。一方では、シュトルムの短編集の翻訳も行っている。
卒業後は、石本建築事務所に就職した。設計と詩作の両方で才能を発揮し、詩集『萱草に寄す』を出版する。
その翌年、旅行先の長崎で喀血した。東京の市立療養所に入院するが、間もなく結核のため24歳で没した。